第1話 エリュシア様育成計画

 で育成していたエリュシアに俺は、すぐさま軌道修正しようと教える。


「まず、何でもかんでも配合すればいいってわけじゃないんだ、配合が悪いってわけじゃないんだけどね」


「じゃ、じゃあいったいどうしたら…?」


「一番の優先順位はまず、スキル【ルミウルフ】をMaxまで上げることだ」


「えっと、それはなぜでしょうか?ルミウルフは配合し続けてのが基本と聞きましたよ?」


 首を傾げるエリュシアに、俺は丁寧に説明する。


「まあある意味では正解だけど、もっといい方法があるんだ」


「それが【ルミウルフ】のスキルをMaxにするってことですか?」


「そう、例えばなんだけど、【攻撃力アップ・初級】をに上げるには?」


「簡単ですよそんなこと、スキルをMaxにすることです。そうすれば【攻撃力アップ・初級】から【攻撃力アップ・中級】になります」


「うん。答えが出た」


「…あ!もしかして!」


 俺はにやりと笑った。


「さっきの例とまったく同じで、【ルミウルフ】もMaxにすれば上位スキルになるんだ」


「つまり、【ルミウルフ】をMaxにしてから配合すれば──」


「そう。それがルミウルフの育成ルートだ。スキルはあえて教えない。自分の目で確かめてくれ」


「なるほど…。じゃあわたくしがやってたみたいに、途中でスキルを変えちゃうと…?」


「完全にって言えるか微妙だけど多少の遠回り。他の人達には追い抜かれちゃうと思う」


「うぅ…やっぱりそうなんですね…」


 エリュシアはしゅんと肩を落とした。

 でもその表情には、ほんの少し悔しさとやる気が混ざっている。


「でも大丈夫だ。入学したばっかだからまだなんとかなるし、俺も一緒に手伝うよ」


「ほ、本当ですかっ!?」


 ぱあっと満面の笑みで、エリュシアの顔が一気に輝きを取り戻す。

 さっきまでしょんぼりしていたのが嘘のようだ。


「もちろん。ちょうど俺もやりたいことと並行してできるからね」


「よ、よかったぁ……! もう取り返しがつかないかと思ってました……!」


「そんなわけないさ。失敗なんて誰でもする。大事なのは“次にどう育てるか”だからな」


「なるほど、じゃあ、次は絶対に間違えませんっ!」


 ぐっと拳を握るエリュシア。

 その姿に、思わず俺も笑みがこぼれる。


「よし、その調子だ!俺も全力でサポートするから、どんどん頼ってくれ」


「はいっ! ヒスイ君、大好きです!」


「えっと、『俺も好きだ』って言っておけばいいか?」


 あまりにも真っ直ぐな笑顔に、ちょっとくすぐったい。

 でも、その無邪気さがエリュシアらしくて、思わず苦笑した。


「それじゃあ、善は急げだ。早速行くとしようか」


「はいっ!よろしくお願い致しますっ!」


 無邪気に笑うその声が響いた。

 俺がやろうとしていた事を前倒しするとしようか。

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