第1章

第一話 ヘブンゲ〜〜ム!

(……あれ? ここどこだ………)

(……俺、生きてるのか………?)


 目を覚ますと、そこは白一色の空間だった。

 それも終わりの見えないくらい広い空間。

 

 そして、俺の隣には見知らぬおっさんマジ他人がいた。

(……誰だコイツ)


 見た目はもう完全ニート。

 ボサボサの黒髪に不規則に伸びたヒゲ、四角いメガネに、たらこ唇だ。

 

 それがなんか全裸で鎮座チンザしてる。

 いや、「正座」……と言ったほうが正しいだろう。

 

 見事に腹の肉が下の竹をカバーし、見えなくなっている。

 影で逆三角形がつくられてる。


 そして俺も、しっかり全裸で正座しているのだった……。

(……仕方ないだろ、気づいたらこの体勢だったんだ……)

 

 まだこの場所がどんな場所で、なんで俺とオッサンの2人だけがこんなひっどい姿をしているのかまったく理解できないが、てかしたくないが。

 

 大方この澄んだ空気といい居心地の良さといい、死後の世界ヘブン的ななんかなのかなと予想は立てておく。

 

 しかしめっちゃシュールだな。

(この絵面だけでも懲役5年はいきそう……)


 

 すると、途端に背後から音が鳴った。

 ――ポシュッ!


「……?」


 俺はその音に誘われて背後を向くと、そこには――俺たちと同じように全裸で正座しているオッサンがいた。

(……いやまたかよ)


 だがしかし、瞬間――


 ――ポシュッ! ――ポシュッ!


 ――ポシュッ!――ポシュッ!――ポシュッ!――ポシュッ!――ポシュッ!――ポシュッ!――ポシュッ!――ポシュッ!――ポシュッ!――ポシュッ!――ポシュッ!――ポシュッ!――ポシュッ!――ポシュッ!――ポシュッ!――ポシュッ!――ポシュッ!――ポシュッ!――ポシュッ!――ポシュッ!――ポシュッ!――ポシュッ!――ポシュッ!――ポシュッ!――ポシュッ!――ポシュッ!――ポシュッ!――ポシュッ!――ポシュッ!――ポシュッ!――ポシュッ!――ポシュッ!――ポシュッ!――ポシュッ!――ポシュッ!――ポシュッ!――ポシュッ!――ポシュッ!――ポシュッ!――ポシュッ!――ポシュッ!――ポシュッ!――ポシュッ!――ポシュッ!――ポシュッ!――ポシュッ!――ポシュッ!――ポシュッ!――ポシュッ!――ポシュッ!――ポシュッ!――ポシュッ!――ポシュッ!――ポシュッ!――ポシュッ!――ポシュッ!――ポシュッ!――ポシュッ!――ポシュッ!――ポシュッ!――ポシュッ!――ポシュッ!――ポシュッ!――ポシュッ!――ポシュッ!――ポシュッ!――ポシュッ!――ポシュッ!――ポシュッ!――ポシュッ!――ポシュッ!――ポシュッ!――ポシュッ!――ポシュッ!――ポシュッ!――ポシュッ!――ポシュッ!――ポシュッ!――ポシュッ!――ポシュッ!――ポシュッ!――ポシュッ!――ポシュッ!――ポシュッ!――ポシュッ!――ポシュッ!――ポシュッ!――ポシュッ!――ポシュッ!――ポシュッ!――ポシュッ!――ポシュッ!――ポシュッ!――ポシュッ!――ポシュッ!


 

 周囲から無数にアノ音が鳴り響き、気付いたら次々と出現する裸族スッポンポンの群れに囲まれていた。

(どういうことだこれは……)


 それがざっと100人。

 向こうの方まで白い空間が全裸軍団へンタイ一族に満たされてて、なんかめっちゃ汚い絵面になった。

(心なしか空気が茶色く見えるぞ……)


 そこで俺はこんな仮説を立てる。

 俺が最後に見た景色がまっ赤に染まった夜空だったことを考えると、つまり俺は自殺に成功して死んでデス、のちにマジで実在した天国ヘブン(仮)に強制送還させられた……的な。

 

 だとすれば、ここにいる裸族たちも、死んだ人間デスソウルの可能性が高い。

 それに全員が全員オッサンという訳でもなく、俺みたいなガキもいれば、所々メスもいる。

(メス……はちょっと良く無いな、女子だ)

 

 ちなみに女子は見分けがつきやすく、みんな白一色の下着を装着アタッチしているので、とっても分かりやすい。

(だが許さん……男女不平等ジェンダーレスの時代だ、ちゃんと服を脱ぎ、女体を晒しなさいな)


 しかし全員が――「正座」しているのもやっぱ気になる。

(何か意味があるのか?)

