月の筋肉ウサギ、カフェはじめました

チャイ

月のムキムキウサギたち

令和勝手にぽんぽこ話シリーズ(昔話パロディ系)


第1話 月のムキムキウサギたち


令和のある日こんな話があったのじゃ。

秋のきれいな夜空、見上げてみるとまん丸黄色いお月様。昔から、月のウサギがペッタンペッタン、餅をついているのが見えるのじゃ。

今日は月の裏側の話をしようかの。なんでも「ウサギの餅屋」が店を開き、隣りには大きな餅工場があるという話なんじゃ。


餅屋の名前は、「千年古都 月之都餅屋」なかなかの老舗。


ウサギたちは毎日、杵でペッタンペッタン。

長いお耳、もふもふ毛並み、くりくりお目目。超キュート!

でも腕はムキムキマッチョ。餅つきで鍛えられた筋肉が盛り上がる。


今日も今日とてペッタンコ。

はぁぁ、ペッタンペッタン!!!目にもとまらぬ高速餅つき。


リーダーのモチコ「今日もノルマ達成!でも毎日これじゃ飽きるよね」

相棒のツキミ「そうだよね。何か新しいことしたいな」

工場長の兎爺さん「じゃあ、地球との定期便ができたし、地球の美味いもん視察に行くか?慰安旅行じゃよ」

ウサギたち「やったー!地球!」


第2話 定期便で地球へ


銀色の宇宙船「モチエクスプレス」で出発。

「ねぇねぇ、知ってる?大昔ってね、この宇宙船、牛車の形だったんだって。で、すっごく揺れたらしいよ」

「知ってるー、それで、うちの会長が、もう二度と地球に行くもんかって、怒鳴ったって話よね。それ以来、月と地球の船が途絶えたんだって」

窓から青い美しい地球が見えてきた、ぐんぐん近づいて無事に地上に着陸。


地球の宇宙基地は東京に近かった。月コインを円にして「地球の歩き方」を片手に観光を楽しんだ。おいしいものが好きな彼らはラーメン、たこ焼き、お寿司にステーキと食べ歩き。

レトロな喫茶店も行ってみたいし、ガード下のラーメン屋さんも魅力的!


ウサギたち「円安で良かったよ!ほらほら、おしゃれな和カフェもあるよ」

モチコ「京都、人多すぎ!」

ツキミ「お月見バーガー美味かった!」


モチコ「それにしてもさ、バーガー注文するときって、ドキドキ緊張するよね。」

ツキミ「わかるー。ホント、前の人じっくり観察しちゃったよ。ね、そうだ、アタシらもなんか、餅でいいもの作ろうよ!」

みんな「うんうん、カフェっぽい餅おやつ作ろう!」


帰りの宇宙船の中はウサギ餅工場のご一行様で賑やか。

土産話に花を咲かせ、地球土産のあれこれを自慢しあった。

「木刀いいだろ?」

「ペナント売ってなかったなぁ、探したんだけど」

「会長も来ればよかったのにねー」


第3話 ウサギカフェ開店


月に戻ったウサギたち。工場の隣りに新しくカフェを併設する計画を実行中!

月浦町、この近所には望月神社もあってなかなか立地がいいのだ。


茶店じゃないぞおしゃれカフェ。めざすは、古民家カフェ風でほっこり落ち着く空間だ。


名前が決定した「MOCHI&USAGI CAFE 姫」


ツキミ「なーんか、最後のアレ、気に入らないなぁ。店舗のロゴにも姫カットのシルエット入れたしね」

モチコ「会長って自己主張はげしーい」


気を取り直して彼らはカフェメニューを充実させることにした。


モチコ「餅を使った新メニュー開発するぞ!」

試行錯誤の末、完成したのが……。


「もちもちホットケーキ」

いつものホットケーキ生地に角切りにした餅を混ぜて焼くだけ。

ふんわりしたホットケーキにところどころ餅が入っている。餅部分にあたるとモッチっとおいしいのだ。


「満月無双ぜんざい」

魂を込めた、非常にコシの強い餅を使ったぜんざい。ムキムキの筋肉魂がこもる。きび入りで黄色い丸餅を満月に見立てている。


「朝限定 曙の力餅うどん」

朝一の餅つきでしか作れない力餅を使ったうどん。出汁のきいたあたたかなうどんは餅入り月見うどん!


