3章 それぞれの変化 3-1
次の日、昨夜ほどではなかったが、雨はまだ降り続いていた。
駿は学校に着くと果奈からLINEが来ている事に気付く。
内容は「ごめんね」「昼休み用事が出来て一緒にお昼食べれない」と送られており、用事があるならしょうがないか〜と思いつつも、今日は果奈と一緒に食べれない事を悔やみながら、「分かった」と返信する。
昼休みになり、果奈と一緒に昼休みを過ごせないので、しょうがなく直己と昼を過ごす。
「直己、今日一緒に昼食べない?」
「良いけど、今日は大丈夫なのか?」
「あっちに用事が出来てね」
「そうか〜てか、こうやって2人で食べるの久々じゃね」
「そういえばそうだな」
直己とたわいのない昼休みを過ごして、こういう昼休みも果奈と過ごす昼休みとまた違った楽しさがあってたまには良いなと感じた。
その後、直己とトイレに向かおうとすると、途中で女子の大きな声が聞こえてくる。
「だから、何も無いって言ってるじゃないですか!」
気になって、野次馬のように声の方向に向かうと、そこには果奈の姿があり、周囲に数人の生徒が居たが、誰も止めようとしなかった。
「じゃあ、これはどういう事なんだよ」
そう言って、男子生徒が果奈にスマホの画面を見せて、詰め寄ってくる。
その男子生徒は辛島蓮という先輩で、度々生徒同士の間で問題を起こす事で有名な生徒だった。
「それはたまたま一緒になっただけで先輩が思うような関係では無いです…」
「2日連続でか?」
「そ、それは…」
「俺が告白した時、付き合ってる人は居ないって言ってたよな!」
強い言葉で話す辛島先輩に対して、果奈は恐怖のあまり涙を目に浮かべる。
果奈に詰め寄る辛島先輩に怒りが湧き、今にもこっちが殴りかかりそうになるくらい気持ちが昂るが、同時に恐怖も抱いてしまい、足に楔を打ち込まれたみたいに動かなかった。
「どうなんだよ!付き合ってるんか、それとも付き合ってないのか!」
果奈の瞼に溜まった涙が溢れ落ちる。
「助けて…」
今にも途切れそうな声で助けを求める果奈を見た途端、足に打ち込まれた楔から解放されたように、自然と身体が動き出し、気付けば、果奈の前に立っていた。
辛島先輩のスマホの画面を確認すると、そこには果奈と一緒に帰ってるところを後ろから盗撮した写真が映し出されていた。
「誰だよ、おまえ?」
「・・・・果奈の、彼氏です」
それを聞いた辛島先輩がどんな事をしてくるのか考えるだけでも恐ろしかったが、今は果奈を守りたいという気持ちが勝っていた。
「おまえが果奈と一緒に帰ってた奴か。丁度良い、今から果奈の事について2人で話さないか?」
辛島先輩が話を持ちかけたが、果奈の事が心配だったので、無視して果奈に話しかける。
「果奈、大丈夫?」
「駿…」
「もう大丈夫、ここから逃げよう」
果奈を連れてその場から立ち去ろうとすると、辛島先輩が激昂して歯止めが効かなくなり、殴りかかってくる。
「おい、先輩の話を無視すんなよ!」
怖いけど、果奈に傷付くくらいなら、俺が傷付いた方がマシだと思い、果奈を庇うように辛島先輩の前に立つ。
辛島先輩の拳が目の前に見えた瞬間、目を瞑って覚悟したがなかなか飛んで来ず、恐る恐る目を開けると、誰かが辛島先輩の腕を押さえていた。
「辞めろ、辛島」
辛島先輩が必死に腕を振り解こうするが全くびくともしない。
辛島先輩の腕を掴んだのは3年生の茂木悟という生徒で空手部の部長をやっており、学校内でもトップクラス力強さを誇っていた。
「君、早く彼女を連れて逃げなさい」
「分かりました、先輩、ありがとうございます」
動けない果奈の手を握り、颯爽とその場から離れた。
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