夜の山は、ヒトの領域ではない。その中で闇にひらめく、小さな恐怖の牙。

その地域では、とくに珍しい生き物でもないという『はしぇくぐり』。
虚実さだかならぬ生き物に惹かれる主人公は、それを目に、カメラに収めたいと、夜の藪へとおもむき。
けれども、憧れに目を奪われた彼は、おそらく失念していた。
野生のもの、虚実さだかならぬもの、それは、人間への脅威という可能性を秘めていることに……。

そんな未知の恐怖を、気配と息づかいが感じられるほどに描きだした作品。
ほら、そこの稲架(はしぇ)の影のなかに、光る目と牙が……。