最終話 約束

 時が経ったある日、、、

 僕は夢を見てた。


 「啓兄、啓兄!」


 「どうした、静?」


 「早くご飯!美味しいのを作ってよ!」


 「そうだ。約束したもんな。親子丼か?すき焼きか?それともカツ丼にするか?」


 「ん〜、全部食べたいけど、迷うな、、、」


 「相変わらず、食べるの好きだなぁ。」


 そして、僕は起きた。


 「静の夢か、、、まだ、ふっきれてないのか?それとも、何かあるのか?」


 「啓介君、起きた?」


 「ああ、茜。静の夢を見てたよ。」


 「静さんの夢?」


 「ああ、食いしん坊で真っ直ぐなあいつの夢。」


 時が経ち、僕は八ヶ岳さんと暮らしている。

 だけど、まだ静の事が忘れられない、、、


 「どうやったら、忘れられるかな?静を、、、」


 「忘れる必要はないんじゃないかな?だって、

 ここに刻まれてるんでしょ?静さんの事、、、」


 と胸をトンと指で突かれた。


 そして、僕は寝ぼけながら、考える、、、


 「静か、、、どうやったら、あいつは約束を果たしてくれるかな?」


 と、独り言をつぶやいていた。


 そして、また時が経ち、僕は当主となった。


 父さんは引退して、余生を、、、

 母さんは女神を引退している、、、

 琴音も女神として、立派になった、、、


 そして、僕は八ヶ岳 茜と結婚した。


 その後、僕は37歳で八ヶ岳 茜との子供を授かった。


 遅い子供だ、、、


 そして、天界から使者がやってきた。その天界の使者が、持ってきた書状が、、、


 『いつか、また、必ずやってくる。

             雨塚 静 』


 この書状が届き、僕はハッとした。


 これを届けてくれた使者に聞いた。


 「これは?一体、、、」


 「だいぶ、前にこの書状が天界の静様の仕事用の机の中に入っておりました。存在が消えたのに、後任がなかなか決まらず、今更、後任が見つかり、机を片付けていたら、入っておりましたので、これを届けに参りました。」


 そして、使者は帰って行った。


 「まぁ、気長に待つか、、、」


 そして、ある日、雨が降る初夏の中、古い下町を歩いていた時、綺麗な和装で翼があり、傘を持っていた、


 女性が立っていた。その姿は元の静そのものだ。


 ニコッとして、僕を通り過ぎる時に、


 「約束、忘れてないですよ。」


 とすれ違い様に言われた気がした。


 そして、その女性を振り返るといなかった。

 

 家に戻り、玄関で靴を脱ぎながら、


 「幻影か?」


 「啓介君、どうかした?」


 「いや、何でもない、それよりも茜。子供の名は何にしよう?なかなか決まらなくてな!」


 「本当にそろそろ付けなきゃいけないですね。病院にも、役所にも怒られていますから、、、私も早期退院してますし、、、」


 「確かに名前どうするかな?母親の静流の名前から取るか?」


 「それじゃあ、この子が静ちゃんの代わりみたいじゃあないですか?もっとオリジナリティがないと!」


 「だよなぁ、いつまでも引きずってられないからなぁ。」


 「アイデア出してくれる人がいると、楽なんだけど、、、」

 

 と二階から、ガシャン、ドーンと音がした。


 急いで、行って見ると、、、


 「いててて、着地失敗。」


 

 と窓から飛び込んで来た、その子は言った。 



 昔、出会った、小さな天使との懐かしい声と光景が広がっていた。

 

 そして、その天使はニコッと懐かしい笑顔をして言った。

  

 「啓兄、約束を果たしに来たぞ!約束通り、

 美味しい料理を食べさせてくれ!」


   出会った頃と変わらない小さな天使が

       そこには居た。

  そして、その天使は僕との約束を果たした。

                


 

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雨塚君と天使の静ちゃん。 篠崎 ムツ @kazu213304

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