土地を渡り、多くの人と出会い、長い時を経てもなお、強く焦がれる人がいる
- ★★★ Excellent!!!
かつて『楽園』で暮らしていたポーリャという一人の女性の、長い長い旅の物語です。
騎馬民族の娘ナランツェツェが、夜毎ポーリャから故郷の話を聞かせてもらう第1章。
ナランツェツェの三人称視点とポーリャの一人称視点とを境目なく行き来する語り口がおそろしく心地よく、遊牧民の暮らしと遠い『楽園』の暮らし、まったく違う二つの文化を軽やかに飛び越える感覚を体験しました。
第2章では、皇帝の子・阿怜と彼を連れ出した凄腕の護衛・鉄戈が、ポーリャの旅の道連れとなります。
阿怜を狙ってくる刺客を躱しつつ、それぞれの目的で進んでいく三人。この三人組での道中が、本当に面白いのです。幼いながらも非常に聡い阿怜に、不器用ながらも悪鬼のごとく強い鉄戈、そして世渡り上手なポーリャ。
かつての家族『カフカ』に会うために旅するポーリャは、それでもこの二人の運命にしっかり関わっていくのです。
本作、いろんなものを飛び越える物語だなと感じました。
土地も、文化も、時間も越えて。
世界の歴史の陰に、実はポーリャがいたのではないかとさえ思える、マジックレアリズムのような。
こうした物語を魅力的に描き出す筆致は、圧巻のひとこと。哀しくも美しいラストシーンの余韻まで素晴らしいです。
作者さまにしか書けない、唯一無二の読み口。ぜひ多くの方に味わっていただきたいです。