宛名のない旅路
世界線の統一
プロローグ
毎日、同じことの繰り返し。
目を覚ますと、またあの天井が目に入る。
今日も何も変わらない。
掃除をして、内職をして、食べて、寝る。
それだけだ。
お腹がいっぱいになったことなんて、何ヶ月もない。
もう、空腹も寒さも、感じることすら忘れてしまった。
孤児院は、いつも通りだ。
子どもたちは笑ったり、喧嘩したり、時には泣いたりしているけれど、
僕にはそれが遠い世界の出来事みたいに思えてしまう。
どんなに声を上げても、僕の心はあまり動かない。
この日常が、あまりにも灰色で、
僕はその中で、ただ溶け込んでいるだけだった。
でも、ひとつだけ、僕が感じる「違う世界」があった。
それは、図書室の隅っこに積まれた埃をかぶった本たちだ。
その中には、冒険者たちの物語が詰まっていた。
誰も行ったことのない場所へ、命がけで向かう冒険者たち。
危険に満ちた道を進み、未知の世界を切り開くその姿が、
僕には何よりも魅力的だった。
本を読むたびに、僕の心がわずかに震えた。
「もし自分も、こんな風に冒険できたら…」
そんな思いが湧いてきたけれど、すぐにその思いが冷める。
現実には、僕の人生には何もないから。
残酷で、でも、どこか綺麗な世界を見つけることなんて、
きっとできるわけがない。
でも、それでも、僕は足を踏み出す。
たとえそれが意味もなく、空回りしても、
誰にも気づかれずに過ぎ去る物語でも、
歩き続けるんだ。
だって、何もない毎日を繰り返すよりは、
この「残酷で綺麗な」世界の一部になれるかもしれないから。
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