第12話 冒険者ギルド(銀行)

商業都市サニム近隣の地図

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 神聖歴578年 秋の始め月 1日



 気づけば夏も終わり、秋がやってきた。



「タロー、おおきくなったねー」


「まだまだだよ」



 この半年ほどで俺の身長は、前世概算だとおおよそ10cmは伸びたと思う。俺からすると見上げるほどにデカいザンムの言葉だと実感はないが、確かに大きくなっている実感はある。


 これは恐らく、ラーメンを筆頭に食べるものが増え、体を作るエネルギーが多くなったからだと思う。これまでは栄養が足りなくて伸びなかった分を一気に取り戻してるんだろう。色々な働きかけの結果、孤児院の食糧事情は大幅に改善された。この結果が半年経った今になって表れているんだろう。


 体の成長に合わせてステータスの方も軒並み跳ね上がって言っている。元々の俺のステータスの低さは、栄養状態が悪い事が原因だったのだろう。あとは、やはり俺の身体は非常に成長が早いってのも間違いはなさそうだ。


 これを裏付けるように現在の俺のステータスは、


生力15 (15.1)

信力38 (38.7)

知力10  (10.6)

腕力11  (11.3)

速さ14 (14.6)

器用13  (13.8)

魅力9  (9.0)

幸運7  (7.1)

体力18 (18.9)


技能

市民 レベル1 (89/100)

商人 レベル1 (9/100)

狩人 レベル1 (53/100)

調理師 レベル1(75/100) 

地図士 レベル0(88/100) 


スキル

夢想具現 レベル1 (100/100)

直感 レベル0  (76/100)

剣術 レベル0  (35/100) 


 と、こんな感じである。一部はそこら辺の大人並になっているし、信力に至っては並の大人なんか目じゃないくらいに成長している。ただ、信力はともかく身体能力は最近伸びが悪くなっているのを感じるから、成長速度はそろそろ鈍化しそうである。


 あとは、技能は順調に育っているんだがスキルの方がちょっと予想外というか、夢想具現の経験値が溜まり切った筈なのにレベルが上がらないのだ。俺の生活の根幹を支えるスキルなだけに、こいつのレベルアップを非常に楽しみにしてたんだが……なにかしら成長に必要なのか、それともここが限界なのか。判断に困るところだ。


 まぁ今は伸びないスキルよりも他の順調に伸びている技能などをどう成長させるかに思考を裂いたほうが良い、かな?


 ちなみに俺に向かって大きくなったとか言っているザンムだが、熊人の彼はこの食糧事情の恩恵を俺よりも深く受けている。そもそもデカいんだから普人種より食わなきゃいけない種族なんだ。お昼にアホ鳥の踊り食いなんてやってるくらいの欠食乞食だった彼が人並みに食べられるようになった結果は、恐ろしいものだった。


 今年8つの彼の体格はすでに普人種のだいたい中学生ぐらいの大きさに成長している。この春までは俺より頭一つ大きいくらいの体格だったのに、この半年で使っていたベッドが狭くなるほど彼はデカくなったのだ。


 当然大きくなった分パワーや速さなんかもバリバリ上がっている。試しに一度、四つ足で本気で走ってもらったら馬みたいな速度で走っていた。


 身体がデカくなった分、背負いかごのサイズも大きくなる。そしてその分収入も増えるため、最近ではザンム一人で銅貨50枚近く稼ぐ事もある。ザンムの場合、そのうちの8割くらいは食費に充てているがそれでも毎日働いていれば結構な蓄えになる。


 そうなってくると今度はお金の貯蔵場所の問題が出てくる。この孤児院に住んでるものはもう家族同然の間柄だが、家族だって魔がさすことはある。ザンムは現在、自分の稼いだ銅貨を壺に貯めているが、ついついそこに手が出る子供だって出てくるかもしれない。


 人の良いザンムはそれほど危機感を覚えていなかったため、安全に金を預けられる場所の必要性をくどいくらいに説いた。2か月くらい。そこまで頑張ってようやく重い腰を上げたザンムを、俺は安全にお金を預けられる街の施設へ連れていく。


 その施設とは、冒険者ギルドである。






「いや、うちは銀行じゃねぇんだが」


「ギルドいんのおかね、あずかってるでしょ。ぎんこーといっしょ」


「そもそもお前ら……あ、いや。タロはギルド員だけどよ」


「はい。てつらんくのギルドしょう」


「おう。ギルド証のご提示ありがとうございます」



 ギルド証と呼ばれる身分証を見せると、途端に丁寧な言葉づかいで頭をぺこりと下げる。この動作は研修期間に文字通り叩き込まれるらしく、誰が相手でもこうなってしまうらしい。


 冒険者ギルドの受付をしてるライラさんは孤児院の出身で、口調は荒いけど茶髪が良く似合う可愛い顔立ちの女の子だ。月に1度レンツェル神父にご機嫌伺いにくるレンツェルガール(意味浅)の一人でもある。要は自立したエリザみたいなものだね。


