6. 私 の 側 に 勝 手 に い る 。

 古城で得た調度品を売りさばいてウハウハ……でもないんですけど、お金に余裕が出来た私達。

 今日はカフェでご満悦。


「何に使いましょうかねえ」


「もふりんのご飯を豪華にするコャ」


「ログハウスの装備更新だな。魔導銃も欲しい」


「私は筋トレとかエクササイズしたいですね。クレアって人……ヴァンパイアロードが綺麗すぎて困ります」


 なんで困るかというと。


「がぶがぶ。なんで歯を通さないのよーがぶがぶ」


 私 の 側 に 勝 手 に い る 。


「めっちゃ邪魔なんですけど、クレア? さん。カフェの室内で噛んでるのめっちゃ恥ずかしいです」


「あたくしはあなたのライバルだから別にいいのよ。しかし全く歯が通りませんわねー。甘噛みなら通るのですけれども、それじゃあ意味がないのですわ。甘噛みは下僕というか恋人の噛み方なので」


 勝手にライバル宣言されてます。しかも戦闘には別に加わらないし。そう、純粋な邪魔者なのである。


「もふりんは完全に無視コャ……」


 もふりんを完全に無視して、がぶがぶするクレアさん。

 女性同士でこういうのってちょっと変じゃないですか? 違います? そういう時代でもない?


「すらりとした顔に宝石のような青と赤のオッドアイ、小さくてプリッとした唇に綺麗な眉毛、真っ白なお肌。あたくしが乗っ取りたいくらい出来てますわこの女」


「クレアさんもお綺麗でしょうに。あのーそろそろよだれが酷いのでやめてもらいますか。オメガ・ストライクぶっ放しますよ」


 渋々と胸を揉みつつねっとりと私から離れるクレアさん。一発零距離スリングショットを撃ち込んでおいたのはわざとではない。


「基本的に腕力では私が敵わないんですから、エッチなことや酷いコトしないでくださいよ」


「おーっほっほっほ。筋力や腕力なんか使いませんわ、性愛の力で落とし込んでやりますわ! その胸と腰はあたくしのものでしてよー!!!!」


「叫ばないでください恥ずかしい!!!!」


 そんなことをしていると、私達の元につかつかと近付いてくるものが。

 こんな連中に近づけるなんてたいしたものですね。


「失礼、あなたがクラックスか」


「おう、お前は誰だ」


「ヴェルズガルド伯爵様の関係者だ。今この場で起きていることはわかるか」


「探査機で莫大なエネルギー波が発生していることがわかる。なんだこれは」


「今はもう時間がない。伯爵様の宮殿で話を聞いてくれないか」


 急に切迫した雰囲気になりました。

 というか、伯爵様の宮殿に行くって本当ですか。身なり整えなくて大丈夫ですかね。クレアさんとか。

 あ、そう、変身できる。なーるほど……。あらまぁ赤い綺麗なドレスになっちゃって。ずるすぎるだろこの子。


「クラックスはあえてそのスタイルの方がわかりやすくてよろしいでしょう。さあ、参りますわよ皆さん」


「クレアさん、急に貴族になってますね、立ち居振る舞いが。300年ちゃんと生きていると貴族の所作も身につくのでしょうか」


「先を急ごう、エネルギー波がだんだん大きくなってる」


 皆でもふりんに乗って先を急ぎます。デカいから歩幅が大きく移動が楽々……とはいかない。踏み潰しちゃうから。

 道の真ん中を歩く感じ。


「もっふもっふもふりんコャ」


「最近出番なかったから楽しそうですね」


「ハァハァ、こうやって胸とおまたを押しつけて」


 純粋に嫌なのでゼロ距離スリングショットで500メートルくらい吹き飛ばしました。


「冗談ですわよー、毎度毎度性愛なんてするわけなんてちょっとだけしか」「もう一発やっておこう」


 次は800メートルくらい吹き飛ばしました。

 ただ、全然効かないし飛んで戻ってくるのでほとんど効果無しなんですよね、ヴァンパイアロードだけある。


 そんなこんなで宮殿に到着。豪華……。


 長い塔が6本立っていて、どれもまっ金色で出来ています。


「塔は全身が魔導工学でメッキしてあるな。金じゃなさそうだが、青銅の一種といったところか。この質だと金色が落ちても磨き続ければ綺麗な緑色になるだろうな」


「ほえー。この門はどうなんです?」


「これは金メッキだな。色が違う。屋敷の中へ入るぞ。もふりんは巨大大型犬サイズまで小さくなってくれ。護衛を頼む」


「もっふりんコャ!」


 屋敷の中はまず庭がありまして、どれも綺麗に手入れが施されていました。

 対称系で出来ていて、お花が綺麗。本当、おとぎ話で出来ているかのよう。あ、あそこに休憩するスペースがある。白いうねうねした作りで綺麗だなあ。


 中庭を10分くらいかけて歩いて到達し、普通は馬車で移動することを知ってずっこけて、なんとか宮殿前に到着。

 壁に様々な彫刻が施されていて美しいです。ログハウスもこういう風にしたいものですねえ。今は丸太を組んでるだけですからね。


「それではクラックス様、こちらへ。皆さんもどうぞ」


「案内人が急に様つけてますね」


「そりゃお前らの遊びがとんでもねえからびびったんだろ。パチンコで数百メートル飛ばして無傷で高速移動してくるんだぞ」


 そっかー。


 控え室で待つこと数十分。応接? の間へ呼ばれました。

 そこにはこれまた意匠が施されているえんれー豪華な椅子に座っているお方が二名。謁見の間かなあこれ。

 なんか髭を伸ばした男性と、お綺麗な女性が座っております。


 で、まあ、貴族様だしなんかこう頭を垂れるとか口上を述べるとかするのかなーとか思っていたんですけど、


 誰 も し な い 。 


 普通に大将が「よう、俺がクラックスだ、話はなんだ」とか聞いてますし。クレアさんは腰に手を当てて早くしてくれねーかなみたいなスタイルです。やめてヴァンパイアロード、ヴァンパイアロードやめて。確かにヴァンパイアロードのほうが身分上は偉いけどさ。


「ふう……。話を端的に述べよう。この領土内でエネルギー波が高まっておるのは知っているな。それも日に日に強くなっておる。それを解決して欲しい。このままではエネルギーがあふれ出すかもしれぬ」


「古代遺跡の暴走とやらか。まあ良いが入り口は? 調査が進んでいなければ俺たちは逃げる、契約もないのではな」


「ぐ……今調べておる。頼む、今この街にいる魔導技師はおぬししかおらぬ」


「遺跡ってこの地下にあるやつかしら? わたくし知っておりますわ。あの地下遺跡のことでしょう?」


 びっくりするヴェルズガルド伯爵。


「ど、どこにあるというのか!?」


「テレポーター。この宮殿の奥深くに眠っているでしょう? 以前下僕を借りに来たら偶然見つけまして。わたくしなら起動できますもの。そうしたら地下遺跡に出会いまして」


 口をパクパクさせているヴェルズガルド伯爵。心中察するに余る。


 というわけで契約を結び、地下遺跡へと旅立つことになったのでした。


 どんなヤツが現れるんですかねー?

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