第13話 VS冥府王
ある地方の草原で川村はひとりの男と対峙していた。長身痩躯の老人で後ろに撫で付けた白髪と立派な口髭、骸骨のように痩せた身体を白の肋骨式軍服で着こなした老人だった。服装や髪を白一色で統一した男の名はジャドウ=グレイ。
川村の剣術の師匠であり冥府の王だった男である。
彼は底知れぬ黒い瞳で川村を見据え低音で言った。
「川村よ。お前もすこしは成長したようですなあ。その腕前を拝見させてもらおう」
「お主が拙者と対戦したいのであれば、素手で受けるでござるよ」
「斬心刃を抜かぬというのか。吾輩も愚弄されたもの……」
喉奥から不気味な含み笑いを発してマントを靡かせるなり、ジャドウは虚空から取り出したタロットカートを川村へ投擲するが、最小限度の動きだけで回避されて全てのカードは虚しく地面に突き刺さってしまう。今度は腰の鞘からサーベルを引き抜いて突進し剣技を見舞うが、一発も命中しない。
川村にはかつての師が止まっているように思えた。
手の甲を叩かれ思わずサーベルを取り落としてしまう。川村と目が合う。
「これが成長か。だが、まだ甘いですぞ」
ジャドウは背中から四枚一対の天使と悪魔の翼を展開させて先ほどとは比較にならぬ速度で打撃を放ってくる。
「川村よ。剣を抜け。吾輩と戦え!」
「ジャドウ殿……」
「貴様はここまで、ここまで成長を遂げたというのか……!」
血走った目で見られ隙を突いて投げ技を決められ地面へ顔面から叩き落とされる。
剣技ですらない不慣れなはずの素手の戦いでさえ遅れをとってしまった現実。
ジャドウは本気を開放したが、それでも川村に剣を抜かせることはできなかった。
「参りましたぞ」
感情の全てを込めた敗北宣言をしてジャドウはその場を去ってしまった。
数億年前、冥府を支配していた男を超える力を川村は身に着けていた。
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