第1話 目覚め — 信長、現る

冷たい光が瞼の裏で踊った。音はなかった。あるいは、自分が知っている「音」と呼べるものが、もうこの世界には存在しないのかもしれない──そんな感覚が、彼の胸を満たした。

「……ここはどこだ」

低く、だが確かな声が漏れる。言葉の響きに古さはある。しかし、その声には戦場で磨かれた刃のような鋭さがあった。信長はゆっくりと頭を持ち上げる。視界の端で白衣が揺れ、無数の機器が無機質な光を放っている。昔の寺や城の暗がりではない。冷え切った研究室──それが彼の目に映った最初の景色だった。

「目を開けたぞ。……これは夢か、死か。それとも新しい戦か」

彼の唇から、半ば呟くように言葉が出る。周囲の人間たちが息を飲んだ。白衣の一人が、手元のタブレットを素早く確認しながら、震える声で報告した。

「復活反応、安定。認知機能も高水準で回復しています。想定よりも早い……!」

彼らの顔は、驚きと興奮と、どこかに潜む恐れが混ざっていた。信長はそれを一瞥すると、周りを見渡した。鉄の台、ガラスのカプセル、遠くのモニターに映る人物群像のデータ。モニターの一つに、古い画のように描かれた人物の肖像が並んでいるのが見えた。顔ぶれ──それは彼が聞き覚えのある名であった。

「——これは、秀吉か?……他にも。何だ、十人の武将というのは?」

若者のような研究員が、小声で誰かに囁く。だがその言葉は信長の耳にも届いた。彼はゆっくりと口角を上げる。古い血が、現代の機械音に反応する。

「面白い。かつて散った者たちが、再び集うか……」

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