桜の散るころに

幻のP

プロローグ あの日の桜の散る時期

あの子と出会ったのは何年も前の話だろうか。縄張り争いでライバルと戦って勝ちはしたもののケガがひどくて川辺近くで倒れていた。人目が少ない場所。もう誰も来ないだろう。我の人生はこれで終わるのか・・・。

 

ふと視界に一人の少女がのぞき込んできた。

なんだ、この娘は。


「だいじょうぶ?いたそう・・・。これぬってあげるね!」

 

少女がそう言ってなぞのものを我の体に塗ってきた。しみるな・・・。薬とやらのものなのか・・。


「これでもうだいじょうぶだよ!」

 

少女が生意気にも我の頭をなでてきた。不思議と心地よかった。


 しばらく寝ていたのだろう。起きた時にはもうあの少女はいなかった。

 

あれから数年、覚えているのはあの可愛らしい顔と出会いが桜の散る時期だったということ。


あの少女は元気だろうか・・・。たまには人間世界を覗くのもありだな。

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