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「まあ、その後何やかんやあってそのクマ撃ちを撃退してだな。だけど、その悪名が広がりその山に居られなくなった結果、ここまで流れ着いたってわけだ。」
「…すごい…すごいですよ…。漢です…、ひぐっさん…。」
「ピュルルル、なんて…!なんて…!悲しい物語なんだ!ひぐっさんの名前の由来からそんな話になるなんて…。」
豊虫とトビーは2人で正座して涙を流しながらひぐっさんの話を聞いている。
それをつまらなそうに寺嶋がコロコロ転がりながら見ている。
「おいおい、お前らよ〜。そんな眉唾もんの話聞いて泣いてんじゃねえよ。大体、クマ撃ちはどうしたってんだ?ひぐっさんのテキトーな作り話だろう?」
「ふふふ、寺嶋さん。あんた、信じる心を失ったらどんどん廃れていくよ。」
「はん!余計なお世話だ!」
2匹の話などそっちのけで豊虫とトビーは先ほどの話の感想を言い合っている。
豊虫はふと気になったことを聞いてみる。
「その後、少女とは?もう会えなかったんですか?」
ひぐっさんは仰向けにどしんと倒れ空を見上げてしばらく黙っていた。
大きく息を吐いてようやく答えてくれる。
「会えてないなぁ。彼女らには悪いクマで通ってるだろうから合わす顔もないわな。」
そう言って笑うひぐっさんはどこか寂しそうだった。
春の野山は心地よい風を運び他の季節では嗅ぐことのできない神秘的な匂いを運んでくる。
その匂いは遠く離れた山の麓にも届いている。
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