デスループ・バッドコミュニケーション
ガルバンガン
第1話 始まりの卒業式
すべての始まりは...そう、高校の卒業式。
あの日俺は、クラスメイトの誰かに殺された。
【20*6年 3月 3日
「卒業生の皆さん、この3年間でよき友人を作り共に学び、成長したと思います」
校長先生の言葉が胸に刺さったのなんていつぶりだろうか、どうしようもなく自分が情けなくなってしまう。
この3年間まともに話せる友達というものは、一人も作れなかった。
うちのクラスはみんな程よく仲が良かったと思う。
イベントごとでは協力もするし、無理に干渉してくるような人もいなくて、いじめのようなトラブルも一切無かった。
今日着けているクラスごとに違うコサージュも、うちのクラスだけみんなで着けたい花を選んだっけ。
3年間クラスの変わらないうちの学校において、クラスの雰囲気の良さは大きくて、コミュ障の俺でもいじめられずに卒業まで来ることができた。
でも、そんな良い環境の中にいたのに俺は、クラスメイトとまともに話せず、友達を作れなかった。
碌に会話のない、ほぼ相槌だけの3年間、悔いの残る思い出ばかり。
でも、時間は戻らない。
どれだけ悔やんでも進まなければいけない。
そんな一人反省会をしているうちに気がつけば卒業式も終わり、教室で先生を中心に最後の記念撮影を撮り、俺は誰とも話すことなく教室を後にした。
こういう時に先生にすら挨拶にいけないのは自分の悪いところだと思う。
でも、みんなが先生との時間を楽しんでいるところに入っていけないし、空気を壊すことが怖い。
持っている携帯を見ると、数分前に父さんからメッセージが届いていた。
『すまん、父さん母さん緊急の仕事が入って行けそうにない。せめて今日の夜どこかおいしいとこ食べに行こう』
「父さん...母さん...やっぱりこれなかったんだ。」
うちの家族は俺、妹、父さん、母さんの4人家族だ。
両親は共働きで子供のころからいつも忙しそうにしていたのを覚えている。
俺と妹は二人支えあって暮らしてきた。
でもどこで差がついたのか、妹には俺と違い友達が大勢いる。
今日も誰かの家に行く約束があるらしい。
ほかの卒業生が家族や友人と帰る中、一人そのその道を歩いていると、すこし強めの風が吹いた。
その風につられ顔を逸らすと、近くで咲く桜が目に入った。
桜は卒業する皆を祝福するように、美しく咲き誇っている。
そんな桜に目を奪われていると背後から、強く殴られたような痛みが背中を襲い、腹からは何かが貫通したのかのように血が溢れ出した。
俺はその痛みで声も出せないまま、振り返る途中で体のバランスが崩れ、俺に何かをしたであろう人の服に着けられたそれを、掴み取ったあと、そのまま倒れこんでしまった。
意識が消えるその直前最後に見たのは、手から落ちたうちのクラスのコサージュだった。
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