またね


 “寂しいヤツ”、そんな風に言われてもアベル王子には友達の作り方がお分かりになりません。

 それでも王子は王宮の外からやって来たカインとどうしても仲良くなりたかったのです。


「……そろそろ帰るよ。このブローチは有り難く貰っておくぜ。だからって友達になったってワケじゃないからな」


 カインはポケットにブローチを捩じ込むとバルコニーへ向かいます。王子は慌てて追いかけます。


「待って! なら友達じゃなくていいからまたここに来てくれないかな? ぼくはカインと話がしたい。お願い!」


 バルコニーの手すりを跨いで向こう側に立ったカインはアベル王子をチラリと見ると、それはそれは小さな声でボソリと言いました。


「……気が向いたらまた来てやるよ」


 ぶっきらぼうな言い方でしたが、王子は嬉しくてたまりません。


「うん、またね!」


 そうしてアベル王子はカインの姿が見えなくなるまでバルコニーに立ち尽くしておられました。

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