第42話 小さな天使だった静ちゃん

 正月ももう、終わる頃、静は道路で無邪気に走る子を庇って、乗用車と激突して、交通事故にあった。


 その知らせを受け、みんな病院に行った。


 そして、琴音が女神の力を使おうとした時、


 「使うな!!」


 と父さんが言った。何故?と言う表情で琴音は父さんを見つめた。


 「これは自然の摂理だ。もう、私達は自然に反する事は散々やっただろう。静は父さんに、事前に人として死ぬ事は本望だから、何があっても、手は出さないで欲しい。それが静の人間としての言葉だ!」


 そう父さんが言い、両親には、言っていたのだ。


 「人間とは儚く美しい生き物だから、決して、もう、私に関して力は使わないで。この100年過ごして、そして、改めて、人間になって分かったわ。 

 こんなにも儚くて、楽しくて、悲しくて、でも、温もりや暖かさがあって、、、様々な事が学べたわ。」


 そう、静は目は覚まして言った。そして、僕は、


 「静、こうなるの分かってたんだろう?だから、一生懸命に完璧に過ごして、僕に姉として、生き方を示してくれたんだろう?」


 そして、静は小さく頷いた。


 僕は涙を流した。この涙は哀れみでもなく、悲しみでもなく、大切な人への感謝の涙だ。静が来て、いろいろな事があった。そして、立派に家族としても過ごせた。僕には今の静が小学二年生の静に見えた。


 「啓兄には、見破られていたか。だけど、きっと気づいてくれていると分かってた。また、出会えたら、親子丼やすき焼きを作ってくれる?」


 「もちろん!任せとけ!」


 みんなが僕に気を利かしてくれて、二人きりにしてくれた。


 「啓兄、この感情がなんなのか分からないけど、ずっと一緒に居たかった。でも、今はそんな事願ってない。啓兄と家族になれた!それだけで十分だよ。」


 「ああ、分かってる。僕は、僕は、、、」


 僕も涙で何が言いたいのか分からない。でも、静は続けた。


 「この儚い人間やみんなの為に存在していた私って、何て幸せ者だったんだろう。茜ちゃん、暦ちゃんとブランドショップ行って、啓兄のバイト先に行って、美味しい物を食べた。でも、啓兄の料理は温かくて、優しい味がして、元気がいつも出たよ。」


 「あぁ!あぁ!そうか!」


 僕は頷くだけで、精一杯だった。今までの記憶が蘇り、小さい頃のお礼もできた。まるで、静が待っていたのようだった。感情は抑えきれないが、頭の中では、小さく変身した静が目の前にいるようだった。


 そして、静が


 「生まれ変わりがあったら、また啓兄の下に行きたいな。また、啓兄の料理を楽しみにしてるからね。」


 と言った。だから、僕は覚悟を決めて、


 「また、会おうな!必ず!今度は静が約束してくれ!僕が静にお礼ができたように!」


 「分かった。じゃあ、次に会うまで休むね、、、」


 と目を閉じて、その目は開かれる事はなかった。


 しばらく、静寂が流れ、僕は小一時間涙を枯れるまで、流した。静の姿は大人の天使だが、最後は、小学二年生の天使だった。そして、部屋の前で家族が待っていたので、


 「静は逝ったよ。僕は大丈夫。静はやっぱり、出会った頃の静で変わりなかったよ。みんなありがとう。」


 と家族に礼を言った。琴音が


 「兄さん。静ちゃんは幸せだった?」


 「もちろんだ。今度、生まれ変わりが来たら、もう離さないように約束をしたよ。」


 両親はこの会話に何も言わず僕達を抱きしめた。


 静の最後は僕から見ても、

 最後は小さな天使の静ちゃんだった。


 そして、時が経った。

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