悠久の楽園を胸に、遥かな大地を越えて

ひと言でいうと傑作です。美しい装丁で一冊の本になって欲しい。
東と西の文化が相まみえる広大な大陸を舞台に、たったひとつの思いを胸に旅をするヒロイン、ポーリャの魅力。そして壮大な物語を彩る描写と表現の深さ。作品を形づくるすべてに唸らされます。
第一章はまさに千夜一夜を思わせるおとぎ話のような楽園の回想と、草原の民の明日をも知れない命との隣り合わせの日々が綴られます。過去と現在を浮遊するような筆致で、ふたつの世界に同時に連れ込まれます。
そして第二章のスペクタクル逃亡劇。幼い主人を愚直なまでに守り通す男の忠義と少年の聡明さが光る冒険譚では、太刀を振るうような豪快さと権謀術数の生臭い人間ドラマが、ポーリャの機知によって軽妙なユーモアを失わずに描かれます。
そして最終章。一貫してヒロインが胸に抱き続けてきた楽園とは。そしてそのラストは。
作品のタイトルが心に染み入ってくる余韻がすごいです。遥かな時と大地の果てに描かれる世界をぜひ体験してください。一行一行を味わい尽くして読みたい、素晴らしい文学です。

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