 

 どちらにせよ、そろそろ足がしびれて来た。

ので早くこの状況を……って、なぜに身体が動かせない?

 動かせるのは上半身だけだ。

(クソッ! まじなんなんだコレは……)


 すると、――ピコン!


 何やらまた、違う種類の音が聞こえた。

 今度は横からだ。


 

――ピコン! ――ピコン!――ピコン!

 

 次々と音が鳴る。

 

 俺は音の方向へと目をやるが――何も見えない。



(……なんだ?)

キタ



 ――ピコン!――ピコン!――ピコン!――ピコン!――ピコン!――ピコン!――ピコン!――ピコン!――ピコン!――ピコン!――ピコン!――ピコン!――ピコン!――ピコン!――ピコン!――ピコン!――ピコン!――ピコン!――ピコン!――ピコン!――ピコン!――ピコン!――ピコン!――ピコン!――ピコン!――ピコン!――ピコン!――ピコン!――ピコン!――ピコン!――ピコン!――ピコン!――ピコン!――ピコン!――ピコン!――ピコン!――ピコン!――ピコン!――ピコン!――ピコン!――ピコン!――ピコン!――ピコン!――ピコン!――ピコン!――ピコン!――ピコン!――ピコン!――ピコン!――ピコン!――ピコン!――ピコン!――ピコン!――ピコン!――ピコン!――ピコン!――ピコン!――ピコン!――ピコン!――ピコン!――ピコン!――ピコン!――ピコン!――ピコン!――ピコン!――ピコン!――ピコン!――ピコン!――ピコン!――ピコン!――ピコン!――ピコン!――ピコン!――ピコン!――ピコン!――ピコン!――ピコン!――ピコン!――ピコン!――ピコン!――ピコン!――ピコン!――ピコン!――ピコン!――ピコン!――ピコン!――ピコン!――ピコン!――ピコン!――ピコン!――ピコン!――ピコン!――ピコン!――ピコン!――ピコン!――ピコン!


 

 また音のラッシュ。

 だがどうやら、何もない空間にまるで何か存しているかのごとく――空気上をタッチし始める裸族。


 すると

――ピコン!


 俺の眼前で音が鳴り、薄い透明な膜のようなものが現れた。


(これは、俺にだけ、見えてるのだろうか……?)

 

 軽く触れると形が変わった。


「な、なんだこれは!?」


 

 初期設定

 Name:_(名前を決めてください)



 Nameと書かれた横のアンダーバーが点滅する。

 

 俺が再度膜に触れると形を変え、文字パッドが下部に現れた。

(……なるほど、これをタブレットみたいに操作して名前を入力すればいいんだな!)


 しかし名前と言われても、俺は前世で痛いほどその名前とやらに苦しめられてきたからな。

 名前と言えば俺だ。

 

 慎重に決めねばと思いつつも、妙にいい名前が思いつかない。

 ――ウルトララインナップインザスカイ。

 

 Uの意志を継がせようか迷ったが、やはり別の名前にすることに決めた。

 とはいえ、名前を決めるからには何か――「明確な理由」があるのも事実だ。

 

 例えば、名前を決めるこの行為自体も生前やりまくったRPGゲームっぽいしな。

 まぁあるかは分からないが、ラノベとかアニメで見まくった「異世界転生」とかそんな胸アツな展開があるかもしれないことも見据えて、ゲーマーたるもの、ここはカッコいい名前にするしかない。


 定石を踏んでカタカナだ。

 俺だけ日本由来の名前だったら支障が出るかもしれないしな。


 

――

(これで決まりだ)ポチッ!

 

 俺は力強くokボタンを押す。



 _登録完了!



 すると、「登録完了フィニッシュ」の文字が表示され、画面がすっと消えてしまった。

(……え? これで終わり?)

 

 もっと能力値ステータス画面とか、職業ジョブを決めたりみたいな操作があると思ってたんだが……。

 え? ないの?


 すると、何やら声が聞こえて来た。

「――――・…………・――――・…………」


(ん? なんて?)



「「「みなさまー!! 注目ーーーー!!」」」

(急にうるせぇ!! びくった……)


 

 空間の上空。

 ちょうど俺たちがジャンプしても届かなそうな程度の位置に――一つの影が現れる。

 

 その影の両側には、見るものすべてが疑うような神々しい翼フェニックス、その頭上には太陽のごとく発光した天使の輪エンジェリング……ではなく、つるっぱげのスキンヘッドハゲ、そして…………ちゃんと

「全裸」だった。


(いやコイツ、超キモイんですけど!!)



