第9話 硬と柔のタッグ 決着
「カンムリ!もう一回『マジックアップ』だ!」
カンムリは再び自分に『マジックアップ』を掛ける。
このままでは不味いと焦ったのか、クラリスはさらに攻撃を仕掛ける。
「物理が効かなくても魔法ならどうです!?フレアフォックスは『メガファイア』を!フロストレイブンは『メガアイス』よ!さあ撃ちなさい!」
2匹のモンスターがほぼ同時に魔法を放出する。
火と氷のメガ級魔法、相反する属性が一直線にカンムリへ。
だが、その瞬間。
『ピキィッ!』
高速で移動する銀色の閃光が割り込んだ。
「メタルン、『みがわり』」
すかさず俺は冷静に指示を出す。
メタルンの身体が二つの魔法を真正面から受け止めた瞬間、凄まじい爆風と閃光が訓練場を覆い尽くした。
火と氷が交じり合い、視界が白く染まる。
観客席からも悲鳴が上がった――。
だが、煙の中からゆっくりと現れたのは、微動だにせず傷一つないメタルンの姿だった。
「ナイスタイミングだメタルン、最高だぜ」
「…ど、どうなって…なんなんですの今のは…っ!?」
クラリスの目が驚愕に見開かれる。
理解が追い付いていないっぽいな、なら教えてやるとするか。
「他のモンスターだったら違う立ち回りになってたが、メタル系は元々魔法への耐性は全て『無効』だ。だからこそできる、メタルンの防御力と魔法耐性を最大限に生かす戦法。これが『みがわりメタル戦法』、略して『みがメタ戦法』だぜ!」
「ほ、ほぼ無敵……!」
メタル系は物理も魔法もほとんど通らない。
それを考慮した上で、味方を守る『みがわり』、ほぼ無敵になる。
ただし弱点もある。会心を狙って放つ技や、一部の状態異常には弱いので、最初から対策しないとほぼ詰みだが、対策さえすれば勝てないわけじゃない。
「そんじゃ準備は整ったし、最初で最後の一撃行くぞカンムリ!」
『ぷるぷる~!』
王冠が輝きを増し、稲妻がカンムリの体中を駆け巡る。
空気が震え、訓練場全体がバチバチと弾ける。
観客席の生徒たちは思わず息を呑む。
「な、なにが起こるんだ…!?」
「すごい魔力……」
「ま、不味い…フレアフォックス、フロストレイブン、防御して──」
クラリスが叫ぶ、それよりも早く指示を出す。
「『ギガボルト』!」
『ぷるぅぅぅぅっ!!』
カンムリの体から放たれた魔力が一点に収束し、天を駆け抜けるほどの雷光が放たれる。
『キュウウウゥゥゥ!』『カアァァァアア!』
フレアフォックスとフロストレイブンに直撃。
衝撃と閃光に包まれ、次の瞬間、二体は床に倒れ込み、動かなくなる。
審判のマッシ先生が腕を高く上げる。
「そこまで!勝者、ヒスイ・カイザーッ!」
観客席から歓声とどよめきが巻き起こる。
クラリスは呆然と立ち尽くし、信じられないという顔で二体のスライムを見つめている。
「初試合、俺たちの勝利だぁー!」
勝利が決まり、訓練場が歓声に包まれる中、メタルンとカンムリはぷるぷると体を震わせながら、ヒスイに駆け寄った。
『ピキ!』『ぷるん!』
その勢いのまま2匹は飛びかかり、カンムリには押し潰され、メタルンは俺の顔に張り付いて嬉しそうにぷるぷる揺れる。
『ピキピキッ!』『ぷるぷる~!』
「わわっ、ちょ、まてまて!?」
ヒスイは笑いながらも、必死にスライムたちを押し返そうとする。
それでも2匹は全力で喜びを表現し、跳ねたり張り付いたりするその姿は、まさに“勝利の喜び全開”という感じだった。
「ははっ、おい、やめろって~」
2匹に揉みくちゃにされていても、満足の行く勝利を収めたし、まあいっかと思うヒスイであった。
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