外の世界へ

 3日後の明け方、約束通りカインはやって来ました。

 ふたりは服を取り替えて大きな姿見の前に並びます。


「これだったら誰にもバレないね」


「そうだ、おれ達以外誰も気がつきやしない」


 最初こそ不安に思ってたいたアベル王子でしたが、時が経つにつれて不安は期待に変わり今日という日がとても楽しみでなりませんでした。


「町の地図とかある?」


「あるよ!」


 王子は城下町の地図を意気揚々と広げます。するとカインは西の一角を指差しました。


「ここには絶対に行ってくれ」


「何かあるの?」


「…… まぁな。絶対な」


「うん、分かったよ」


 カインの言うことに間違えはない、そう思えるほどアベル王子は彼を信頼するようになっていました。

 こうして王子はカインが用意したロープを使ってバルコニーから外に出ます。王子が上を見ると、カインが身を乗り出してこちらを見ています。


「いってきます、カイン」


 王子が手を降ると、カインはどこか悲しそうに笑って言います。


「行ってらっしゃい、。お前はもう自由だ」


 カインが初めて名前を呼んでくれたことにアベル王子の気持ちは更に昂ります。王子はスキップをして町へと向かいました。

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