第28話【奏のご褒美】

 翌日の日曜日―。

 この日、かなで深優みゆうと服を見に行こうと約束をしていた。神崎かんざきの屋敷にバイクで迎えに行き、電車に乗って横浜へと出て来た。駅前の百貨店をぶらぶらと見て回る。


「迷うなぁ。やっぱりワンピースがいいかなぁ」( ・᷅-・᷄ )ウーン…


 真剣に悩んでいる奏。そんなに悩む事だろうかと不思議に見ていると、通り過ぎる何人かの女の子や女性が奏を振り返っていく。赤い髪が目立つのもあるが、身長も高くて、スタイルが良くて、整った顔立ちに皆が振り返っていくんだろうなと思うと、すごい相手と付き合っているんだな(ゲームだけれど)と改めて思えた。実は深優も目立っているが自分の事はもうちょっと麻痺してしまってて気にならなかった。


「深優ちゃん大丈夫?人目気になってない?」


深優

「大丈夫」


「そう?しんどかったら言ってね。もう少しこのお店見てていい?」


深優

「うん」


 楽しそうに商品を一着ずつ見ていく奏。ふと、一着の真っ白なワンピースを手に取った。オフショルダーでふんわり大きなフリルが付いていて、ウエストから伸びたリボンを腰の所で結び、スカートの部分はロング丈で透ける薄い生地を何枚も重ねてふわふわになっている。しかし深優はちょっと眉をひそめている。


深優

「…奏君、それ、ちょっと可愛過ぎない?」


「え〜?そうかなぁ?でも、うん!夏っぽいし、これ、深優ちゃんに着て欲しいな!」


深優

「えぇ…」


「ご褒美!約束だよ?」(*´▽`*)


深優

「…わかったよ。試着するだけだからね」


「なに言ってるの?買うよ!今日は一日この服着てもらうんだから!」


深優

「!?買うの…」


 「えぇ…」と引いていると奏から軽い空気が消えて、少しだけ素の奏が顔を出した。名前を呼ばれるその声はいつもより少し低いあの声だ。屈んで首を傾げて少し上目で顔を覗き込まれる。


「…珍しく俺頑張ったんだよ。ご褒美、ちょうだい?」


深優

(…こんな事されたら女の子は喜んで着るだろうな…)


「ん?」


深優

「…わかった。わかったから、その色気しまって」


「なにそれ。ふふ。ちなみにその服に合う靴も買うし、アクセサリーも買うからね!」


深優

「一式揃えるのか…」


 「はぁーやれやれ」と試着室に入り、着替えて店員さんに腰のリボンを結んでもらって奏に見せる。


「おぉ!想像以上に良い!///」


店員のお姉さん

「凄くお似合いですよ!!脚が綺麗で羨ましいです!!」


深優

「…どうも」


店員のお姉さん

「このワンピースにはこちらの靴なんかもピッタリだと思いますよ!履いてみませんか?」


 店員のお姉さんの手には少しヒールの高い白のパンプス。底も少し厚い。立って歩けるかどうか怪しかった…。とりあえずそれを受け取り履いてみる。意外と安定していた。店の中を少し歩いてみる。足をくじきそうでちょっと怖かったが歩けない事はなかった。


「大丈夫そう?歩ける?」


深優

「うん。意外と平気」


「そう?じゃあ、すみません。このワンピースと靴ください!できればこのまま着て行きたいんですけど」


店員のお姉さん

「ありがとうございます!では、ご用意致しますね。少々お待ちください。彼女さん背も高くてモデルみたいですね!綺麗で羨ましいです!」


「ありがとうございます!」


店員のお姉さん

「美男美女で良いですね〜!」


「俺はそうでもないですよw」


店員のお姉さん

「またまたぁ〜」


 雑談をしながら深優を待つ。お姉さんは深優の着ていた服を丁寧に畳んでショッピングバッグに入れてくれ、靴もパンプスが入っていた箱に入れてくれた。店を出て奏が荷物を持ちながら深優の手を引いて次の店へと向かう。次はアクセサリーを扱っている店に入る。イヤリングを見ながらふと奏がお揃いにしようかと言った。


深優

「お揃い?」


「うん。どうかな?1セットだけ買って片方ずつするのもいいね!このそんなに目立たないやつとか。石のやつもいいね」


深優

(…まぁ、ゲームもあるし…そのぐらいならいいか?)


