かのギャルゲーに転生した俺、【三人称視点】を使い恋の成就の手助けをしてたら、それがバレたらしい
つかとばゐ
第1話 モブキャラに転生してた俺
いきなりだが、俺は【Get Girl's Loves】通称【GGL】という作品のモブ.....
―――信じられないって?.....俺だって信じられないよ。
転生したことに気付いたのは、1年前.....俺が高校2年生の時に、ヒロインたちが、いかにも悪って感じのやつらに襲われそうになっていた時だった。
―――高校2年生
「はぁ、今日もめんどくせぇぇ」
……今、俺は学校に向かう途中である。
アスファルトを照りつける日差しは強烈で、肌にジリジリと熱を刻みつける。今日は晴れだ。嫌気が指すくらいに晴れ。雲一つない空は、青すぎるほど青く、どこまでも広がっている。
「あっつ〜」
愚痴を言いながらも、俺は汗で額を濡らしながら学校に辿り着く。
そして、教室に入り、窓際の席から見える校庭では、すでに運動部の生徒たちが練習を始めていて、熱気がこちらまで伝わってくる。俺は、後ろの席の友達に話しかけた。
「うげぇ、1時間目から数学だって?」
「あぁ、そうだよ。ってか、いつもの時間割だろ?」
友達に時間割を聞いて勝手に萎える俺。
「確かにそうだけどさぁ.....」
別に聞いたっていいじゃん.....良いよね?
「まぁ、だるいのは同感だけどな」
「だよなぁ」
いつも通りに友達と駄弁って時間を浪費する。
「っ?!」
「ん?どうしたんだ?北千?」
……やっべぇ、めっちゃトイレに行きたくなってきた。
突然、腹の奥がねじれるような激痛が走る。
「あー、めちゃくちゃ腹痛くなってきた......っ!ごめんっ!先生が来たら俺がトイレに行ってることを伝えといてくれっ!」
「おう.....分かった。体調には気をつけな」
うぅ、こいつの優しさが身に染みるぜ.....
.....っと、トイレトイレ。
教室の喧騒が遠のき、一刻も早く個室に駆け込みたい一心で、俺は早足になる。
「ふぅ....」
俺は用を済ませ個室から出て、手を洗う。冷たい水が火照った手に心地よい。
「......ん?」
───なにか、女性が嫌がるような声が聞こえてきた。水道の水の音にかき消されそうなくらい小さな、しかし切羽詰まった声だ。
「見に行ってみるか....」
音のする方へ俺は向かう。廊下の突き当りにある、普段はあまり人が来ない備品室の裏手あたりから声が聞こえる。
「い、いやですよ」
「へっへっへ、少しくらい良いじゃねぇかぁ?なぁ?」
うわぁ、めちゃくちゃモブみたいなやつが絡んでんだけど?えぇ?
「ってか........」
なんか、この光景.........?
「あっ....?!」
その瞬間、滝のように記憶が流れ出してきた。
頭の中で、パズルのピースがカチリとハマるような感覚。光景と記憶が完全に一致する―――GGLのこと、目の前の女の子がヒロインであること、そして、絡んでいるこいつが悪役の片山薫っていう政治家の息子だってこと。
「えええええええ!」
思わず大声を出してしまった。校舎の静寂に、俺の叫び声が響き渡る。
……だって、あのGGLのゲームの世界に居るんだぜ?....こればっかりは仕方ないよな?
「っと......」
あんな大声を出したのに2人とも気付いていない。というか、あのヒロイン.....やっぱり可愛いっ!
―――あの子は俺の推しでもあるヒロイン、
「昔開催してた人気キャラ投票では堂々の1位だったなぁ....」
それが今、目の前に....っ!
……いかんいかん、今は助けることに集中しないと。
「でも、主人公の
俺はその輩に話しかける。
「おい、お前」
声は少し上ずったが、意図したよりもずっと強く、鋭く響いた。
「あぁ?なんだぁ、お前」
片山薫は、顔を顰め、心底面倒くさそうな表情で俺を睨みつける。その目には、典型的な傲慢さが滲んでいる。
……政治家の息子だから、手荒な真似はしちゃダメだよな......
「遊志葉さん.......いや、その女の子が困ってるだろ」
おっと、危ない危ない。
遊志葉さんは、俺とは初対面だからな.....名前を知ってたら気持ち悪いだろう。
……てゆうか、後輩だから尚更俺のこと知らないだろうな。
「あぁ?!お前俺が誰か知ってるのかよっ?!」
ザ・悪って感じの素振りだな。
……どうしたものか。
「えいっ!」
考えるよりも早く、それは起こった。
「あがっ.....」
男が苦しみだす。
ついには、両手で股間を押さえながら、床に崩れ落ち、のたうち回るようになった。
え?え?
「どなたかは分かりませんが.....私を助けてくださってありがとうございますっ!」
遊志葉さんは、恐怖から一転、安堵と感謝の表情を浮かべ、ニコっと笑って深々とお辞儀する。
―――本来なら、並の男は堕ちてしまうその素振りも、俺からしたら恐怖として映った。なぜなら……
……今さっき、例の男の局所を思いっきり蹴ったからだ。
片山のうめき声が、彼女のやったことの重大さを訴えかけてくる。
「それではっ!」
遊志葉さんは一目散にその場から走り去っていく。彼女の長い髪が、風を切って揺れた。
「あ、あぁ」
―――はて、何が起こったか分からないんだが?
俺の周りには、意識が朦朧とした片山薫のうめき声と、静寂だけが残された。
とまぁ、これがこの世界がGGLであると気付いた出来事なんだが、あの時の衝撃から1年経った今でも、1つ理解できないことがある。
それは―――
「なんか、皆さん性格が少し変わってませんか?」
そうだ、そうなのである。
皆して少し性格が変わっている。
遊志葉さんだって、あの子だって、あの子だって.....挙げたらキリがない。
なんか、違うのだ。絶妙に。
「~っと」
俺は頭を掻きながら、この違和感の正体を掴もうとするが、霧の中にいるように掴めない。
「まぁ、でもGGLの世界なのは確実だしなぁ。正直、ヒロインたちが見られるだけでも幸せかも」
そうだ!俺は、ヒロインたちが見れれるだけで幸せじゃないか。
俺は閃きを得たように、指をパチンと鳴らした。
「ん.....と、あれ?」
視界が、グイッと後方に引いた。
まるで、俺の真後ろ、天井近くに透明なカメラが設置されたかのように、俺の背中が見える。しかも鳥瞰しているような感覚だった。
「は、はぁ?」
なにこれ?
え、本当になにこれ?
「三人称視点.....?まるでゲーム画面みたいな....?」
困惑、その二文字が俺の頭を支配する。
「もしかして、指パッチンがその暗号だったり?」
もう1度指を鳴らす。
……視点が戻った。
「す、すげぇ.....」
―――どうやら、俺は世界に介入した代償か、あるいは特典かは知らないが、三人称視点の能力を得ていたようだった。
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