ケモショタ好きの、ケモショタ好きによる、ケモショタの為の国作り

ガーリックねぎを。

第1話ケモショタ好き、過労死す

私の名は牧場彩雨。年齢は28歳。彼氏いない歴?勿論イコール年齢の所謂アラサー喪女だ。人生の相棒は昔も今も変わることの無いリポ〇タンD。あれにはいつもお世話になっている。大〇製〇様様だ。 寝ても覚めても仕事仕事仕事。ただのアラサー喪女ならばまだ何とか機会はあったろうに、残念ながら私は仕事が恋人の社畜アラサー喪女なのだ。


始発出勤終電帰宅。朝起きてする事は会社や取引先からのメール確認、スケジュール把握、通勤時はラジオを聞いて情報収集。午前は取引先への訪問、昼休憩とは名ばかりの短いトイレタイムに爆弾おにぎりをせっせと齧り、終電まで主に無能なクセに威張り散らかしてくる上司と仕事を押し付けてくる同期の尻拭い。唯一残ってる後輩はちゃんと真面目に仕事をこなしてくれるいい子たちだ。頼む転職してくれ。そして、ガランと空いた終電に乗り込んで、帰宅した後は脳裏にPCの画面を映し出しながら気絶するように眠る。我ながら哀れに思う。


だが、そんな私にも唯一癒しがある。それは『ケモショタ』だ……!!親の影響で漫画を読み始め、そこからズブズブと沼に落ちていき、気付けばオタクと化していた小学生時代。そして、中学校へ上がった途端私は運命の出逢いを果たした………

人型でありながら獣要素が満遍なく散りばめられ、ただでさえ可愛いもふもふが幼い少年の姿とも相まってさらに愛おしさが倍増される。まさに天使。ケモショタ文化を作り出してくれた人に心底感謝する。この心臓を捧げたいくらいだ。


今日も今日とてカバンに付けているケモショタ愛し子を愛でながら、人もまばらになった終電に乗り込んだ。



「ただいま〜」


玄関に入り、帰りをしらせる挨拶をするが勿論返ってくるのは廊下に少し反響した自分の声とドアが軋み閉じる音だけ。

一人暮らしを初めて10年近く経つがこの寂しさだけは一向になれる気配がしない。寂しいものは寂しいのだ。


短い廊下を歩き、部屋への扉を開け電気を付ける。直後視界には愛しい我が子達が私を迎えていた。


「ただいま皆ぁ!!!」


勿論返事は返っては来ない。相手は物言わぬフィギュアにもちころ、等身大ぬいにタペストリー、ポスターとアクスタだからだ。

それでもいい。だって、私の部屋は百は行くであろう数多のケモショタで埋めつくされているのだから!!


「スゥゥゥゥ………ンハァァァァァァアア!!!!ミィアたん今日もいい匂いでちゅねぇ……!!」


1番近くにいた白うさぎのケモショタ、ミィアに抱きつきその匂いを変態も裸足で逃げ出すほどの勢いで嗅ぐ。

そう、私は推しにイメージ香水を振り掛けるオタクのように各ケモショタに自分のイメージで作り上げたオリジナル香水を振り掛け、その匂いを嗅ぐことで癒しを得ているのだ。いや、匂いだけが癒しでは無いんだけども………ほら、アレだよ。猫吸いと一緒。推しの匂いは……嗅ぎたいじゃん??


それはそれで置いといて。今日はなんと今期1と言っていい程良いことが起きたのだ。それは…


「皆!!新しい子が来てくれたよ!!」


たまたま寄ったコンビニにあった1番くじでA賞のケモショタぬいと、ラスワン賞の等身大ケモショタぬいをお迎え出来たからだ!!!

70cmと130cmを抱えながらルンルンと夜道を歩く姿は傍から見たら恐らく化け物だろうな……


だが私はそれでも構わない。何故なら新しい子をお迎え出来たからだ!!(2回目)


明日からの出社が死ぬほど憂鬱だったけど、この子達をお迎えすることが出来て楽しみが増えたからそんな気持ちなんてショ〇ヘイ・オ〇タニのホームランばりにどこかへ飛んで行った。


「ふぁ〜あ………ミィアたんの匂い嗅いでたら眠くなってきちゃった……」


白うさぎのミィアたんはアロマ師という設定を付けており、ラベンダーをベースにしたすんごいリラックス効果のある香水を振りかけてある。

連日連勤睡眠不足の私からしたら紛れもなく即意識を刈り取る代物だ。


「やば……寝落ち…する……」


意識を半分飛ばしながら、どうにかこうにかベッドへ移動する。スーツがシワになるなど知ったこっちゃねぇ。後でクリーニングに出せばいいし……


すぅっと意識が落ちていき、一息大きく吸った瞬間突如心臓に痛みが走った。


「ッグゥ…!!いだぁ……い…ぁぐっ…!!」


痛い、痛い、痛い、痛い。痛すぎる。心臓に何度も槍で突かれたあと直に火炙りされたような痛みが走る。いや、槍で突かれたことも火で炙られたこともないけど。


「ヒュッ…カヒュッ……」


苦しい。痛みで呼吸が出来ない。痛みと苦しさで涙が溢れる。徐々に薄れゆく視界と遠のく意識の中、最後に私の視界に入ったのはまだ名前も付けてあげられなかった新人ちゃん2人。


「な…まえ…つけて…あげ……られなくて……ごめん……ね…」


今までのケモショタ達との思い出が走馬灯のように駆け巡る。

あぁ神様。もしこの世に神様がおわすのならば、来世こそはケモショタを思う存分愛でさせてください。


そう祈った直後、私はストンと暗闇に落ちた。

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ケモショタ好きの、ケモショタ好きによる、ケモショタの為の国作り ガーリックねぎを。 @garlic_negiwo

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