遠い楽園の語りに想いを馳せて

狼の遠吠えの、生薬の香りの、生きている人々の息遣いが聞こえてくるような文章にあっという間に引き込まれてしまいました。

第一章はポーリャという一人の女性の口から語られる過去と共にナランツェツェという少女の日々が交互に紡がれるのです。
この物語は夢の中にあるようで、その時代を生きた人達の生活と思いが綴られています。
静かで静謐で、どこか生々しい呼吸の音すら聞こえてきそうな文章と共に。
ポーリャという女性の語る過去にナランツェツェと同じく引き込まれていくような感覚があるのです。
深く深く引き込まれたかと思えばナランツェツェの生きる世界に日常に引き戻される。交互に紡がれる物語は現実と物語の中の境界線が曖昧になりそうなほどに夢中になります。
第二章は幼い主人、阿怜を護る男性、鉄戈と共に旅をするポーリャの姿が書かれます。
ポーリャの目的は「カフカ」に出会うこと。第一章で語られたカフカをポーリャは捜しているのです。
目的は違えど三人は共に旅を続け、様々な人間との出会いを繰り返します。幼いながらも大人顔負けの阿怜と腕の立つ護衛である鉄戈とポーリャのやり取りが私はたまらなく好きでした。
そうして迎えた終わりに私は思わず息を吐きました。美しい物語でした。確かにポーリャという女性が生きていた物語なのです。
この物語を読むならば、どうか、最後まで見届けて欲しいと思いました。
息遣いを感じる文章に魅せられながら、遠い楽園の語りに想いを馳せて。私はこの物語に出会えたことを嬉しく思います。

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