31日目~35日目
31日目
朝、鏡の前で髪を整えていたら、背後のドアが少し開いた。風かと思い振り返ると閉まっている。鏡を見ると、今度は開いたままだった。指先で触れると曇りが広がり、扉も映像ごと消えた。講義の帰り、教室の窓に立つ影が一つ。こちらを向いていないのに、目が合ったような気がした。今日も風呂は長め。
32日目
食堂で席に着くと、椅子が先に引かれていた。誰かが座っていたように温かい。向かいの席のトレーに水滴が残っている。周囲は誰もいない。箸を取ろうとした手が震えた。食後、返却口の奥で水音が途切れず続いている。配膳口の奥の暗がりに、濡れた制服の裾が見えた気がする。今日も風呂は長め。
33日目
夜、部屋の隅に黒い染みができていた。ティッシュで拭くと水の匂いがした。天井には跡がない。足元の板がかすかに沈む。下から空気が上がってくる感触。階下の誰かが動いたのかもしれない。床下の空間なんてあっただろうか。ノートを開くと、前のページまでしっとりしている。今日も風呂は長め。
34日目
講義室のガラスに、僕と同じ服を着た人影が映った。姿勢まで同じ。隣の席には誰もいない。立ち上がると、ガラスの中の影は一瞬遅れて動いた。目の高さで止まり、首を少し傾けた。その動きだけが現実よりも滑らかだった。教授の声が遠のき、チョークの音だけが水をこすったように響く。今日も風呂は長め。
35日目
朝、寮の廊下が濡れていた。足跡が並び、角を曲がったところで途切れている。天井のライトがゆらゆら揺れ、光の輪が床を撫でる。影がそこを通るたびに少し暗くなった。昼、友人に「最近姿を見ない」と言われた夢を見た。夢だったはずなのに、ノートにその言葉が書かれている。今日も風呂は長め。
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