第二章「微かなざわめき」

目を覚ますと、私は自分の部屋に戻っていた。

窓の外にはいつも通りの朝の光。

スマホも、ベッドの隣のカップも、何もかも現実のままに見える。


けれど、胸の奥のざわめきは消えなかった。

夢だったのか、本当に森のゲームをくぐり抜けたのか――

思い出すたびに、心臓がざわつく。


昨日の彼のことも、頭から離れない。

森での出来事を思い返すと、心臓が再び早鐘のように打つ。

彼の笑顔、無視された瞬間の冷たい視線、出口で抱きついてきた安心感……

そのすべてが、胸の奥で絡み合い、解けない糸のように私を縛る。


部屋の隅に目をやると、影がわずかに揺れ、机の上の小物がほんの少し位置を変えている。

息を潜め、耳を澄ます。

枝が折れるような音、かすかな足音……

まるで森の中の空気が、この部屋に入り込んでいるかのようだった。


スマホが震え、画面に通知が届く。


「準備できてる?」


何気ない言葉に見える。

でも直感が警告する――昨日の森の感覚が、再び全身に蘇る。

逃げる、隠れる、立ち向かう――昨日と同じ直感が、私を動かそうとしている。


胸の奥がざわつき、全身に微かな熱が走る。

そして、心の中で小さな声が告げる。


「昨日の森のことが、まだ頭から離れない……」


私は立ち上がり、そっと部屋を見回す。

影、物音、微かな異変――すべてが、昨日の森の空気を思い出させる。


彼の存在も、頭から離れない。

無邪気に笑い、私を守るどころか無視もした彼。

でもなぜか、心の奥ではその存在に引かれている自分がいる。


窓の外の街は静かでいつも通りだけれど、

心の中のざわつきだけが、昨日の森と繋がっていることを告げていた。

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