第20話 レーツェへ



俺たち一行は馬車でアルベルージュ領の近隣の街レーツェという街の冒険者ギルド支部へと足を運んでいた。

アルベルージュ領は王国の中心となる王都、その南西に行った所にある。そこそこ土地は広く、栄えていたりする。そして、土地が広いということはダンジョンも沢山存在するという事。


この世界ではダンジョンの周りは栄える。金になるからだ。それに、ダンジョンが1つ出来たらその周りには他のダンジョンも出来ていると思え、と言われるほどそれなりに近い所で複数のダンジョンが難易度別に集まっていたりする。

レーツェもそうやって出来た街だ。そして、そうやって出来た街には必ず冒険者ギルド支部が存在する。まぁ素材鑑定したり、緊急事態が起きた際の対処。依頼のやり取りや調査など行なう関係上、絶対に必要だからな……


逆にアルベルージュ家が屋敷を建てているアルベルージュ領の城下町ルージュポートはその名の通り、港があり海に面している。また、小高い丘などもあるおかげで自然豊かで観光名所や避暑地としてよく使われる。また港があるだけあって交易も盛んだ。

そんな土地だがダンジョンは存在しない。ダンジョンがあるから出来た町とは違う。なので、冒険者ギルドもないのだ。

……まぁ俺から言わせてみれば近くにあるが発見出来ていないだけなんだけどな。



閑話休題



今日もレイラに頼んで馬車を運転してもらっている。もちろん、レーツェで好きに楽しんできていいぞと言ったらノリノリだったのは言うまでもない。ちなみに、今日は一泊する予定だから尚更レイラはノリノリだったな。


そんなこんなで冒険者ギルドへと俺達は到着した。外からでも分かるぐらい、中は昼間にも関わらずガヤガヤとしている。

冒険者ギルドの支部は入口を酒場にしている事が多い。ダンジョン帰りの冒険者は基本金持ってるから更に落としてくれよって具合だな。疲れてる冒険者からしたら一石二鳥って事でその場で酒を頼んでいたりする。

ちなみに、飯も酒も結構レベルが高い。しかも、あんまり時間関係なく飲み食い出来るってのもあってかなり人気だ。まぁ、これはダンジョンや何かしらで緊急事態になった時に即依頼を掛けたりできるようにという冒険者ギルド側の目論見もあったりする。要はWinWinな関係なんだよな。


そんな事を思いながらゆっくりとギルドの扉を開けて入る。外から聞こえていた喧騒よりも更に大きい。活気があるってのは良い事だ。

それにしても、生の冒険者ギルドだ!本部よりも更に馴染みがあるし実はテンションぶち上がりまくりだ。酒場のテーブルとカウンター、依頼書が張り出してある掲示板に受付。そして、謎にハイテクなタブレット。やっぱり世界観的に浮いてるんだよな……

そんな事思っているとセラが軽く呟いた。


「うわぁ……すっごい賑やかね、冒険者ギルドってどこもこんな感じなのかしら?」


「大体どこもこんな感じだよ、これから素材を下ろしたりで山ほどお世話になることになるんだ。慣れとけよ、お嬢様。」


「お嬢様ってあなたに言われたくないのだけど……てか、あなたも貴族なのに何でそんなこと知ってんのよ。」


「俺は貴族って立場に縛られないからな。」


「相変わらずむちゃくちゃね……」


「ノワくんらしいですね……」


2人に呆れられた気がしたがきっと気のせいだろう。

そのまま、俺達はギルドの受付までたどり着いた、それと同時に受付のお姉さんに声をかけられる。ちなみに、ほんわか系の可愛いお姉さんだ。


「冒険者ギルドへようこそ。本日はどの様なでしょうか?」


「すみません、冒険者としての正式な手続きとパーティー申請、その足で昇格試験を受けたいのでお題と今ある手持ち素材の買取をお願いします。あと、今年覚職した子でタンク、斥候の子をパーティーメンバーに引き入れたいので募集をお願いします。やる気があって向上心が強い人が好ましいです。それ以外の希望はありません。」


「分かりました、パーティーメンバーの募集でタンクと斥候ですね。あとは正式な手続きとパーティー申請、昇格試験に買取ですね。1つずつ進めさせていただきます。」


「はい、お願いします。」


「では、まず正式な手続きをする方全員ライセンスカードをお渡し下さい。」


そう言われると俺達3人はライセンスカードを渡す。この世界では覚職するのに冒険者ギルドで手続きをする。そして、ライセンスカードを渡されるのだが、それだけで正式な冒険者になれる訳ではない。もしそうなら、全員冒険者という事になってしまうから管理も何もかも大変なのだ。

だから、冒険者として活動するには改めて申請を行う必要がある。とはいえ、そんな大変な手続きではなくライセンスカードを認証して登録するだけの簡単な物だ。

それもすぐに終わる……はずなのだが受付のお姉さんが戻ってこない。何かあったのだろうか?


「遅いな、何かあったのかな?」


「さぁ……もしかするとシロの件報告されてるからその確認とか入ってるんじゃない?」


「なるほど?それも一理あるか。」


「私の事結構大事になってしまっているんですね……」


「大事も何もあの件はシロに関わらず、数はそう多くないがよく行われる違反行為の一つだ。

法にも引っかかるし、かなりの重罪として扱われる。そして、王国はそれを許すつもりはない。そういう犯罪行為撲滅にかなり力を入れてるからな。」


「そうね、王家はその辺かなりしっかりしてるわね。それに今の王様子供大好きだからね。子が財産といってかなり力を入れてるし。」


「それは私も知ってるよ、まぁ政策でかなり子供に関すること多いから分かるよね。」


「そうね。あ、どうやら戻ってきたみたいよ?」


そうセラがいうと慌てた様子のお姉さんが戻ってきていた。後ろに、メガネをかけた耳長の金髪長髪で正装として使いそうな服をパリッと着こなしたエルフの男性。その雰囲気は執事長のランディーを彷彿とさせる。所謂仕事ができそうな男と言った感じだ。

あぁ、まぁ確かに俺はここの領主の息子だからな、偉い人の挨拶が必要なのかもな。大人って大変だ。

そう思っているとその男性から声を掛けられる。


「本日はお越しいただきありがとうございます、私はこの冒険者ギルド支部のマスターをさせていただいておりますヴェルナーと申します。」


「これはご丁寧にありがとうございます。私はノワ。こっちがセラ、あっちがシロと言います。」


「……なるほど、奥の応接室にご案内しますのでそこで要件を述べていただいてもよろしいでしょうか?」


「分かりました、向かいましょう。」


そういうとヴェルナーさんに連れられて、応接室まで歩いていく。その途中(そういえばパーティー名どうしよう、考えてなかった……)と思い出しどうしようか頭を悩ますのだった。

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