第2話 国王(父)と女王(母)との御対面
エリィに手を引かれるがままに、超豪華な廊下を歩いていく。
壁に掛けられた絵画は全部一級品っぽいしさ、床なんてピッカピカすぎて俺の顔が反射して見える。
そんなことよりもっと気になったのが、たまにすれ違う執事さんやメイドさん達が俺達をちらちらと見てくる。というより、俺とエリィが手を繋いでいるところを見てくる。
…なんか凄い微笑ましそうに見てくるんだけど?
なんてちょっと心の中で呟いていると、エリィが歩みを止めた。
「ヒスイ君。ここが謁見室です。この中にお父様とお母様がいらっしゃいますわ」
エリィがゆっくりと扉を開け、その部屋の奥に二人の人物が姿を見せる。
あれが、あの人国王陛下か。威風堂々とした雰囲気の男性、前髪は上げてあり、サイドはすっきりしていて、深く、蒼い瞳は威厳を感じさせざるを得ない。
そして!なによりも!かっけぇ!イケオジだ!
見た目めっちゃ若く見えるけど、実際は俺の何倍かの年齢なんどよね。年季の違いが良くわかる。
そのお隣さんにいるのが女王陛下。
ふわりとしたとてもお上品な微笑みを浮かべている、柔らかな金の髪に深い翠の瞳。なるほど、エリィの容姿は母譲りだったのか。
…てか若くね?エリィのお姉さんですって言われても信じるぞ俺。
「お父様。お母様。ご紹介します。こちらの方がヒスイ君ですわ」
「…君がヒスイ君か、初めまして、儂はグラディウス・ハイル・フォン・アルトリアだ。よろしく頼むよ」
重みのある国王陛下の声。でもどこか楽し気だ。
「は、初めまして!ヒスイ・カイザーと申します!ほ、本日はご招待いただきまして、誠に──」
「まあまあ~、そんな固くならなくていいのよヒスイ君?」
女王陛下が優しい微笑む。おっとり系のお人でしたか。僕は好きですよ?
「初めましてヒスイ君。私はカトレア・キュリア・フォン・アルトリアよ。エリィからいつもお話は聞いてるわ~。最近はず~っと『ヒスイ君が~』とか『ヒスイ君と~』ってそればっかりでね~」
「うむ、そうだな。帰ってくるたびに毎日楽しそうにしててな?」
「お、お父様!お母様!ヒスイ君の前で言わないでください!」
エリィは顔を真っ赤にして父親と母親に抗議する。
そんな自分の娘を見ながら、ふわふわした笑顔でさらに追い討ちをかける。
「だって本当のことだもの。ねぇ、あなた?」
「はっはっはっ!仲が良くていいことじゃあないか!父としては嬉しく思うぞ!」
「ううぅぅぅぅぅ~~~…」
とうとう限界が来てしまったのか、両手で顔を覆って俯いてしまった。
こういう時はどうしたらいいんだ?
「エリィ?えっと、大丈夫か?」
俺が声を掛けると、エリィは指の隙間からチラッとこちらを見た。その視線がまた恥ずかしさを刺激したのか、ぶんぶん首を横に振る。
「だ、だってだって…ううぅぅ…」
こりゃしばらくダメそうだな…。
そんな俺達のやり取りをニヤニヤしながら超楽しそうに眺めている。
完全に娘の初々しいやり取りを見守る親の顔である。
「こんなエリィは初めて見たわ。可愛いわねぇ~~~」
「良きものだな。してヒスイ君、エリュシアのルミウルフの育成を手伝ったと聞く。世話になったな。今後とも仲良くしてくれると親としては有難いんだが」
「ちょ、ちょっとお父様ぁぁぁぁ!?」
さらにさらに追い討ち。
エリィの瞳が、ついにうるうると震え始めた。
必死に涙は堪えてるみたいだけど、頬は真っ赤で、肩も小さく縮こまっていて、どう見ても限界突破寸前。
その視線がふいに俺へ向けられる。助けを求めるような、すがるような、そんな表情。
頑張るんだ俺、漢を見せるんだ!
「えっと…ルミウルフの関してはただ、アドバイスしただけです。それを物にしたのはエリィが努力して頑張ったからです。それに……」
「「それに?」」
「……こ、これからも、エリィともっと仲良くして行きたいなと思っております……」
「……まあ~~~~~♡」
「……ほほぉ?」
言い切った後だけど俺めちゃくちゃ恥ずかしいこと言ってないか…?
国王陛下と女王陛下の視線が突き刺さる。なんか、よくわかんない逃げ場のない圧が凄い。
「ひ、ヒスイくんっ……!」
もう全身真っ赤なんじゃないかって思えるくらい赤いエリィ。ついに羞恥が許容量を超えたのか――
「もう!もうもうもう~~~!!」
ぽかぽかと俺の肩を両手で叩いてくる。
「ちょ、ちょっと落ち着けってエリィ!落ち着いて!」
「うふふ、若いって良いわね~♡」
「うむ。ヒスイ君、良き覚悟を聞かせてもらった。父として安心したぞ」
涙目でぽかぽか攻撃を続けるエリィを、国王陛下と女王陛下が微笑ましそうに見守っていた。
モンスター育成ゲームの世界に転生したから、最強のスライムを生み出したい。 G0st @G0st
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