コーヒーも自慢だ。選ばれたウサギが、うさぎの模様入りカプチーノを作ってくれるぞ。

カフェ風エプロンをつけて見た目もさまになっている。

「あ、耳がゆがんじゃった……」

カプチーノの白い泡でウサギ模様を作っているのだが、手がプルプルと震えている。

力自慢の筋肉ウサギたちだが、どうにも手先を使う繊細な作業は苦手なようだ。


こちらのうさぎも、ムキムキの腕がプルプル震えている。

「レジが上手に打てないよ~」


2匹して長いうさぎ耳をペタンと垂らした。


この店のちに人気カフェになるのだが、しっとり古民家カフェとしてではなく、マッチョが売りの筋肉カフェとして有名になる。


第4話 会長はかぐや姫


あれから、モチコとツキミはたびたび地球へ旅するようになった。

「いい時代だよね、月と地球に定期便ができるなんてさ。

近場でレッツエンジョイショッピング!」


ある日、モチコとツキミは宇宙ステーションでかぐや姫と遭遇。ツヤツヤの長い黒髪、サイドの髪を頬のあたりでパッツンと切りそろえた姫カットだ。

抜けるような白い肌、高貴でおしとやかな雰囲気漂う美貌の持ち主。ただし黙っていればだが。


モチコ「あ、会長じゃないですか!珍しい、地球へ?」

姫「ええ、お月見バーガー買いに。週1ペースよ」

ツキミ「え?姫様、地球嫌いなんじゃ?大昔に地球から帰ってきて『地球よりやっぱ月がいい』って泣いてたじゃないですか」

姫「だってさ、あの時代って十二単でしょ。キモノ12枚着るの想像してみてよ?でもね、最近月見テレビでお月見バーガーのCM見ちゃって、ついに我慢できなくてね」


モチコ「あれ、おいしそうですよね。卵の黄身がたまりません。で、どうだったんですか?」

姫「最高!月見そば、月見うどん、月見牛丼、月見団子パフェも全制覇したわ。月見ブームバンザイってとこね」


ウサギたち「えええ!?あのかぐや姫のお話の感動の別れは何だったの!?じい様、ばあ様泣いてますって!」


姫「あれはあれ、これはこれよ」

モチコ「あ、そうだ!姫様、今度MOCHI&USAGI CAFE 姫に寄ってってください。メニュー完成しましたから」


第5話 もちもちホットケーキで大逆転


ここは月浦三丁目。閑静な住宅地にあるMOCHI&USAGI CAFE 姫。地球で流行の古民家風カフェを模して造られた。

実は新築。が、すでにツタがからまり古びた風情をかもし出している。庭には月見花、月下超美人などの花が咲き、庭木として月光りんごが植えられ黄色い実をつけている。これらは夜になるとポーッと光を放つのだ。


ツキミ「え?夜まで働くの!!」


モチコ「とにかく、アタシたち、がんばったよね。見よ!このレトロでフォトジェニックな雰囲気!」

ツキミ「地球のお客さんもこれで満足ね」


古民家カフェMOCHI&USAGI CAFE 姫


スイーツの甘い香りとコーヒーの香り漂う店内。

ツキミ「はい、かぐや姫様、どうぞ!さいの目にカットした餅入りの特製もちもちホットケーキです。あれから改良して、豆腐入りなんです」

姫「まぁ、ヘルシー!罪悪感ゼロ!カロリーもゼロに近いわね」

モチコ「ゆで小豆とバターで召し上がれ」

お皿の上のホットケーキに乗せられたバターが溶けて染みこんでいく。つややかな小豆の粒がたっぷりとかけられ、あふれている。


かぐや姫はホットケーキにナイフを入れた。切り分けられた断面から白い餅が見える。

姫「いただきます……」(パクッ)

姫「!!!ふわふわね、あ、お餅!!

これ、お餅がのび~って伸びたところをうまく写真に撮らないとね

ほら、モチコちゃん、レフ板そこに置いて!」

(スマホで写真撮りまくる)