「どれがいいかな?」


深優

「…あ、これ綺麗だよ」


「うん?どれどれ…ほんとだ。蛍石だって。俺これがいいな。深優ちゃんは?どれがいい?」


深優

「僕も奏君と同じやつがいい。この一番小さいの」


「うん。これだね。じゃあ半分つしようか。買ってくるね。ちょっと待ってて」


 これもお会計をして値札を外してもらいその場で着けた。そして店を出ようかという時に深優があるものを見つけて立ち止まり奏の手を引いた。


「なに?どうしたの?」


深優

「…あれ。鈴の付いた…チョーカー?」


「え?」


 いつか話していた鈴の付いたチョーカー。目の前にあるのは黒くてレースで出来た幅の狭いチョーカーだ。店員が声を掛けてきたのでとりあえず試着をさせてもらう。深優の細い首によく似合っていた。深優も鏡を見てどうやら気に入ったようである。


「うん。似合ってる。これも買おうか」


深優

「え、いや、流石にお金遣わせ過ぎて悪いよ」


「俺のご褒美だから良いの。それにお金も武芸会の賞金だしね。だから気にしなくて良いよ。ちょっと買ってくるね」


 チョーカーもお会計をしてすぐに着けた。なんだか嬉しかった。奏と半分こにしたイヤリングも鈴の付いたチョーカーも。買い物を終えたふたりは安生へと帰って来て、エンジョイタウンに寄ってコーヒーショップに入った。


「いやぁ、いい買い物したなぁ」(*´▽`*)


深優

「満足した?」


「もちろん!綺麗だよ深優ちゃん」


深優

「そりゃどうも」


「なぁに?嬉しくない?」


深優

「どう反応していいかわからないだけ」


「そう?今度またその格好でお店来てくれたりしない?」


深優

「ご褒美はもう終わりでしょ?」


「え〜。なにかないかな。お願いできるようなこと」


深優

「無いね。…まぁ、一度だけなら良いよ」


「!ホント!?嬉しいなぁ!!」


深優

「一度だけね」


「やった!」


 時間になり深優を送って行き、帰りがてらバイクを取りに行って、奏はその足で雅春まさはるのマンションへと来ていた。洗面所の鏡でイヤリングを見て満足そうにしている。


雅春

「お?来てたのか。ん?なんだ、ピアス開けたのか?」


「いや、イヤリングだよ。まださすがに穴は開けられない。それにこれ、深優ちゃんとお揃いで買ったやつだしね」


雅春

「言ってた優の妹か」


「そ。いいでしょーお揃い」


雅春

「そうだな。今日一緒に出掛けて来たのか」


「うん」


耀脩ようすけ

「俺以外の奴とお揃いなんか買ったのか…」


「諦めないねぇ耀脩」


耀脩

「そう簡単に諦められるかよぉ…俺が大事に大事に育てたのに…」


「やめてよw なにその言い方w」


雅春

「お前は…。全く。諦めの悪い奴…」


耀脩

「うるせぇやい…」


 リビングに移動してわやわやと話をして、ついでに煙草を一本吸った奏は耀脩と一緒に屋敷へと帰った。



◈◈◈



 梅雨入りした今日この頃。雨が降っている日が多くてカフェ部のメンバーも少し元気が無かった。


八雲やくも

「雨の日の営業は床が滑りやすく、またかなり汚れます。こまめにモップをかけるようにしてください」


「営業が終わったら玄関マットも洗うようにしてね」


貴弥たかや佑真ゆうま将也まさや

「「「はぁーい」」」


八雲

「さて、では始めましょうか」ニッコリ


佑真

「うす!」


貴弥

「頼む!はずれてくれ!」


将也

「オレもいやだぁ!!」


 八雲が手に持っているのはビニール袋に入った何枚かの折り畳まれた紙。この日は次のイベントの衣装決めをする事になっていた。ちなみに次のイベントは当初予定していた不思議の国のアリスである。アリスになるのは誰なのか。部室はどこか緊張していた。


