第39話 舞踏会の招待状
天帝の別邸の地下室から政陽たちは再び魔界に帰るべく界の狭間を通り抜ける。
今回も桜華は政陽に抱きかかえられての通過だ。
だが来た時よりも怖さは感じなかった。
政陽がギュッと抱きしめていてくれたからだろう。
日向も怪我を負って流れ出た霊力が回復してなんなく界の狭間を通り抜けた。
魔界側の扉を開くと神霊宮の地下室に辿り着く。
「今回はとんだ騒ぎに巻き込まれたな」
政陽は自分の黒い羽をしまう。
「ごめんなさい。セイ。元はといえば私が安易に指輪なんて嵌めるからこんなことに」
「桜華が気に病むことはないよ」
政陽は桜華を抱き寄せると額にキスをする。
「桜華様。今回は私と天帝に和解の機会を与えてくださりありがとうございました」
日向が桜華に頭を下げる。
「いえ、そんなこと。私は自分の意見を言っただけで」
「おかげで私は父と母に望まれて産まれたのだと確認できました。長年の重石が取れた気分です」
日向はにこやかに笑う。
「それなら良かったですわ。日向様」
桜華たちは神霊宮の地下室から政陽の私室に戻った。
すると流星が現れる。
「ご無事のお帰りなによりでございます」
「まあ、ちょっとごたついたがな」
政陽はソファに座りながら流星に答える。
「留守の間、何もなかったか?」
「魔王様からお手紙が届いております」
「九曜から?」
「はい」
流星が便せんを差し出す。
政陽は中身の文章を確認すると顔を曇らせる。
「セイ。どうかしたの?」
「いや、一週間後に魔王城で舞踏会が開かれるから桜華と一緒に参加しろとの招待状だ」
「まあ、舞踏会?」
「ああ。魔界の有力者たちが集まる舞踏会だ」
「参加するの?」
「う~ん。私一人で参加してもいいのだが……」
政陽は歯切れの悪い返事をする。
政陽は桜華を魔界の社交界に連れて行ったことはない。
それは魔族の高位貴族が桜華を傷つけないようにだ。
だが桜華は将来政陽と結婚するなら魔族との付き合いを覚えた方がいいと思った。
「セイ。私、その舞踏会に行きたいわ」
「桜華」
「だってせっかくの魔王様の招待だし私も魔界の社交界に出てみたいわ」
「あまり楽しいものではないかもしれないよ」
「かまわないわ。何事も経験ですもの」
桜華がそう言うと政陽は仕方ないという顔をする。
「誰かにいじめられたら私に言うんだぞ」
「分かったわ。私、頑張って魔界の社交界で他の方々に認めてもらえるようにするわ」
桜華は張り切ってそう答えたが政陽は最後まで渋い顔をしていた。
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