第二章 エリュシアちゃん育成計画

プロローグ

 模擬戦から数日が経った。

 メタルンとカンムリのコンビ、学園内でプチ有名になっていた。

 自分としては凄く凄~く誇らしい。ふふん。


 今日も次の育成の為にスライムを乱獲しようと準備をしていたところ。


「あの、ヒスイ君。わたくしのモンスターの育成を手伝ってはいただけないでしょうか!?」


 声を掛けてきたのは、このゲーム『モンスターズ・ライフ』の主人公のヒロイン兼ライバル。この国の第三王女のエリュシアだ。

 彼女は俺に近寄ってきて、無駄に綺麗(失礼)な所作で頭を下げた。


「えっと、エリュシア様?どうして俺?てか、俺でいいのか?」


「はい!ヒスイ君にお願いしたいです!」


 う~ん、どうしたものかなぁ、俺も俺で次のステップに進みたいんだよなぁ。

 俺が悩んでいる時に、エリュシアがぎゅっと俺の手を握ってくる。

 いきなり手を握られたもんだからドキッと心臓が跳ねた。


「…わたくしは強くなりたい、この国の王女として、一人の従魔士として!だからどうかお願いしますヒスイ君!」


 噓偽りのない真剣さがその瞳には宿っていた。

 その瞳に見入ってしまった。

 …そんな顔されたら、断れるわけないじゃん。


「わかった。俺なりに育成方針を考えてみるよ」


「ほっ、本当ですか!?」


 ぱあっと、花が咲くようにエリュシアの顔が輝く。

 その笑顔が眩しすぎて、直視できなかった眩しっ。


「ちなみになんだけど、今の進捗はどんな感じ?」


「そ、それが…一度だけ配合をしてみたんです…」


 もじもじとちょっと恥ずかしそうにそう告げた。

 なんとなく、なんとなくだけどこの先が読めた気がする。


「ふむ、結果どうなったか教えてくれないか?」


「…ちょこっとステータスが上がっただけで、後は


 …やっぱりか、なんとなくでそうなんじゃないかって思ったんだよなぁ。


「確かエリュシア様は『ルミウルフ』だったよな」


「はい、そうです。それがなにか?」


「今現状教えられるのは一つと、質問が一つある。いいか?」


「はい、大丈夫です。お願い致します」


 多分俺の予想だが、この世界のルミウルフの評価と前世の評価は全く異なってるんじゃないかと思ってる。

 だからまずはその辺から教えていく必要がある。


「まず教えるのは、ルミウルフはSは姿は変わらないんだ」


「え!?そうなのですか!?」


「ああ、だってルミウルフはだからちょいと特殊なんだよ」


「…あれ?ルミウルフはだって聞いてますけど?」


違うの?って不思議そうに首を傾げるエリュシア。 

…マジか。まず根本的に違うのか、ちょっと次の質問のやつよりルミウルフについて教えないとだなこりゃ。


「実は違うんだよ、実はルミウルフはとある神獣のみたいなモンスターなんだよ」


「…ええええええええええええ!!」


 エリュシアが目を丸くして絶句する。


「え、ええええ!? し、神獣の幼体っ!? そんな…うそ…!」


無理もない。だって、ルミウルフは見た目こそ小柄で愛らしいけど、本来はだからだ。


「Sランクモンスターで配合しなきゃ変わらないんだけど、今はまだ無理だからまた今度その辺は教えるよ」


「な、なるほど。さすがはヒスイ君!博識ですね!」


「ありがとう。それで次に質問してもいいかな?」


「はい!ぜひ何でも聞いて下さい!答えられる範囲で答えます!」


 エリュシアが両手をぎゅっと握りしめる。

 ぶっちゃけ配合よりこっちの質問の方が重要なんだよね。


「質問は…?」


「ス、スキル……ですか?」


 エリュシアがきょとんとした顔で首を傾げる。

 ……あ、これは嫌な予感。


「えっと…Lv.10になった瞬間に配合しちゃったので…中途半端になっちゃってます」


「…あ~」


 見えてきたぞ、この世界、配合すれば良いって思っちゃってるのかもしれないな。

 ルミウルフ育成でだ。

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