Webで読まれるヒット作の書き方論
針坂時計
バカを殴り返す話
結論から申し上げますと
【バカが殴りかかってきたので100倍の力で殴り返す】
これだけです。別に10倍でも1000倍でも1兆倍でも構いませんが。
現在カクヨムやなろうで主流の(ランキング上位の)作品の明確な共通点がこれです(この二つしか見ていないので、ハーメルンなどの他のWeb小説サイトはわかりませんが)。
追放も婚約破棄もNTRも大まかに分類すればこれにあたります。
いささかバカのバカ具合が根本的な知能に欠陥でもあるんじゃないかレベルのバカになっている作品が多い気がしますが、まぁ役割は所詮マクガフィン及びサンドバッグなので問題ないでしょう。即時的なカタルシスを求める読み手に、葛藤というストレスを与えてもノイズにしかなりませんし。
しかし、これは別に「Web小説だから程度が低い」という話ではありません。
そもそも人類はそれこそ神話の時代から報復譚が大好きです。
「オデュッセウス」でも主人公は嫁さんを寝取ろうとした間男どもを惨殺してますし、「ヴォルスング・サガ」の前半も裏切りによって父王を殺されたシグムンドの復讐の話、日本だと須佐之男命の高天原追放から八岐大蛇退治の流れは典型的な追放モノですね(やり返しはしないので追放→スローライフ系かも?)。
時代が進んでも、ニーベルングの指環やモンテ・クリスト伯、平家物語なんかも頼朝の視点から見たら報復譚の一種になるでしょうか。
要するに「理不尽に殴られた主人公が、更なる暴力で殴り返して自己の正義を回復する」構図は太古の時代から連綿と続く、人間の普遍的欲望なのです。
現在、というか延々と「小説家になろう」で人気の婚約破棄モノなんかはまんまこの構図ですね。
古くは「わた婚」とかが有名でしょうか。わた婚は典型的なシンデレラストーリーでしたが、元ネタのシンデレラも「かわいそうな私」が「他者から与えられた魔法と権力でもって」「バカを殴り返してから幸せになる」という構図なので、まんま現在のWeb小説のテンプレですね。
話が逸れましたが、描きたいテーマなどがあるわけではなく、単純に人に読んでもらいたい、承認欲求を満たしたい(承認欲求そのものは別に悪い感情ではありません)ならば「バカが殴りかかってきたので100倍の力で殴り返す」話を書いとけばハズレはないかと思います。あとは調理の工夫と運次第です。運の要素が8割です。
ひとつ重要なのは、あくまで「殴り返す」ことです。自分から殴ってはいけません。被害者はこっち、錦の御旗は我にあり、です。
それでは、よい執筆ライフを。
Webで読まれるヒット作の書き方論 針坂時計 @nekolarmen
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