八雲

「誰から引くかじゃんけんしましょうか。私は最後に余ったもので良いです」


蝶子ちょうこ・佑真・貴弥・将也・奏

「「「「「じゃーんけーん!!」」」」」


 順番を決めて祈るようにしながら紙を引いていく。


八雲

「全員引きましたね。では…私は時計うさぎですね」


「俺チェシャ猫!」


佑真

「俺はマッドハッターです。蝶子は?」


蝶子

「私はハートの女王よ」


佑真

「お!いいね!」


将也

「あ"あ"あ"あ"あ"あ"あ"っ!!!!(絶望)」


貴弥

「よっしゃぁぁぁぁ!!オレトランプ兵!!」


「ということは、石井くんがアリスだね!」


八雲

「配役決定ですね。頑張りましょう」


すぐる

「マジかよ…」


将也

「うわぁぁぁ〜っ!!イヤだぁぁぁぁ〜っ!!」


蝶子

「石井君が一番適役でしょう?」


将也

「蝶子ちゃんのほうが似合うよぉ〜」


蝶子

「嫌よ。ハートの女王だって嫌なのに」


将也

「ヒィン…」( ߹꒳​߹ )


八雲

「平等にくじ引きした結果ですから。頑張りましょうね」


「じゃあ、今の結果をマリアちゃんに送るね〜」


 配役を茉莉愛まりあへとLIMEで送る。すると物凄い速さで返事がきた。


黒崎くろさき茉莉愛〕

咲妃さきさんがアリスですか!?頑張ってとびきり可愛い衣装作りますね!!]


「…だって。頑張らなくちゃね!」


将也

「マリアちゃんまでぇ〜…|||」シクシク…


「ところで奏。メニューはどうするんだ?限定メニュー出すのか?」


「うん。またイベント限定メニュー出したいな」


「わかった。考えておく」


「お願いね。俺もドリンクメニュー考えなきゃな」


佑真

「優さんも奏さんもイベント大変じゃないですか?秘密の庭もたいしたことなかったし、無理にやらなくてもいいんじゃないですか?」


「いや、それはもういいんだ。人数増えたし俺が楽しいことしたいだけなんだ。メニュー考えるのも楽しいし、そんな大変なことないよ」


「俺もそんなに凝った事してる訳じゃないし。大変だとは思わないな。一ノ瀬いちのせ


紗子

「∑は、はい!」


「俺、アリスよくわからないから、アイデア出し手伝ってくれないか?」


紗子

「あ、はい!もちろんです!」


 あれから日が経ち、やっと立ち直った紗子。あの日、休憩から戻ったテンションガン下がりの紗子を見てさすがの優も心配していた。今日なんかはもう笑顔も見られるのでひと安心である。そうしてこの日の部活が終わり、それぞれに帰って行った。着々とイベントの準備は進んでいく。



◈◈◈



 とある土曜日の安生あき。どこへ行こうかと話すふたりの安生高生の女の子。


安生高女子①

「なぁんかエンジョイタウンも飽きたよねぇ」


安生高女子②

「だねぇ。なんかオシャレなお店とか開拓したい」


安生高女子①

「…!?え、待って待って、え…あれ神崎先輩じゃない!?」


安生高女子②

「え!?どこどこ!?」


安生高女子①

「ほら!あそこ!信号待ちしてる!」


安生高女子②

「!?ほんとだ!!え!?めちゃくちゃオシャレ!!あの神崎先輩激レアじゃない!!///」


 ふたりの前方に、奏が選んだワンピースを着た深優が居た。普段はパーカーにパンツでスニーカーという格好が知れている深優の激レア姿にテンションが上がるふたり。


安生高女子①

「どこに行くんだろう?」


安生高女子②

「…ついてっちゃう?」|ωΦ)


安生高女子①

「…行っちゃう?」|ωΦ)


 にやりと笑ってふたりはこっそりと深優の後を追いかける事にした。


安生高女子①

「駅?待ち合わせかな?」


安生高女子②

「え?でもまっすぐ改札に向かってるよ?…!ヤバい。私パスノ入ってるかな?;;;」


安生高女子①

「あ!私も!えー…神崎先輩どっちに行くんだろ?」


安生高女子②

「小田原方面、かな?」


安生高女子①

「急いでチャージして追いかけよ!;;;」


安生高女子②

「うん!;;;」


 急いでチャージをしてホームで深優を探す。すると数人の男に囲まれている深優を見つけた。


安生高女子①

「え?ナンパ?神崎先輩大丈夫かな?」ハラハラ…


安生高女子②

「ヤバい感じかな?どうしよう…」


 しつこくする男を無視し続けているらしい深優がさすがにうんざりしながら何かを話している。すると男達が離れた。しかしまだ深優を見ている。電車が来て乗り込み駅ふたつで深優が降りると男達も降りた。そのままバスロータリーに向かうと男達もついて行き、同じバスに乗って、同じ所で降りた。深優は気付いているのかいないのかわからないが真っ直ぐどこかに向かっていた。


