ハートのあめ
藤原荷物
知らない味
♡ 001 ♡
下校のチャイムが鳴ると、広香はカバンをひっかけて早々に退室した。一秒でも早くこの狭苦しい教室という箱を抜け出したかった。
放課後の部活や、カラオケみたいな気の乗らない誘いには、一分の時間も割きたくない。
帰って早くギターが弾きたかった。
玄関へまっすぐ足を運ぶ背後で、クラスメイトたちの談笑する声が小さくなっていった。
アコースティックギターを奏でることだけが、今の生き甲斐だった。バンドに所属するとか、ステージに立って人前で歌うとか、そんなことにも漠然とした興味はあった。しかし、いざ行動に移すとなると、広香の臆病な性格が邪魔をした。
ただ一人部屋で弦を爪弾きながら、曲を書いていた。そんな毎日だった。
少なからず友達もいたけれど、広香が付き合いに乗り気でないことに気付き出した子たちは、次々と離れていった。
寂しいような気もするけれど、それでよかった。
何より、ギターがたくさん弾けるから。広香は、ギターを抱いて眠りたいくらい、愛していたのだ。
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