1章

1. 友達関係

私の傍にはいつも翔真が居て、たまに雄真も居たりする。そんな日々を過ごす私にもちゃんと女の子の友達もいる。


「茉夕ー!おっはよー!」

南海みなみ。おはよう」


この子は来栖 南海くるす みなみ。南海もまた小学生の頃からの親友とも言える仲で、翔真達とも仲良くしてくれる数少ない子。他の子は皆雄真を怖がったり翔真に遠慮したりで中々近寄って来ない。


「南海ちゃん、おはよう」

「翔真、やっぱり隣りだね。良かったねー?」


南海はニヤニヤしながら翔真に声をかける。それに対して翔真は笑ってはいるけど何処かそう感じさせない空気だ。それでも南海は気にしてないようで、雄真に視線を向けた。


「雄真もおはよう!」

「……あぁ」


チラリと翔真を見ても、こちらも全く見向きもせずにそれだけを返した。雄真は誰に対してもこんな感じで、少し心配になる。これでも円滑に学校生活を送っているみたいで、翔真からは心配しなくても大丈夫だと言われている。


「でも良かった。茉夕と同じクラスで。翔真達も、よろしくね」

「よろしくね、南海ちゃん」


2人のよろしくという会話に何処か違和感を感じたけれど、気の所為かな?


しばらくすると次々と生徒が入って来て、いつの間にか担任の先生らしき男性が入って来た。その見た目は若く、女子生徒の中にはきゃーきゃー言う子も居た。生憎、私にはそういう類は分からないけれど。


「それじゃ、これから入学式だから移動するぞ」

「茉夕、行こうか」

「あ、うん」


南海とは席が離れていて、翔真が当たり前かのようにまたしても手を差し伸べてきた。私はついいつもの癖でその手を取ったその瞬間。周りがざわつき始めた。


何事かと思っていれば、南海が急いだ様子で私達の方へ来ていた。


「ちょ、翔真本気!?」

「ん?何かしたかな?」

「えっと……」


茉夕はなんの事を本気かと聞いているのかは私には分からなかったけど、翔真が笑顔で有無を言わさずに南海を黙らせてしまった。その間も後ろから視線が突き刺さり、少しだけ後ろを向くと怖い顔で雄真が翔真を見ている事に気がついた。その理由もまた分からず、なんだか疎外感を感じてしまった。


「茉夕、私と行こう?」

「うん……?」


南海により翔真の手を離されて、南海の手が私の手を握った。それは女の子同士なら良くある事で、それを見たクラスメイトはぞろぞろと教室を出ていった。


さっきのざわめきはなんだったんだろう。そう考えながら体育館へ向かった。

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