安生高女子②

「え、あの男の人たちもついてきてるじゃん」


安生高女子①

「ヤバいって、どうするの?」


安生高女子②

「もう少しだけ様子見てみよう…ほら、もしかしたら、向かう先に助けてくれる人が居るかもしれないし!」


安生高女子①

「そ、そうだよね!」


 そうして後をついて行くと七瀬ななせの商店街に入り、喫茶Aoiへとやって来た。昼時の混雑が過ぎ並ばずに店へと入った。


安生高女子①

「喫茶店?」


安生高女子②

「いい雰囲気!入ってみようよ!さっきの男の人たちも入ってって神崎先輩も気になるし」


 ふたりはドアに手をかけるとゆっくりと開いた。


―カラン、コロン…。


八雲

「いらっしゃいませ。空いてるお好きなお席にどうぞ」


安生高女子①・②

「「!?///」」


 まず出迎えた八雲にびっくりし、とりあえず言われた通り空いてる席に座る。もちろん深優が見える席に。すると今度は良きタイミングで奏がお冷を持ってやって来た。


「いらっしゃいませ。お水失礼します。お決まりになりましたらお声掛けください」


 静かにBGMの流れる店内。きょろきょろと見回してふたりは絶句しながら顔を見合わせた。


安生高女子①

「え…え!?ヤバくない!?なにここ!!店員さんイケメン過ぎる!!///」


安生高女子②

「え、もっとヤバいこと見つけた…」


安生高女子①

「なに!?これ以上!?」


安生高女子②

「神崎先輩とあの赤い髪の店員さん、同じピアスしてる…(震え声)」


安生高女子①

「なんですって?(真顔)」


 コーヒーを飲むのに髪を耳に掛けているその耳に着けられている蛍石のイヤリング。そしてカウンターの中に居る奏を見ると、右耳に同じ蛍石のイヤリングが着いている。「なんでだろう」「お揃いなのかなぁ?」なんて奏を見ていると手が空いたらしく、深優の元へと向かった。


「深優ちゃん、クッキーとか好き?試作品があるんだけど味見してもらえないかな?」


安生高女子①・②

「「"深優ちゃん"!?」」ガタタッ


 思わずちょっと大きな声が出てしまい、奏が「なんだ?」とこちらを向く。ふたりは思いっきり顔をそらして誤魔化す。


安生高女子①

「ヤバ…バレたかな…;;;」


安生高女子②

「かも…;;;」


安生高女子①

「ていうか、そろそろ注文もしないとヤバいよね;;;」


安生高女子②

「だね。けっこうメニューあるんだね。悩んじゃう」


 「うーん」と悩んで本日のおすすめコーヒーを2つ頼んだ。注文が入ると奏がコーヒーを淹れる。奏がコーヒーを淹れているのにも驚いたが、運んで来た店員にも驚いた。


佑真

「お待たせしました。本日のおすすめコーヒーお2つです」


安生高女子①

(王子がコーヒー持って来た…!!)


安生高女子②

(王子だ…ガチでリアルに王子だ…!!)


佑真

「ごゆっくりどうぞ」ニコ


安生高女子①

「…とんでもない喫茶店に入ってしまった…」


安生高女子②

「ていうか、神崎先輩もしかして、あの赤い髪の店員さんに会うためにオシャレして来たの???やだ、尊い」


「あれ?もしかして深優ちゃんの後輩かな?」ヒョッコリ


安生高女子①・②

「「∑!?」」ビクッ


「あはは。驚かせちゃいましたね。こちら、今度お店でやる限定イベントのクッキーなんです。よかったらどうぞ」


安生高女子①

「あり、がとうございます」


安生高女子②

「あ、あの、そのピアス…神崎先輩と同じ物ですか…?」


「あぁ、これですか?そうです。一組の物を半分こしてるんですよ」


安生高女子①

「え、ということはやっぱり???」


安生高女子②

「それは、そういうことですよね???」


「はい。付き合ってます」


安生高女子①・②

「「神崎先輩の彼氏!!!!」」


深優

「騒がしいよ」


安生高女子①

「∑わ!先輩!」


安生高女子②

「すみません;;;」


 いつの間にか深優が腕を組んで奏の隣に立っていた。


深優

「君達、安生からずっとついてきただろう?僕に何か用?」


安生高女子①

「いえ、あの、用ってわけじゃ…すみません!」


「あらら。深優ちゃんがどこに行くのか気になったんじゃない?オシャレしてるし」


安生高女子②

「そうなんです…!ごめんなさい!」


「まぁ、ほら、なにかあるわけでもないし。許してあげたら?」


深優

「?別に怒ってないよ。でも、あっちはどうしようかとは思ってる」


「あっち?」


 深優が指し示す先には駅からついてきた男達が居た。こちらも「ヤベ!バレた!」という反応をしている。


深優

「駅で声かけられて、断ったんだけどついてきちゃったんだよね」


「じゃあ帰りは送ってくよ。待っててくれる?」


「そんな格好してるからしつこくされるんだろ?もう少し控え目な服無かったのかよ」


安生高女子①・②

「「!?」」


!?


