第21話 話し合い

予約投稿出来てなくて遅れてしまいました。

ストックが少し減っているので明日からしばらくは0時の1日1話投稿になると思います。

コツコツ書いていこうと思うので応援よろしくお願いします。


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ヴェルナーさんに応接室まで案内された俺達だが、俺は今最大のピンチを迎えていた。

パーティー名、全く決めていないのである!

パーティー名、これは今後ずっと使い続ける事になる名前。これでダサい名前やカッコつかない名前になる事は避けなければならない。モチベーションにも繋がってくる。下手したら歴史の教科書に乗るかもしれないのだ。そんなパーティー名がダサかったり、カッコつかない名前だと恥をかくだけ。ここは、しっかりと考えたい。


そう思ったのでヴェルナーさんに一言声を掛ける。


「ヴェルナーさん、すみません。少しパーティーメンバーと話したい事があるのでお時間頂けますか?」


「分かりました、私達も少し考えをまとめる時間が欲しかったので大丈夫ですよ。」


向こうも何か考えているらしい。昇格試験の議題かな?塩梅難しいもんな、簡単過ぎても難し過ぎてもダメな訳だから。


そんな訳でとりあえず2人の方に顔を向ける。


「とっても難しい問題が出来た。」


「……パーティー名?」


「そうだ、これから活動するにあたってパーティー名は必須。名前によっては名前が酷いせいで人が来ないなども考えられる……」


「確かにそうね……でもカワイイ系とかなら取っ付きやすくて来やすいんじゃないかしら?」


「ただのパーティーならいい。だが、俺達が目指すのはなんだ?最難関のダンジョンをいくつもクリアするだろう。伝説を打ち立てるだろう。間違いなく偉業を残す。そんなパーティー名がカワイイ系だとカッコつかない。別に並のパーティーならそれでもいい、臨時パーティーとかな。でも、今回の場合はそれはダメだ。」


「うーん、確かにそれもそうね……教科書に最難関ダンジョンをクリアしたパーティーはプルプリプリンセスとかだと笑っちゃうものね。」


「……プルプリプリンセスは置いといて、一旦考えてみよう。」


「ノワくんはどういう系統にしたいの?」


「……少なくともモチベが下がらず、歴史に残っても問題ないレベルのカッコ良さや風格を感じさせる名前。」


「難しいけど、考えてみる。」


そこで3人とも頭を悩ます。そもそも、こんな突発的に決めるものではないのだ。それぐらいパーティー名とギルド名は大切だ。

2つ名になったりもするからな……


「そうね……このパーティーのリーダーはノワだしその要素を取りたいのよね……」


「んー、ノワ……ノワ……ノワ……」


「ノワールは黒を意味してるから……んー……」


「ノワ……ノア……ノアにすると箱舟ね……」


「これからみんなを引き連れていくって意味で方舟はいい感じがしますね……」


「あとは、安直だがセラのファミリーネームから取った星って意味でノヴァとかか?新しいって意味もあるし」


「ただ、ノアとノヴァだと語感が近いのもあって合わなそうだし……」


「ノア……箱舟……アークはどう?」


「アークな……」


「合わせるとアークノヴァ?ノヴァアーク?」


「なーんか微妙だよな。しかも、2人の名前だけっていうのも……」


「そうね。」


「そんな、私はいいですよ……」


「そんな遠慮はいらないよ。」


「そうね……でも、いいアイデアが浮かばないわ。」


「そうだな……行動指針や何を成したいかから考えるか……」


「そうだね。」


「そうね。」


「……俺はこの世界を楽しみ尽くしたいと思ってる。何処までも、誰よりも。だからこそ、誰よりも強く、妥協せず吸収し続けたい。そんな気持ちも込めて強欲ってのはどうだ?」


「確かに、この世界を誰よりも楽しみ尽くそうなんて考えるのは強欲ね。でも、そうね、それがいいわ。」


「賛成〜!」


とパーティー名を決めた所でふと我に帰る。あれ、ここ何処だったっけ?と。

そして、全員首をゆっくりと向くと生暖かい目で見守るギルドマスターと受付のお姉さんがいた。

全員、顔から火が出るぐらい顔が真っ赤になったのは言うまでもない。



「ハハハ、パーティー名は大事だからね、良い場面を見せて貰えたよ。」


「お恥ずかしい所をお見せしました……」


「構わないよ、こっちも話がまとまったからね。」


「お気遣いありがとうございます。改めまして、私の名前はノワール・アルベルージュです。ここの領主の次男です。次が……」


「お初にお目にかかります、私はセラフィナ・メルトステラ。メルトステラ家の末娘で、ノワール様の婚約者になりました。」


「えっと、私がシロコです。お二人とパーティーを組んでいます。」


全員でしっかりと挨拶をする。


「ありがとう、改めて私も名乗ろう。ヴェルナー・ドレファス。見ての通りエルフの元冒険者で今はここの支部の代表であるギルドマスターをやってる。

あと、そこにおる君達の受付を対応したのがアノンだよ。」


「アノン・グレンジャーです、よろしくお願いします。」


「さて、アルベルージュ家には今も昔も大変お世話になっているよ。アルベルト卿にも今後ともよろしくとお伝え願えるかな?」


「はい、確かに。」


「ありがとう。それで、今日ここに呼んだ理由についてなんだが……」



そこでヴェルナーの顔が少し険しくなる。


「君達の今現在就いているジョブ、報告例がかなり少ない物から全く解らないジョブもある。それにこれまで就いた数と下級職のカンスト数も異常だね。初覚職してまだ1週間も経ってないはず。どうなってるのか出来れば説明して頂きたい。」


なるほど、呼び出された理由は未知のジョブに複数の下級職をカンストさせるレベル上げの速さ。この異常を説明して欲しいときたか……ただな……そう簡単に教える訳にはいかないんだよな……情報は宝だからな。

それに、ジョブやこれまでの転職ルートは個人情報にあたる。例え研究したいから情報を寄越せと言われても断る事が出来る。

今の状況もそれに近いな、個人情報を握っているぞ。だから、出来れば説明して欲しいな〜って感じだな。

それに、前の会話でうちの家とそれなりに懇意にしてると話して釘を刺してきたか。流石、ギルドマスターまで登り詰めた人だな。

だけどな、俺はそんな揺さぶりで攻略出来ると思われちゃ心外だな?


