第2話 ようこそ、遊部へ!①
時間はあっという間に過ぎ去っていき、高校に入学してもう二日が経った。入学前から夢見まくっていた事柄は何一つ起こっておらず、相も変わらずなモブ男生活を過ごしていた。
午前で放課後となり、クラス内は賑やかを通り越して騒がしい。昨日の静けさが嘘のようだ。
僕はクラスの騒がしさに混じることなく、昨日できた友達に一声かけて立ち上がると、部活紹介と書かれた冊子を手に教室を出た。
我が高校は、今時珍しいであろう『部活動必須』の高校であり、特別な事情がない限りは四月中に何かしらの部活動に所属しなければならない。
部活動を強制させられるのは、生徒たちにとってはあまり好ましくない校則だと思うが、それでも結構人気のある高校なのだ。主に女子から。
その理由はとても簡単なもので、『髪型は自由』『ピアス等のアクセサリー類、マニキュアやネイル等も、学校生活に支障をきたさなければオーケー』という寛大な心を校則様はお持ちで、主にそこ目当てで女子の受験者が殺到しているようだ。ちなみに群がる女子に導かれるように男子も集まってくるのだとか。僕は家から一番近い高校だから選んだだけである。本当である。
そんな寛大な校則のためか、僕のようにアクセサリー類を何も身につけていない職業すっぴんの方が校内では珍しい分類に入る。
僕もいつしか高校デビュー組に呑み込まれ、ピアスとかつけるようになるのだろうか。いや、流石に穴開けるのは怖いって。そんな勇気、僕にはない。
廊下で派手めな女子とすれ違うたび、チャラチャラした自分を想像し、あまりの似合わなさに苦笑い。そんなことを何度かしているうちに目的地へと辿り着いた僕は、扉の前で足を止める。
入学式後に配られた部活紹介の冊子、その中で僕の目を留めた部活動──
『遊部』
一目でメジャーな部活動でないことがよくわかる。紹介文にも『楽しく遊びます!』と書かれていただけ。このような謎多き部活動を放っておけと言われても無理がある。
遊びがメインだと思われるため、イケイケ男女の溜まり場と化している可能性は大いにある。そう考えると若干の怖さはあるが……僕は好奇心に負けた。それに、別に今日部活に入るわけではない。本日は体験だ。これでよくない部活動であれば、今日限りの付き合いでいけばいい。あと、謎の部活動には可愛い女の子がいるのがラノベ界隈ではお約束だ。その可能性に賭けてみたい。
僕は一つ大きく息を吐き出し、扉を二回叩いた。
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