都会の闇に消えた声

ジュラシックゴジラ

プロローグ

秋の冷たい雨が、東京の夜を濡らしていた。

 斉藤蓮は、新聞社の編集室にひとり残り、パソコンの前で固まっていた。


 画面には、今朝から行方不明になっている男性のニュース速報が映っている。失踪者の名は「高橋奈央」。衆議院議員・神谷圭一の第一秘書だ。蓮の胸に、直感とも呼べる違和感が広がっていた。


「これ、ただの失踪じゃない――」


 蓮は机の引き出しから名刺ファイルを取り出し、高橋奈央の名刺を探し当てた。半年前、神谷議員に関する匿名の情報提供があった際、彼女に一度だけ取材を試みたことがある。


 その時は、丁寧にかわされた。だが彼女の目は明らかに「知っていた」。そして今、彼女は姿を消した。あまりにも都合が良すぎる。


 蓮は名刺の電話番号にかけてみた。数回のコールの後、留守番電話に切り替わる。


「高橋さん、斉藤です。以前、取材でお話しした……何か、あったんですか?もしこのメッセージを聞いているなら、連絡をください」


 電話を切った瞬間、編集室の明かりがふっと揺れた。

 誰かが、この調査を止めたがっている。蓮はそう確信していた。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る