※これは極めて個人的な呪物です

“読むと呪われる”と噂の日記

■月■■日

コンビニの帰り道、何か生き物の腐ったような臭いがした。そういえば俺が子供の頃と違って、最近は町中で動物の死骸を見ない気がする。死骸のない綺麗な街。詩的だけど、ホラーじみてて良いな。ちなみに路地裏とか覗いてみたけれど、特に死骸は見つからなかった。ちょっと久しぶりに見てみたかったな、なんてね。


■月■■日

部屋を真っ暗にして何か聞こえないか試してみる。奇行だってのは自覚しているけれど■■■■のためだ、仕方ない。15分経った。聴覚が鋭敏になったのか、外の音がけっこう聞こえる。普段は何か見てるかイヤホンしてるからな。30分経った。何処かで誰かが誰かを呼ぶ声が聞こえた、気がする。数分に1回くらいの頻度。耳鳴りかも。部屋の中に静寂と耳鳴りが渦巻いていて、壁や窓ガラスの向こうの音とは別に聞こえている。目が見えない人ってこんな感じの世界にいるんだろうか。40分でやめた。何か疲れた。


■月■■日

寝る前、歯を磨こうと洗面所に行くと何だか首筋に視線を感じた。たぶん気の所為だろう。ヒンヤリした空気が通り過ぎたとか、怖いものを探すあまりにちょっとした感覚を「視線」と思い込んだとか、その程度のことじゃなかろうか。何にせよ、この程度のことは■■にならない。■■過ぎるし。


■月■■日

書き始めてまだ4日目だけれど、思った以上に「怖いの種」は日常に転がっているものだ。よく通る道の電柱、その裏側を何気なく覗いてみたところ、少し高い位置の足場釘に薄汚れたマスコットのキーホルダーがかけられていた。誰かが落とし物を拾ってかけただけかも知れないが、見方によっては怖い。それに表から見えないところ、しかも背伸びしたくらいじゃ届かないような場所にかけてあるというのもヒトコワを感じる。


■月■■日

今日はとにかく■■■■が怖い。


■月■■日

初日に生き物の腐ったような臭いを嗅いだ場所でまた同じような臭いがした。気の所為ではない。しかもその臭いが家の近くまでついてきた。念の為、調べてみたけれどあの辺で事件などは起こっていないようだ。ただ、まだ発覚していないだけかも知れない。あそこは住宅街だ。壁の向こうで何が起きているかなんてわからない。もし下手に首を突っ込むと第一発見者とかになっちゃう? それはちょっと嫌だな。サスペンスとかミステリーの当事者になるのは勘弁して欲しい。待てよ、臭いがついてきたってことは、霊がついてきてる可能性があるってことか。ホラーの当事者か。それはあり、か? いやでも当事者になった場合、■■■しても良いんだろうか。サスペンスとかミステリーとかと違って、■■■■■を■■■■した■■■■■って■■■■■。流石に不謹慎だよな。■■さんに相談してみようか。


■■月■■日

このメモを見返してみた。初日に生き物の腐ったような臭いを嗅いで、2日目に誰かを呼ぶような声を聞いて、3日目に視線を感じて、昨日は臭いがしばらく付き纏ってきた。これは、完全に取り憑かれていないか? もしかしたら4日目に見つけたマスコットのキーホルダーも何か関係があるのか? 考え過ぎ? ■■を■すあまり、ちょっとしたことを紐付けて考え過ぎているのか? 念の為、霊能力者に見てもらった方が良いだろうか。いや、でも性急過ぎるか。流石に。


■■月■■日

今日はあえて別の道を通ったのに、またあの臭いがした。これはもう確定だろう。取り憑かれている。■■■■を始めた途端にこんなことになるなんて、流石に出来過ぎていないか? それとも、ずっと取り憑かれていたのに気付かなかっただけなのだろうか。その可能性はないとは言えない。


■■月■■日

明日、■■さんに視てもらえることになった。■■には「急きょ打ち合わせが入った」と言い訳したが、ちょっと疑っている風だった。こういうとき、嘘が下手なのが情けない。ちなみに今日はあの臭いはしなかった。取り憑いてたものが自然に離れるなんてこと、ないよな? うっかり祓っちゃったとか? ないない。一応もう一回外に出てみた。臭いはしなかったが、ずっと誰かに見られているような気配があった。大丈夫。まだ憑かれている。気分が悪い。これも絶対、霊の仕業だ。


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