青の亡霊

天水こうら

二度目の再会

僕には生きていく上で一つの信条を持っている。

勝手な正義感で行動しないということだ。

正義感で動くということは独善的なものである、自分にとっては助けたつもりでも本人からしたら余計なお世話だったなんてこともある。

もうあの時みたいな行動はしないそう心に誓ったんだ。




「なんか金なくなってるんだけど...」

「お前それ多分最近噂の窃盗犯だよ、放課後になっても残って鞄放置してるやつの財布からスられてるらしい」

どうやらクラスメイトの彼も被害に遭ったようだ。

「なあたしかお前東雲だっけ?お前教室に居たけどお前じゃないよな?」

教室に忘れ物を取りに来たタイミングが悪かった。

「こんな時間までお前なにしてたんだ?」

「図書室で勉強してた、二年生初っ端のテスト近いからさ。二人どうして学校に残ってたの?」

「教室で勉強してたんだよ、職員室に用事があったからついでにこいつにジュース奢らせる約束があったから数十分間開けてたんだよ」

「数十分しか離れてないのにタイミング良く教室にいるなんて怪しいだろ」

彼もお金を盗まれて苛立っているようだった。

「お前が盗んだんだろうが!さっさと白状しろよ!」

二人から責め立てられ少しめんどくさくなってきた。

「じゃあ僕が窃盗犯を見つけれたら、誤解を解いてくれる?」

「さっさと認めればいいのに、まあでも面白そうだからいいよ。」

被害に遭ってないと悠長なことだ。

「お前自分は盗まれてないからって面白がるなよ、でも時間はやるよ。」

本来の彼は優しいのだろう、犯人かもしれない僕に探すための猶予をくれるのだから

「見つからなかったら盗まれた分の金とお前を窃盗犯として教師に突き出すからな、期限は一週間はやるよ」


これは僕の潔白を証明するためだ、人のためじゃない。

そう思いながら悩んでいると、近くを通ったらしい女子生徒が声をかけてきた。

「大丈夫ですか?大きい声が聞こえてきたので来たのですが...?」

スリッパの色からして一年生だ。

「大丈夫だよ、ちょっと窃盗犯と間違われてね。」

「全然大丈夫じゃないじゃないですか!ていうかもしかして奏先輩ですか?」

誰だろう、どこか既視感を覚えるような...

「どうして僕の名前を?どこかで会ったことあるかな?」

どうしよう気まずい、そして申し訳ない。下の名前呼びしてくれてるのに覚えてなくて。

「あ、いえ覚えてないなら大丈夫です。私の名前は西海深冬にしうみみふゆ高校一年生です。」

「ごめんね覚えてなくて、一応自己紹介しとくと

東雲奏しののめかなで高校二年生。」

「話は戻るんですけどもしよかったら身の潔白を晴らすのお手伝いしても大丈夫ですか?」

「大丈夫だけど、いきなり信じてもいいの?過去に会ってるのに名前も覚えてないし窃盗犯疑惑をかけられてる相手を。」

「奏先輩なら大丈夫です、先輩が覚えてなくても私は覚えてるので。」

いい子だ、自分にはもったいないくらい優しい子だ。

「でも西海さん大丈夫?テストもあるけど」

「テストよりも自分の心配をしてくださいよ...」

もっともだ。

「それと私の名前は深冬で大丈夫です。」

「じゃあ明日から捕まえるために証拠集めて行くけどライン交換してもいい?」

「あ、QRコード出しますね。」


「これで交換できたかな?」

「大丈夫そうです、じゃあ明日の放課後に図書室集合でいいかななにか聞きたいことがあったら連絡してね。」

「それじゃあまた明日です。先輩!」

「じゃまた明日。」

めんどくさい事になった、窃盗犯に疑われてテスト勉強をしなきゃならないのに出来ないではないか。

にしてもあの子どこかで会った気がするんだけどな思い出すために頑張らねば。




「先輩覚えてなかったなぁ...まあ仕方ないかもう三年も前で、ちょっと関わったぐらいだし」

「お姉ちゃんもう少し待っててね、お姉ちゃんの最後の願いは必ず叶えるから。」


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