 さて、この冒険者ギルドに来た理由は平たく言えばギルド員としての特典を濫用、げふんげふん。有効活用するためだ。


 なんとこの冒険者ギルド、一度登録してしまえばギルド員のお金を預かってくれるのだ。しかも国内と近隣諸国の冒険者ギルドならどこでも引き出しが出来るし、手数料もかからない優れものである。


 冒険者ギルドというのは国営の企業で、いろんな国で独自に組織立てられている。基本的な役割は一般市民が対処できないけれど国が出張る問題でもない事を解決する人たち、つまり便利屋さんのようなものだ。


 たとえば森の中に貴重な薬草を取ってくる、だとかこれこれこーいう獣を退治して皮を取りたい、だとかね。そういった需要を満たすために荒事も出来て国よりもフットワークが軽い彼ら冒険者というものが存在するのだ。


 国営企業だからそれぞれの国でサービスが違うのだが、それでも共通したサービスとして冒険者ギルドではお金を預ける事が出来る。なんでも冒険の際に一々大金をもっていけねーよ、という冒険者のごもっともな声に偉い人が答えた結果、銀行みたいな事も始めたのだとか。


 まぁ俺たちは冒険なんてしてないんだが、大変ありがたいことにギルド員である以上はこの制度を利用する権利を持っているのだ。この世界では、安全にお金を預けられる銀行なんてものは高額の手数料を払わないと使えないからね。冒険者ギルドの入会金もそこまで安くはないんだが、他に比べればね。


 イールィス家とかが運営してる銀行はなんと手数料で毎回銀貨一枚とか飛んでいくんだよ。その代わりにあっちは利息がデカいし融資なんかの相談もできる。というか金を持ってて稼げる奴で銀行に口座を持ってない奴はこの商業都市サニムには居ない。口座を持って維持しているってのは上流階級としての一つのステータスだし、デカい金額の決済は銀行を経由してやるのが大店じゃ当たり前なのだ。そもそもその規模の商売だと一々銀貨が何枚だーとか数えるのも大変だろうしね。



「ザンム、にゅーかいきんはどうか100まいね」


「う、うん。100まいかぁ……」


「まちなかのぎんこーだとまいかいこんだけかかるよ?」


「ひぇぇ……はらうー……」


「銀貨1枚でもいいぞ。ザンム、お前文字は書けるか? おねーさんが代筆してやってもいいぜ」


「かける、ます」


「口調は改めなくていいぞ。別にオレが偉いわけじゃねぇからよ」



 そういった上流階級のステータス扱いな銀行に比べて冒険者ギルドの入会資格は単純だ。銅貨100枚を支払ってステータスを含む情報を提出する。これだけである。ちなみにこのステータスは受付担当に見せれば筆記でも良い。ザルに感じるかもしれないが銅貨100枚を収められる人間がそもそもそう多くないから、これだけでも胡乱な連中は足切りされるのだ。


 銅貨100枚の入会金は決して安くない。ただ、現状のザンムだと高すぎるって訳でもない。今のザンムなら数週間で十分ペイできる金額である。それでもしり込みするのはこんな金額の支払いをこれまでやったことがないからだろう。まぁ、これから収入が増えていけば自ずと支払う金銭も増えていくし、その内慣れるだろう。



「はい、これでザンムも鉄級の冒険者ね。ギルド証はちょいと待て。これ魔法処理しないといけねぇんだよ……あ、そうだ。どうせならついでに依頼も受けて行けよ。森に入れる奴向けの依頼も結構あっから」


「ぼくらができてもうかるのがあれば」


「そんなものあったら他の連中がやってるよ……って他の連中になら言うんだがね。孤児院の後輩のために、このライラおねーさんが良い仕事紹介してやろう」


「え。それだいじょうぶなしごと? ごーほーてきないみで」


「……合法以外の依頼なんかねぇよ。ここ、国が運営してる組織だぞ」



 俺の言葉に一瞬間を開けて考えた後、ライラはそっと視線を逸らしてそう言った。いや、デカい組織ならなんかあるかなってカマかけてみたんだけど本当になんかありそうだな。怖いしあんまりこの件は深堀しないでおこう。



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タロゥ(5歳・普人種男) 


生力15 (15.1)

信力38 (38.7)

知力10  (10.6)

腕力11  (11.3)

速さ14 (14.6)

器用13  (13.8)

魅力9  (9.0)

幸運7  (7.1)

体力18 (18.9)


技能

市民 レベル1 (89/100)

商人 レベル1 (9/100)

狩人 レベル1 (53/100)

調理師 レベル1(75/100) 

地図士 レベル0(88/100) 


スキル

夢想具現 レベル1 (100/100)

直感 レベル0  (76/100)

剣術 レベル0  (35/100) 

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