「「「キャー!!」」」


 

 女子の悲鳴が聞こえる。

 まぁフル〇ンを堂々と見せびらかしているこのごっついハゲが犯人なんだが……。


「みなさまどうも‼ わたくしココ、天界ナンバー4の案内人を務めております、フルボ〇キと申します‼ どうぞお見知りおきを~~‼」

「「「きゃー‼」」」

(…………俺よりひどい名前だ…………)

 

 すると一人の男が声を張り上げた。

「オイオマエ‼ 俺たちなんでこんな訳も分かんねぇ空間に呼ばれたんだよ、どういうことだ‼」

「アンタネェ……それを今から説明するんでしょ? あとわたしは、フ・ル・ボ・〇・キよ」

「「「きゃー‼」」」


 (アイツこの状況絶対楽しんでるだろ……)


「アンタたち、よく聞きなさい‼ ココ天界№4は、前世でひっどい行いをして、クズでバカで社会の胸くそ畜生なフンどもが集まる場所なの。本当は地獄に落ちるはずだったアンタたちが何かほかの要因で社会のゴミへと変貌してしまった可能性を考慮して、地獄の一歩手前のこの保留ゾーンにぶち込まれたって訳よ」

(すっごいボロカス言われた気がする……)


「「「あ? なんだテメェー‼」」」

「「「そうだそうだ‼ 何言ってくれてんだフルボ〇キ‼」」」

「「「きゃー‼」」」


「そ、そうだー」

 俺も一応かるく言っておいた。


「うるさいわねーほんと……要するに、わたしたち天使のお情けでアンタたちはココにいるの。アンタだって生まれた瞬間からクズだった訳じゃないでしょ? ――子は産まれる場所を選べない。成長していく過程で環境だったりさまざまな要因が互いに交差して影響を与え合い、今のアナタたちがいるって考えなの……。アナタたちにも心アタリがあるでしょ?」


(……確かに、もし俺があんな名前じゃなく、クズな父親の元に生まれていなければ、今頃は平凡な毎日を過ごせていたかもしれない)


「人生一度きり、何せアナタたちがクズになったのは100%アナタたちのせいじゃない。かといって、心気兼ねなく天国に行けるような行いもしていない。だからアナタたちにはゲームをしてもらうわ‼」

(ゲーム?)


「地獄か天国かを賭けた……とっっっても面白いゲームよ」

 天使は悪い笑みを浮かべて言った。


「内容はちょーんシンプル‼ これからここにいる計100人の魂ちゃんたちに一斉に異世界――剣と魔法が行き交う壮大なワールドゥッに転生してもらって、とある勝負をしてもらうわ‼」

(……勝負、だと?)


「アナタたちは一斉に赤子から人生をスタートする。その環境や能力(遺伝)などは完全にランダムに振り分けられる。その中で、お互いが転生者を見つけ出し、殺せた者が勝者よ」

(……なっ、まさか、アイツさては転生者同士で「殺し合いデスゲーム」をさせる気か!?)


 100人で「殺し合いデスゲーム」って、ゲームでいうバトロワみたいじゃねぇか!


「だって仕方ないじゃない。全員を全員天国に送るなんて真っ当な人生を歩んだ人たちに不平等だし、何よりそんな一斉に天国には送れないわ。だから――定員は、そうね、天界№4だから4名‼ この中で4人だけが天国に送られることを保証するわ‼」


「「「……っ‼」」」


(どれもこれも天使エンジェルの気まぐれかよ、でも本格的にヤバい雰囲気になってきたな……)


「ただーーしっ‼ 一つだけ、全員が地獄送りにならなくても済む方法を教えるわ‼」

(……おいおい、矛盾しまくりじゃねーか、だが、そんなのあるにこしたことはない……)


「それは――魔王ラスボスを倒すこと‼ これは取引先の天国と話し合って、転生先の平和を守ってくれるのなら、その引き換えにで承諾を得たわ‼ つまり――誰かが真っ先に他の転生者を見つけて殺し、自分だけハッピーエンドで他を切り落とすか、それとも誰かが魔王をやっつけて全員がハッピーエンドで終わるか。これもアナタたちに向けられた試練だと思いなさい‼」


(なるほどな……しかし、今の話を聞くだけなら全員で協力して魔王を倒す方が圧倒的に理にかなってるし都合がいい……比較対象としてフェアじゃないが、クズな俺たちが団結とかできるはずないと踏んでのことなのだろうか……)


「それでは‼ もう何も言うことは無いわね‼ みなさんが良き第2の人生を送れますよう見守ってます‼ じゃあレッツ、ヘブンゲ~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~ムゥ‼ まったね~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~‼」


 そして俺は、その言葉を最後にまばゆい光に包まれた。





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面白かった、共感できた、続き気になる!と少しでも思っていただければ、❤️‍🔥、コメント、⭐️⭐️⭐️お願い致します!



そして今、

俺の第2の人生セカンドライフが――スタートする!



次回もよろしくお願いします♪

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