第27話 懸念




暗黒近衛騎士団長というだけあって、禍々しくも厨二心をくすぐるフロアボスエレオス。3mはあるだろう騎士鎧が黒いオーラを纏って、大剣と大盾を構える。


「よし、まずはヘイトを取る所からだ。ラピス、頼んだぞ!」


「分かったのだ!『竜の咆哮』!『プロテクトガード』!」


「援護するよ!『祝福の舞・全能』、これでみんな全部の能力が上がったよ!」


まずは、ラピスが竜の咆哮でヘイトを取る。そして、プロテクトガードで自分の防御力を。シロが祝福の舞・全能で全ステータスにバフを全体に掛ける。前まではMPに不安があったから全能は使わなかったけど今は余裕もある。だから、問題なく使える。


エレオスは竜の咆哮でラピスにターゲットを絞った。竜人族とはいえまだ小さいラピスに大剣が振り下ろされる。見た目だけなら一撃で簡単に吹き飛ばされそうだが、ラピスはしっかりと盾でその攻撃を防ぐ。


「ラピスがしっかりヘイトを稼いでる、攻撃するぞ!ルナの攻撃はこの敵だと攻撃の通りが良くない。集中砲火で面食らってる所を切り崩してくれ!セラ、シロは魔法で攻撃!『ファイヤースピア』、『ストーンキャノン』、『セイクリッドクロス』!」


「了解よ、『レクイエム』、『セイクリッドシャイン』、『ストーンガトリング』!」


「分かった、『炎舞・落陽』、『聖天の光』、『ホーリーレイ』!」


「ッ___________________!!!」


「かなり効いてる、ルナ今だ!」


「ん、『アサシネイト』、『刺突』」


「おぉ!体勢崩れたのだ!『兜割り』、『スタンバッシュ』なのだ!」


俺の掛け声と共に、俺とセラとシロの魔法が直撃。的がデカいからラピスに当たる心配はない。上半身の部分に当たり、後ろへ大きくよろめく。

それを待っていたセラが、アサシネイトと刺突という短剣スキルを使って鎧の膝裏部分に攻撃をぶち込み、ラピスが地面から飛び上がり兜割りとスタンバッシュのデバフ攻撃とノックバック攻撃を使った。

そうなると待ってるのは……ドンっと後ろへコケる形になるエレオス。いわゆるダウン状態だ、絶好の攻撃チャンス!


「全員全力で攻撃を打ち込め!『剣舞奥義・雷鳴一閃』、『ブレイブスラッシュ』、『剣舞・桜吹雪』!」


「『五月雨突き』、『ドライブラッシュ』」


「いくのだ!『回転たたき割り』、『アックススラッシュ』、『ヘヴィースマッシュ』なのだ!」


「『ファイヤーバレット』、『アイスランス』、『ストーンランス』!」


「『炎舞・落陽』、『ホーリーレイ』!」


「ッ____________!!?」


更なる集中砲火を食らい、喋れないものの焦った様子を見せるエレオス。早くダウンから復帰しようとするのだが……


「させません!『サイコキネシス』!」


「手伝うわ!『ダークバインド』!」


後衛組が行動阻害系魔法でダウン復帰を阻止……これはちょっと優秀過ぎるかもしれん……


「……畳み掛けるぞ!前衛はひたすらスキルを使わず攻撃!後衛は阻害系魔法を維持だ!殴り倒せ!」


「ッッッ______________________________!!!!!」



そう指示を出してしばらく結局ダウンから復帰出来ずにエレオスは光へと返った。出てきた宝箱は木箱だった。



俺は正直かなり困惑していた。中級下位ダンジョンで遺跡ダンジョンは中級下位の中でもそこまで難易度は高くない。とはいえ、フロアボスをワンダウン取ってそのまま押し切ってしまうとは思ってなかった。なんなら、少し苦戦してもらおうとすら思っていたんだ。


もちろん、俺のステータスは上級職と遜色ないステータスをしている。だから、それなりに中級下位に似つかわしく無い火力が出ているのは確かだろう。だが、それでもワンダウンで倒せる程本来楽では無いはずなんだが……セラとシロが復帰を阻止したせいで完全に押し切ってしまった。


確かに、ダウンしたらそれを引き延ばせるから強いよと教えたのは俺だ。

だが、サイコキネシスもダークバインドも相手の重心を見極めて、的確に攻撃をしないと効果は無いんだが……ここしかないってところで適切に決めていた。

それに、ダウンのきっかけになる攻撃を作ったルナ。そして、確実にダウンするように押し込んだラピスの攻撃判断。あれは簡単に見えて難しい。ましてや、戦闘もまだまともにしたことも無いはずなのにこの身のこなし。元から天才だと言われても納得出来る。


みんな技量が異様に高いんだ。正直もっと苦戦すると思っていた。ゲームで言えばまだビギナーレベルのはずなのに中級者レベルの判断力と身のこなしだ。俺も最初の頃はこんなに動けてない、中級レベルに動けるようになるまでですらそこそこかかったものだ。そして、何度も何度も試行錯誤を重ねた上での今の技量なんだが……。


だが、それと同時に不安が残る。

恐らく、この連携と判断力があればどんなボスであろうとほぼワンダウンで倒しきれてしまうだろう。中級中位ですら、そのまま行けてしまう可能性がある。

レベル上げ目的ならそれだけでも問題ない。だが、こんなにあっさりとボスを倒せるようじゃ技量の上達はなかなか見込めない。言うてしまえば、ゴリ押しに近い戦法だからだ。

そこまでみんな馬鹿では無いの分かっているがワンダウン取れば倒せると、ボス戦なんて簡単だと意識として残ってしまうのは非常にマズイ。


どれだけ優秀でも人は人、意識としてそう擦り込まれてしまうと無意識のうちに簡単に油断する。

ましてや、10歳の子供達なんだ。これだけ倒せるなら良いじゃんと満足してしまう。この世界基準ならそれでも将来それなりに強くなって上級ダンジョン位までなら行けるだろう。だが、俺が目指してるのはもっと先の先だ。

中級者レベルの技量で満足されては困る。


優秀過ぎるが故にこんな落とし穴があるとは……贅沢な悩みとはいえどうしたもんかと俺は頭を抱える事になるのだった。

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