草原から砂漠、そして世界の都へ。ある決意を秘めた彼女と共に旅をする。
- ★★★ Excellent!!!
まずは章タイトルをご覧になり、少しでも心惹かれた方はぜひ本文を開かれることを強くお勧めいたします。
各章で移ろう舞台ごとに、そこに息づく文化を体感しつつ、一方で物語が導く幻想的な世界をも堪能できることでしょう。
第一章は主人公ポーリャが医師として身を寄せる草原での遊牧民族の暮らしと、彼女が語るはるか北の都での温かく幸福な思い出が交互に語られます。並行して進む物語は互いにまったくの別世界のようですが、ある日草原でポーリャの過去に繋がる出来事が起き、そこで彼女の生きる目的と、彼女の秘密の一端が明らかになります。ポーリャは、かつて北の都で孤児であった自分を拾ってくれた家族、なかでも「カフカ」という青年を探して長い長い間、様々な土地を流離ってきたのでした。
第二章の舞台は一変し、政変によって都を追われた幼いが聡明な太子と、恐ろしく腕は立つものの血路を開く以外の術を知らない護衛の主従が、その逃避行の最中にポーリャに出会い、旅の道連れとなって太子の母の生国を目指します。ポーリャもまた、そこに「カフカ」がいるという噂のために、その地に赴くのでした。
太子を狙う刺客の刃を掻い潜り、あるいは陰謀の魔の手を躱しつつ行商人と共に砂漠を渡る旅路は、第一章とは打って変わって冒険活劇といった趣があり、この章だけでも一つの物語が成立するのではと思えてしまう読み応えです。
第三章、砂漠を越え、世界の都と謳われる地にやってきたポーリャ。溌溂とした彼女のおかげで、物語は常にどこか明るく朗らかな雰囲気がありますが、そんなポーリャが胸に秘める、「カフカ」を探す目的と決意とは。
ぜひ、ご自身の目で見届けていただきたいラストです。
ポーリャをはじめとする、登場人物たちが流す涙の美しさが深く印象に残りました。
心地良く美しい筆致が綴る人々の日常や個性的な登場人物たちに心を寄せ、また手に汗握る旅路を辿り、さらには夢現の狭間を揺蕩うような余韻をも味わえる、不思議な魅力に満ちた物語です。