第23話 虚無の消滅
政陽は人間界の「忘れの森」にたどり着く。
ここには自分の体がある。
政陽は何重にも張られた結界の中を難なく通って神殿の奥に安置されている自分の体の前までやって来た。
溜息を一つつくと政陽は自分の本体へと戻った。
政陽の体は消えて無くなり完全に本体へと吸収される。
そして人界神レオンは目覚めた。
この日三界は揺れた。
圧倒的な強大な力を持つ神の目覚めに。
長い金髪に右目は赤色、左目は金色が人界神レオンの特徴だ。
レオンは目覚めると同時に魔界へと転移した。
虚無を破壊しなければならない。
そしてレオンは神霊の森の一部を飲み込み始めた虚無の前に立ちふさがった。
「虚無よ。そんなに食いたいなら我の力を食えばいい」
レオンは虚無に自分の力を注ぎ込み始めた。
「来たか。セイ」
九曜は虚無と人界神レオンの映像を見つめている。
「あれがセイ?」
金髪に右目は赤色で左目は金色の姿に桜華は戸惑う。
「そうだ。あれが奴の本当の姿、人界神レオンの姿だ」
九曜は面白そうに映像を見ている。
虚無はレオンの力を吸い始めて膨張を続けている。
ものすごい力を桜華も感じた。
神霊の森から距離はかなり離れているというのに。
やがて虚無はレオンの力を飲み込むことができずに風船が割れるように爆発を起こした。
「やったか」
九曜は満足そうに呟く。
「セイは? セイは無事なんですか?」
「ああ。だがしばらくは眠りにつくだろう」
「眠りに? なぜですか?」
「虚無を破壊するのに大量の力を使ったからその反動でしばらく奴は眠りにつく。目覚めるのは一週間後か一か月後か一年後か誰にも分からん」
「そんな……」
「もう虚無の脅威は無くなった。お前たちが希望するなら神霊宮に帰ってかまわないぞ。神霊宮は飲み込まれなかったからな」
桜華は映像を見るとそこには何事もなかったかのように神霊の森が映っている。
レオンの姿はなかった。
桜華に迷いはない。
政陽が帰って来るまで神霊宮で待ち続けよう。
そして政陽が帰ってきたら自分の想いをもう一度告げよう。
「桜華。お前はセイのことが好きなのか?」
九曜の言葉に桜華は頷く。
「はい。でもセイからは自分の想いは助けてくれた人への感謝の気持ちを恋心と勘違いしていると言われてしまいました」
「なるほどな。それは奴が桜華のことを思って言ったんだろう」
「どういう意味ですか?」
「奴は破壊神エミリオンの血を唯一引く神だ。だから自分の子供を残せない。自分の血脈から破壊神エミリオンを生み出すわけにはいかないからだ」
桜華は黙って九曜の話を聞いていた。
「だが女というモノは自分の好きな相手の子供を産みたがるモノだ。桜華が政陽と結ばれても政陽はお前に子供を与えられない。だから遠慮してるんだろう」
「そんな。私はセイがいてくれるなら子供ができなくてもかまわないのに」
「その想いをセイに伝えてやるといい」
「はい。魔王様。ありがとうございました」
桜華はそう言って魔王の私室から魔王城の広間に戻る。
そこには日向と流星がいた。
「日向様。虚無の脅威は消滅しました。皆で神霊宮に帰って政陽様の帰りを待ちましょう」
「分かりました。では皆で神霊宮に戻りましょう」
桜華たちは魔王城から神霊宮に向けて出発をした。
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