episode 4
目を覚ましたのは凄く苦しかったからなのを覚えてる。
「ごめん、起こしちゃった?」
目を開け、その声の方を向くと綺麗な顔が目の前にあって咄嗟にその人を押して離れようとした。
「あっぶな…。落ちるよ」
でもそれはこの人の腕によって抱き締められる形となった。
そうだ…、
私、ソファで一緒になって寝ちゃったから…。
「百合ちゃんって寝るとなかなか起きない方なんだね」
そんな事ない…とは思う。
でも最近は家でもあんまり寝れてなかったからかもしれない。
少しの時間なのにぐっすり寝れた気がする。
それがこの人の腕の中だなんて最悪な気分だけど…。
この人のせいで悩んで寝れてなかったのに、この人こ腕の中で寝れるってなんなの…。
寝てしまった自分に嫌気がさす。
「ねぇ、今日はしないって言っちゃったからさ、もう少しキスしてい?」
息苦しくて目を覚ましたのはそのせいだったのかな…なんて思っていると、すぐに唇を塞がれた。
「んんッ……」
寝起きで全然まだ頭が回らない中、またいつ終わるか分からないキスが始まった。
「やぁ……、ぁ…」
口の中で暴れる舌がたまに來に押された時の所に当たって体が反応しちゃう…
「あーマジでムカつく」
いきなり低くなった吏生さんの声に体が強ばる。
「何、來に口の中開発されたの?」
開発、がどういう意味を指しているのか分からない私はただ何も言わず俯くしかできない。
「どこ?教えてよ」
そう言って唇を塞がれ、また口内を舌が暴れ出す。
「ここと……、ここか」
私のあるポイントをつくと体が反応してしまうからすぐに分かったらしい。
その後…、ジュッと舌を吸われた時、今までにないくらいビクッと体が揺れた。
それを見た吏生さんは口端を上げ「舌も感じるんだ」と少し満足そうな顔をする。
舌を絡められたり、口内をなぞられたり、舌を吸われたり…
いつ終わるか分からないそのキスのせいで、強ばっていた体が急に力が抜けた。
「キスだけでトロンとしちゃってるじゃん。
気持ちよかった?」
「はぁ……、は……ぁ」
そのキスだけで息がきれている私とは違って、吏生さんは凄く余裕そう。
そんな吏生さんが私の下唇を甘噛みしたり、軽く吸ってきたりして、またビクビクする。
「感度良すぎ。マジでハマりそう」
「も…ぅ、嫌…っ」
涙を堪えたけど、声は自分でも分かるくらい震えていた。
「分かった」
どうやらもう満足したのか、体を起こしてくれて今度は普通にソファに座らせてくれた。
もう帰りたい…。
こんな所、二度と来たくない。
「あの…帰っていいですか…」
「あー、うん。俺も今日はもう帰ろうかな」
そう言われた私は立ち上がってバッグを取り、すぐに旧校舎から出た。
早足で校門まで辿り着くと
「百合ちゃんの家どっち?」
後ろから着いてきていたの、気づかなかった…。
家なんてバレたくないし、どうやって誤魔化そう…。
「送るから早く帰ろ」
私の家は大学から結構近くにあるマンションで、歩いて10分くらい。
でも吏生さんといると、その10分が1時間くらいに感じてしまうと思う。
この大学内で吏生さんと一緒にいると目立つから早く帰りたいのに…。
横を通って大学を出ていく生徒達がチラチラこっちを見ているのがすごく伝わってくる。
「大丈夫です…。ここからそんなに遠くないので…」
「なんかあったら俺が責任感じるから送る」
なにかって…。
まだ外も明るくて安全だとは思うけど、そう言われてしまうと断りずらい。
何も言わずに歩き出すと、吏生さんは携帯を弄りながら着いてくる。
何か話しかけてくるかと思ったのに、そんなことは1度もなかった。
だからなのか、あっという間にマンションに着いた。
「あの…、ここなのでありがとうございました…」
勝手に着いてきたこの人にとりあえずお礼を言うけど返事は何も帰ってこなくて、吏生さんはマンションをぼーっと見ていた。
そして、
「百合ちゃんちって金持ち?大学生がこんなマンション借りないよね?」
「あ、えっと…」
そうだ。
普通なら多分、休めのアパートとかを借りる。
咄嗟に出た言い訳。
「親が…、心配性でセキュリティがしっかりしているところを選んだって言ってました…」
嘘では無い。
私の家は所謂、お金持ちだけどお母さんが一人暮らしで何かあったら心配、とは言っていたから。
「そうなんだ。じゃあまた明日」
何も疑う事なく、吏生さんは来た道を引き返して行った。
今まで相手してきた人達にも同じように送ってあげてたのかな…。
もしそうだとしたら案外親切な人なのかもしれないけど、私は吏生さんを受け入れらないからあの人がもし善人でも軽蔑してしまう。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます