第16話 5歳児に集る甲斐性なし

コミティアに出す同人誌の執筆が間に合わないのでしばらく更新できないかもしれません


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 神聖歴578年 秋の終わり月 10日



 そろそろ秋も終わりになってきた。遠くに見える森はすっかりと枯れ葉が多くなり、緑から茜色へと変わっていっている。冬が近づいてくると薬草が採れなくなるため、今年の薬草採取の仕事はそろそろ終わりになるらしい。



「おわりってことーはどうなんのー?」


「ギルドに依頼が出なくなる」


「なるほど、分かりやすい」


「ん。どうせそろそろ薬草も生えなくなる」



 ザンムの言葉にネネが端的に答える。依頼が出ない状況で薬草を採ってきてもお金にはならないから、実質的にギルド依頼が無くなった日が薬草採取が終わる日って事だな。非常に分かりやすい指標だ、良い稼ぎだったんで残念だが、ネネ曰くあと1週間かそこらで薬草も採れなくなるだろうから依頼があっても大して変わらないそうだ。



「ネネは冬の間どうするの?」


「師匠を手伝って貯蔵した薬草を冬の間に薬にする。冬は薬の消費も激しいしむしろ忙しい――ザンム?」


「ネネー、ちょっとうしろにいてー」



 ネネと俺の会話を横で聞いていたザンムが、険しい表情を浮かべてネネをかばう様に前に出る。怪訝な表情でザンムに問いかけたネネに、ザンムはそう指示を出した。ザンムの隣に立つように前に出ると、街から森へと入る入り口に見知った顔の少年たちが屯しているのが見えた。下町で悪ぶってる連中だ。


 うーわめんどくせぇ。間違いなく厄介ごとじゃねぇか。



「よう、孤児ども。最近稼いでるそうじゃねーか」


「俺たち金欠でよ。ちょいと恵んでくれねぇかな」



 先頭に居た普人種の少年と狼人種の少年がにやにやと笑いながらそう声をかけてくる。そうだろうなぁとは思ってたけど、びっくりするほどあからさまな強請りだ。連中の年のころは恐らく13~4くらいか。思春期で多感な時期であり、子供から大人に変わる時期でもある。若さゆえの全能感でバカな事をやってもなんとかなるとか、自分かっけぇとか思って本当にバカなことをやってしまう年齢だ。明らかにライン越えの犯罪をなんとかなると思ってやらかしてしまうのは若さゆえと言っても良いかもしれないが、だからといって自分より一回り年下の子供相手に金銭を強請るなんて正直恥ずかしいと思わないんだろうか。僕は5歳児に稼ぎで負けてますぅと大声て宣言してるようなもんだぞ。親御さんがこの話を聞いたら叱りつける前にあんまりにも情けなくて泣いちゃうんじゃないか。こんな馬鹿の愚図に育ててしまって申し訳ない、マリア様許してくださいって」


「タロー、ぜんぶこえにでてるよ」


「あ、失礼。つい心の声が。バカの愚図は言葉が違いましたね。5歳児に集る甲斐性なしと言い換えるべきでしたね。ごめんなさい、言い間違えました甲斐性なしの皆さん」


「うるせぇ! 殺す!」



 ザンムに注意され、つい思ったことが口に出ていたことに気付き、誠意を込めて頭を下げるも先頭に居た普人種の少年。めんどくせぇな少年Aで良いか。Aくんは顔を真っ赤にして腰に差していたナイフを取り出した。おいおい、挑発されたとはいえ年下の。しかも同じ町の子供相手に光物だしてきたぞこいつ。本物のバカじゃねぇか。


 後ろに居る他の少年たちは流石にそこまでバカというわけじゃないみたいで、明らかに少年Aの行動に引いてるみたいだが止めに入ってくる様子はない。いやお前らもせめて諫めろよ。ここは町はずれとはいえ人目が皆無って訳じゃないんだぞ。ほらあっちで畑仕事をしてたおっさんが明らかに慌てたように街に駆けてったじゃん。



「ちょっとタロー。やるきまんまんになっちゃったじゃんー」


「ごめんて。まさかここまで単細胞とは思わなくって。あ、ごめんなさいねまた本音が」


「死ね!」



 Aくんは俺の謝罪を受け入れてはくれなかった。それどころかナイフを右手に持ち、あぶなっかしい手つきでそれをブンブンと振り回しながら俺に向かって駆けよってくる。いや見てる方が怖ぇよ。ミスって自分の足刺しちゃいそうだ。碌にナイフを使った事がないんだろうなぁ、と感想を抱きながら、背負っていた木刀仏恥義理ぶっちぎりに手を伸ばす。


 地面に立てれば俺の肩あたりまである仏恥義理ぶっちぎりを背中から抜き放ち、そのまま上段から振り下ろしの一撃をA君の頭に打ち込む。そこそこの堅さと重さがある仏恥義理ぶっちぎりの一撃はAくんを一発で昏倒させ、勢いのままに崩れ落ちたAくんは地面と熱い抱擁を交わす事になった。


 馬鹿でよかった。まっすぐ突っ込んできてくれたお陰で一番威力のある上段からの打ち下ろしをどタマに命中させることができた。これがもうちょっと慎重な奴だったら俺たちも逃げるしかなかっただろうな。


 そのままもう一発、今度はAくんがナイフを持つ右手に仏恥義理ぶっちぎりを振り下ろしておく。ベギィと嫌な音を立ててAくんの右手が変形し、ナイフが手から離れた。このナイフは戦利品げふんげふん。危険なものだから没収だね。



「ア、アクトくんがやられた」


「おい、今の大丈夫かよ。やべぇ倒れ方したぞ」



 恐らく立場が一番上の奴をぶちのめせたのか、悪ガキどもは明らかに動揺してる。良かった、判断当たってた。もう一人の狼人種の方とどっちがリーダーか分かんなくてとりあえず反応が激しい奴を誘ってみたんだけど正解だったみたいだ。



「ん。頭頂部の一発はケッコー不味い。血も出てるし早めに治療しないとヤバいかも」


「という事なんだけど、こいつ医者に連れてかなきゃ不味いんじゃない? 薬剤師のネネのお墨付きだぜ」



 ネネはひょこっとザンムの後ろから頭だけだして、俺の前でぶっ倒れたAくんことアクトくんを見てそう言った。見た目からして薬剤師なネネの言葉は俺が言うよりもよっぽど真実味を持っていたらしい。恐らくサブリーダーなんだろう狼人種の少年はチッと舌打ちを一つしてアクトくんと俺を交互に見やり、グルルと唸り声を上げながら背後に立つ少年たちに声をかける。



「サム、ゲゲル。アウトを医者に連れて行くぞ」


「わ、わかったよバツ」


「うん……」



 バツと呼ばれた狼人種の少年は、俺を忌々しそうに見た後に視線を切ってアクト少年を背負い、仲間を連れて街に向かって走り去っていく。


 その後ろ姿が見えなくなるまで視線を送った後、大きくため息を吐く。危なかった……流石に全員で一斉にかかってこられたら何もできなかっただろうな。一発目でリーダーを仕留められたのは大きかった。あれで相手の冷静さを奪うことが出来たからね。



「今日の採取は、中止かな」


「ん。仕方ない」


「えー。あいつらどうせもりまではいってこないよー?」



 俺とネネの会話にザンムが不服そうにそう言うが、遠目にこっちに向かって走ってくる兵士の姿が見えるからな。流石にアレを放置して森にゴー、なんてしたら俺たちの方が咎められそうだ。


 遠目だけど顔見知りの兵士さんも見えるし、手早く済んだら嬉しいんだがねぇ。



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@Nissanさん、@paradisaeaさん、@Debu-Debuさんコメントありがとうございます。


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タロゥ(5歳・普人種男) 


生力17 (17.1)

信力46 (46.2)

知力13  (13.0)

腕力14  (14.1)

速さ17 (17.9)

器用15  (15.4)

魅力11  (11.3)

幸運8  (8.2)

体力20 (0.0)


技能

市民 レベル2 (13/100)

商人 レベル1 (41/100)

狩人 レベル2 (12/100)

調理師 レベル2(31/100) 

地図士 レベル1(15/100)

薬師  レベル0(42/100)

我流剣士 レベル0(20/100)NEW


スキル

夢想具現 レベル1 (100/100)

直感 レベル1  (0/100)

剣術 レベル1  (0/100)

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