モチコ「はいはい。あ、ホントだ白い板置いただけで、なんか光の当たり方が違う!」

さすが、インフルエンサーかぐや会長。


姫「これよこれ!#月のウサギカフェ、#もちもちホットケーキ、#お月見バーガー超えた」

ウサギたち「バーガー超えてるの!?ホント?」

あれは最大のライバルだもんね……。


姫「小豆とバターってホットケーキに合うの知らなかったわ」

ツキミ「姫様、小倉ホットケーキ初めてですか?これ近所のレトロ喫茶店で昔から人気なんですよ」

姫「まぁ、そうなの!ホイップクリームや練乳、バニラアイスもいけそうね!」

モチコ「さすが姫様、だてにあちこち食べ歩きしてませんね」


かぐや姫様にっこり。

姫「決めた!地球にこのカフェを展開するわ!」

モチコ「え、地球にも!?」


姫「このカフェは、まさに餅イノベーションよ!即、事業化!」

モチコ達「はぁ、餅イノベーション?」

工場長の兎爺さん乱入

兎爺さん「革新的ってことじゃよ」


姫「このカフェは、月面経済圏のハブとなるわ」

兎爺さん「もし地球への定期便が止まった場合の餅リスクヘッジ、どうするんですじゃ?」

姫「みんなのおやつよ!」

ツキミ 自分のモフモフのお腹とお尻をなでながら。

「おいしいけど、太っちゃう」


モチコ「あとさぁ、満月過ぎるとモチベが下がるんだよな〜。モチベーション・マネジメントがなってない!」

兎爺さん「姫様、給料アップお願いですじゃ」

姫「OK、OK分かりました!」

みんな「……いつになく物分かりがよすぎる」

顔を見合わせ不審な顔をする一同。


姫「まずは日本をターゲットに東京、大阪、名古屋の主要都市に各10店舗。初年度で全国100店舗展開よ!」

ツキミ「ひゃ、100店舗!?」

姫「テレビCMは私が出るわ。『千年の時を超えて、月から届いた美味しさ』ってキャッチコピーどう?」

兎爺さん「ちょ、ちょっと待って姫様……」

姫「ああ、日本以外の海外展開も視野に入れないと。ニューヨーク、パリ、ロンドン……。ま、地球全部」

モチコ「地球ぜんぶ!?」

姫「当然、私がCEOね。あなたたち現場統括で頑張ってね」


ツキミ「え、私たち地球で働くの!?」

彼氏と離れたくないけど、地球に住むのも楽しそう……。


姫「そうねぇ、定期便で通勤よ。月と地球を行ったり来たり。大丈夫、慣れるわ」

モチコ「姫様、それ超ハードスケジュールなんですけど」


姫「甘いわね。ビジネスは情熱よ、情熱!さ、地球へ行って物件探してくるわ!」

(颯爽と出発するかぐや姫)

ウサギたち「!?」

兎爺さん「姫様、なんかすごいことになってるな」

ツキミ「モーレツすぎて怖い……」

ウサギたちは姫様の後ろ姿を見送ってため息をついた。


モチコ「でも、うちのカフェが認められたのは嬉しいよね?あんなに地球のお月見バーガーに夢中だった姫様がさ」

ツキミ「それはそうだけど……」


翌日、またお月見バーガー買いに地球へ向かうかぐや姫の姿が……

帰ってきたかぐや姫はその足でカフェに向かうことにした。パンツスーツ姿で颯爽とゲートを抜け、小脇にはノートパソコン。その後ろを重そうな荷物を持った従者がちょこちょこと小走りでついて行く。


「おや、かぐや様ではありませんか?ボクの車でお送りしますよ」

偶然を装った青年実業公達の誘いを振り切り、姫はカフェへと向かった。


カフェはあいかわらず繁盛していた。

モチコ「姫様、もちもちホットケーキ10枚、お待たせしました」

店で一番大きなお皿にどどーんと重ねられたホットケーキタワー。バターをのせ小豆をたっぷりとかける」

姫「ありがとう。なんてったって、豆腐入りだもの美容にもいいのよね!」


ツキミ「……姫様、それ全部食べるんですか?」

姫「そうよ、これも研究よ、研究。会長職も結構大変なのよ、コーヒー飲みながらここで分析させてもらうわ、地球の売れ筋商品との差を見せつけなきゃね」

モチコ「あ、その袋から見えるのは、お月見バーガー!!」

手提げ袋から見えるのは、あふれんばかりのバーガーだった。


姫「ああ、忙しい。家に帰ったら帰ったでこのお月見バーガーを食べなきゃならないの。月の姫兼会長ともなると大変なのよ」

かぐや姫は大げさにため息をついた。


兎爺さん「分析なら1個ずつで事足りるのではないじゃろか!?」

モチコ達「食べ過ぎだってば!?」


向こうの席から公達がやってきた。

どっかの公達「ねぇ、かぐやちゃん、ボクのホットケーキも食べる?抹茶入りもおいしいよ」

彼は人のよさそうなボンボン顔でニコニコしている。

姫「むむむ」

抹茶入り!た、食べたい!でも私は高嶺のかぐや姫なんですからねー!!


モチコとツキミは顔を見合わせた。

「姫様、結局食べそうだよね」

「うん、それでこそ、かぐや姫様。でなきゃ、今の世の中、月の世界は守れないよね!」


作中に出てくる「お餅入り豆腐ホットケーキ」作ってみませんか?

餅を角切りにしていつものホットケーキ生地に入れるだけ。

ホットケーキミックスでもOK


いつもよりじっくり焼きたいのでフタをして焼きます。

火加減はこまめに調節、焦げやすいですからね。


イラスト入りのレシピカードが、近況ノートにあります。2枚組なので2回に分けて投稿してます。

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