ダーククラブ活動記録4「放火魔を許すな」

リラックス夢土

第1話 射撃訓練



 俺は慎重に的を狙って銃を発射した。

 銃弾は見事に的のど真ん中を撃ち抜く。



「うん。マーくん、命中率は上がって来たね」



 木村さんが俺の射撃訓練を見て満足気に頷く。



 俺は紫乃原しのはら真人まさと。ダーククラブの部長をやっている中等一年生だ。


 俺の父親は国際指名手配犯の殺し屋「ダークナイト」、母親は世界を股にかける結婚詐欺師「礼美あやみ」だ。

 悪党のサラブレッドのような血筋の俺がまともな幼少期を過ごせるわけがない。


 俺は母親の仕事上子供がいると仕事にならないってことで父親に育てられた。

 そして父親は俺が物心つく前から俺に人殺しの技術を教えた。

 まったく他に教えることがあったんじゃないかと思うが今は父親にも母親にも一応感謝してる。


 俺は小等校三年生から一人暮らしを始め、今は自分の女でもある「原野美由紀」と同棲中だ。

 美由紀となぜ同棲することになったかは「ダーククラブ活動記録1」を読んでくれ。


 放任主義のような両親だが生活費は毎月送ってくれるので俺が生活に困ることはない。

 それに何か困った時はこの俺の目の前にいる木村さんを頼ればいい。


 木村さんは父さんの友人で木村さんも殺し屋だ。名前は殺し屋「ピエロ」。

 木村さんは裏家業の人間向けのバーを経営していて俺もそこでバイトをしている。


 何でも俺の父さんと母さんは木村さんのバーで初めて会ったらしい。



 しかしよく子供作る気になったよなあ。

 まあ、そのおかげで俺は誕生できたんだが。



 俺が部長をやっているダーククラブの入部条件は「人を殺したことがある者」だ。

 俺を始め部員は「原野はらの美由紀みゆき」「吉田よしだ拓也たくや」「みやび吾郎ごろう」「広江ひろえたけし」だ。

 みんな中等一年生だが「人を殺したことがある者」たちだ。


 だが勘違いしないでくれよ。

 俺たちはただの人殺し集団じゃない。


 世の中には死んだ方がいいっていうクソ野郎が存在する。そいつらをぶっ飛ばすために作ったクラブだ。

 仕方がない場合は人を殺すこともあるが積極的には俺たちは人を殺さない。

 まあ、なぜ部員たちが人殺しになったのかも「ダーククラブ活動記録1」に書いてあるからそっちを読んでくれると助かる。



「後は射撃のスピードがもっと上がれば言うことないがこれは練習しないとだからねえ」



 木村さんは俺にアドバイスをくれる。

 ここは木村さんのバーの地下にある射撃訓練スペースだ。


 夏休みにちょっとした事件に巻き込まれた時に犯人たちと撃ち合いになる場面があった。

 俺が苦戦していると「仕事中」だった父さんが現れて犯人たちを仕留めちまった。


 その時父さんに「真人ももう少し銃の腕前を上げた方がいいね」と言われた。

 だからその事件解決後俺は木村さんから銃の指導を受けている。



「今日はここまでにしよう。そろそろお店も開けないとだし」



 木村さんはそう言って銃を片付ける。



「ありがとうございます。木村さん」


「いやいや、お礼はお団子と草餅でいいよ」



 木村さんは甘い物に目がない。



 よし、今度来る時にはお団子と草餅を持ってくるか。



 俺はそう思いながらその日も木村さんのバーでバイトをした。



 バイトの時間が終わるのは深夜0時だ。

 それから自転車で自宅に帰る。


 美由紀はもう寝てるだろう。

 だが俺の自宅にはいつも明かりが点いている。

 美由紀曰く「暗い自宅に帰るのは寂しいから」だそうだ。


 そんな美由紀の心の優しさが染みる。

 季節は10月。太陽が落ちるのも早くなった。

 俺は冷たい夜風を浴びながら自宅に帰る。


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