新人編集 猫田くん

 太刀柳たちやなぎ先生にところにね、新卒の新しい編集者さんがついたんです。


 猫田ねこたくんっていうんですけどね、これがまあ、けっこうなイケメンなんですよ。


 で、太刀柳先生、一目ひとめでぞっこんになっちゃった。


 あるとき、仕事終わりに、二人でオシャレなお店でね、乾杯なんてしてたんです。


 先生、すっかり酔っ払っちゃって、「いい気分だなー、このまま猫田くんを、家にお招きできたらいいなー」なんて、考えたんですね。


 それで、だいぶ時間も遅くなってきたから、「猫田くん、終電、もう行っちゃったでしょ? 今夜はうちに泊まってきなよ」なんてね、軽く持ちかけてみた。


 そしたら猫田くん、「うーん、そうですねー。先生、すみませんが、ごやっかいになりますよー」なんてね。


 先生、「うわー、こいつは最高だー」なんてね、天にも昇る気分になったんです。


   *


 そのあと先生、猫田くんを連れて、ほーくほくとうちに帰ったんですね。


 で、自宅の居間で、二次会なんて称して、またちびちびやってた。


 そしたら猫田くん、すっかり酔いが回っちゃって、リビングのテーブルの上に腕を組んで、すっかり眠りこけちゃったんです。


 先生、「しめた!」なんてね。


 うきうきしながら、シャワーを浴びにいったんです。


   *


 バスルームから上がって居間に戻ると、なぜか真っ暗なんですね。


 部屋の電気が消えてる。


 「あれー、おっかしいなあ。なんでだろー」なんて先生、手探りでスイッチを探した。


 「にゃーお」


 ネコの声が聞こえたんです。


 「あれー、ヘンテコだなー。うち、ネコなんて飼ってないんだけどなー」


 するとまた、「にゃーお」


 「いったい、なんだろー?」


 先生、やっとスイッチを見つけて、それを押した。


 「うわーっ!」


 なんと、目の前に、猫田くんが突っ立てるんですね。


 「ね、猫田くん……?」


 「にゃーお」


 太刀柳先生、気づいたんです。


 この猫田くん、ネコじゃなかったんですね……

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