深優

「煩いな。制服のスカートと同じでしょ」


「制服はそんな肩出さねぇだろうが」


安生高女子①

「神崎先輩、その方は???」


深優

「僕の兄だよ」


安生高女子①

「お兄さんがいたんですか!」


深優

「言っておくけど、優はもう彼女居るから」


安生高女子①

「え!?いやいや、違います!!そっくりなのでびっくりして…」


深優

「そう。ならいいけど。じゃあ僕は戻るよ」


「ゆっくりしていってくださいね」


 そう言うと奏はカウンターに、深優は座っていた席に戻って行った。が、優はというと深優を追いかけてきた男達に威嚇しに行っていた。威嚇された男達は大人しくなってコーヒーを飲んでいる。


安生高女子①

「…神崎先輩の彼氏、どう思う?」


安生高女子②

「スタイル良し、顔良し、人も良さそう、コーヒーおいしい。なかなかの高得点なのでは?」


安生高女子①

「背も先輩(170cm)より高かったよね!」


安生高女子②

「うん。先輩が変な人選ぶわけないけど、なんか良い人そうでよかった」


安生高女子①

「そうだね。それはそれとしてこのお店すごくいいよね!私気に入っちゃった!」


安生高女子②

「わかる〜!いいよね!通おうかな」


八雲

「ありがとうございます。またぜひいらしてくださいね」ニッコリ


安生高女子①・②

「「はい///」」


 しばらくのんびりとしたふたりはお会計をして店を出ようとしたが、ふと帰り道がわからない事を思い出した。深優の後をついて来ただけなので道を覚えていなかったのだ。


安生高女子①

「ここから一番近いバス停ってどこだろ」


安生高女子②

「待って。今調べる」


貴弥

「駅に行くなら、ここを出て左に進んで、大通りに出て、もう一回左に曲がった薬局のところにバス停ありますよ」


安生高女子①

「!ありがとうございます」


貴弥

「いえ、ありがとうございました」


 店を出たふたりはバス停までを歩きながらさっきまでの話をする。


安生高女子①

「神崎先輩の彼氏もメガネのお兄さんも王子も道案内してくれた店員さんもみんなよかった。眼福眼福!」


安生高女子②

「レジやってた女の子もレベル高かったよね!なんかどこかで見たような気もするんだけど」


安生高女子①

「どうする?みんなに教えちゃう?」


安生高女子②

「えー?なんか教えたくないなー」


安生高女子①

「だよねー。ま、内緒にしたところで私たちにチャンスは無いんだろうけどねw」


安生高女子②

「確かにねw 絶対みんな彼女いるよねw」


安生高女子①

「ねー!でも今日楽しかった!」


 こうして彼女達の楽しい1日は終わった。ちょっと遠かったけど良いお店も見つけれてハッピー。ふたりはいつまでも飽きずにたくさんの話をしながら帰って行った。

 一方、Aoi店内。


深優

「僕もそろそろ帰るよ」


「え?送って行くよ?」


深優

「いいよ。帰るだけだし」


「そう?」


深優

「うん」


「ダメだ。送ってもらえ。お前先月の事忘れたのか」


深優

「煩いな。忘れてないよ」


 先月の事とは深優が廃墟のラブホテルに連れて行かれたあれである。険しい顔をする優に煩わしそうな深優。その様子に奏はくすりと笑って深優を見た。


「俺が来てくれって頼んだんだから。帰りは送らせて?家に帰るだけだけど、もしかしたら家までついてかれちゃうかもしれないでしょ?ね?」


深優

「はぁ…わかったよ。待ってる」


「うん。ありがとう」


 こうして深優は閉店まで奏を待って一緒に帰って行った。優も将也をバス停まで送ってバスに乗るのを見送り、他の4人もそれぞれ帰って行った。



◈◈◈

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