第2話

「なんだこれ」


人ではないものを、殺している。一応、街からの委託を受けるという形ではあるけど。組織的に動いている、その中の末端の一部。


しかし、その末端のどれにも当てはまらない殺し方だった。ぐちゃぐちゃに潰されている。


通信を入れる。


「本当に、誰もこれをやってないのか?」


『やってないらしい。だから、重大事態と組織も判断した』


「それで、俺か」


『失恋の穴埋めだね』


「そうだな」


通信を切った。


数時間前に、恋人に振られた。メッセージひとつ、電話ひとつだけの簡素なものだった。


まぁ、しかたない。人ではないものを殺す関係上、どうしても急な用事や男女混合の戦闘は発生する。浮気を疑われたんだと思う。


哨戒の護衛リストに入る関係上、彼女の本当の名前や住んでる場所も、組織側では把握している。人ではないものに狙われないために。守るために。


微妙なところだった。一応、緊急連絡先、というか、自分が人ではないものに殺されたときの通知先に設定している。連絡先から消しておくべきか。


『重大事態だから。彼女との関係は切らない方がいいと思うけど』


「まぁ、それもそうか」


でも哨戒の護衛は必要ないかな。ここで彼女の周りを固めると、かえって人ではないものに狙われやすくなるような気がする。


気がする、とか、かもしれない、とか。そういう感覚だけを頼りに戦ってきた。感覚を研ぎ澄ませて、全てを読み切って戦う。


しかし女には振られる。

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