「なるほど、分かりました。」


「おぉ、分かってくれるか。物分りが良くて助かるよ。」


「いえ、ここのギルドに用が無い事が分かりました。」


「……なるほど」


「別にお父様と懇意にしていようと、それとこれとは話が別です。それに大事な仲間の個人情報を売り買いするような真似は出来ません。それに、少しでも情報を漏らす危険があったと、こちらから本部に連絡させて頂きます……

といえば大丈夫ですかね?ヴェルナーさん。」


「……フフ、フハハハハ!そこまで見抜くか。ホントに聡い子だね!」


「えぇ……ノワ、どういう事?」


「わ、私にも説明して欲しいです……」


「ヴェルナーさん、2人に説明しても?」


「あぁ、大丈夫だよ。」


ということで一連の流れの説明をした。

俺達は3人ともかなり珍しい職についている。それに、このたった数日で下級職のレベル上げをほとんど済ませてしまっている。これをギルドの職員達は分かってしまうし、滅多にいないが悪意を持つ者が無理矢理情報を吐かせようとするかもしれない。

それを危惧したのが父であるアルベルト、領地であるルージュレイクの近隣にあるレーツェで冒険者登録をするだろうと読みヴェルナーさんに一芝居打ってもらったのだろう。

全く、自分の父とはいえヴェルナーさんに憎まれ役を演じる様に頼むとは……流石にお説教だな。



「ヴェルナーさん、嫌な役を押し付けてしまいすみません。父にはコテンパンにしときますので……」


「なに、構わないさ。僕のような中年が若い子達の役に立てるなら汚れ役でもなんでもしてやるさ。まぁ、今回は意味がなかったみたいだけどね。」


「アルベルージュと懇意にしてる発言があった時点で想定してました。いや、正確には間違いなく懇意にしてるのでこういった事が起こるだろうと確信してました。」


「ハハハ、そうかそうか、アルベルト卿が褒めちぎるだけあってホントに聡く良い子だね……」


「それに、こういう事は間違いなく今後起こり得る可能性がありました。その危険を無くしてくれたヴェルナーさんとレーツェの冒険者ギルドには感謝を。」


「買い被りすぎだよ……それにこうやって演技をして油断している所を情報を抜こうとしてるかもしれないよ?」


「まさか、そこにいるアノンさん。彼女は斥候の中でも上級職スパイマスター。しかも、凄腕ですね。万が一でも情報が漏れないようにしているでしょ。間違いなくヴェルナーさんの右腕であり、秘書的な立ち位置かな?普段からこうしているのか落ち着いたように見える。」


「まさか……そこまで……」


「……私そんなボロ出してました?完璧に受付嬢になっていたと思うのに自信なくしちゃう……」


「受付する時の朗らかな印象からの悟られるように鋭い観察。印象を操作してましたね。あれは見事でした、私以外気づいた人はいないでしょうね。そして、ライセンスカードを見た時の反応の薄さ、あれだけしっかり観察したのにライセンスカードの際の反応の薄さにギャップがありました。それに、ここまで深い話をただの受付嬢には聞かせられないでしょ?」


「……そこまで逆に観察されてるのに気づかないスパイマスターってどうなのかしら……」


「いやいや、実際見事でした。私はこうなる事を半ば確信していたので余裕があっただけです。」


「……気まで遣わせちゃった。」


「それに、ヴェルナーさんは結界術に秀でた結界魔道士の上級職、その中でも珍しい箱庭使いですね?完全防音と空間操作で絶対に情報を逃さないと保険をかけてる。」


「そこまで分かるのか……とんでもない博識だね……」


「たまたまですよ……ここまでして漏らそうとしてないことから、漏らすつもりは最初からないし今後もないと確信してます。そして、これ以上情報が拡がらないようにアノンさんを窓口にして専属にしようとしてますよね?だから、ヴェルナーさんとレーツェの冒険者ギルドへ感謝をと伝えたのです。」


そういうとお手上げだと言うようにヴェルナーさんは大笑いし、アノンさんは頬をポリポリと照れ臭そうにかいた。うわぁ、照れてるアノンさんめっちゃ可愛い。ちょっと大人な女性が照れるとこって良いよね!


ちなみに、この話に置いてけぼりを喰らったセラとシロは目を白黒して混乱していたので、今後冒険者ギルド関係は全部アノンさんに頼めばいいよと伝えた。


実際、信用出来る人だけに搾って話を通せるのは有難い。リアルならではで情報が漏れたらやれ、研究だのなんだのとうるさいだろうしな。

それにリアルだからこそ、悪人なんかに話が回るのは避けたい。ただ、みんなに話が回るとなると絶対に悪人にも話が回るからな。

その結果、セラがまた襲撃されたりウチが襲撃されたりするリスクがあるし、変に強くなられるのは周りの影響を考えると面倒だ。

ある程度信頼を置ける人じゃないとリアルだからこそリスクが高すぎる。


そこまで考えて、ふとお父様はヴェルナーさんにそこまで見込んで頼んだのかなと思いつつ、それでもお仕置してやると心に決める俺だった。



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