第36話 静の涙
僕も帰って来て、静も家にいる。夏休みはもう、終わる頃だった。力のコントロールはだいぶできるようにはなったが、静の方も何か様子がおかしく見える。嫌な予感がした。
「静、お前は以前、役割と言っていたが、終えた場合どうなるんだ?」
「当然、天界に帰るわよ。私の場合、神々に創られた天使だから、どうなるかは分からないけど、、、」
「ん?どういう意味?」
「結局、消耗品として、創りなおす場合もあるわ。欠陥があると認定されたら、終わりよ。」
と言われ、改めて、静の役割を聞いた。
「役割は、雨塚 啓介の保護及び雨塚 琴音の元にて、天使としての責務果たす事。」
と言われ、天使としての責務とは?聞いた。
「人間に害を及ぼす者がいたら、女神の名において、その者の取締り、及び純然たる罰則を与える事。」
そう答えた。
「僕の事は、終わった。そして、琴音に関しても役割を終えているのか?何か嫌な予感がしてな。」
僕は直球で静に聞いた。
「変なところで勘がいいな。啓兄。両方共ある意味では終えてるかもしれない。今は琴音姉様と天界との話し合い待ちよ。母様も行っているわ。私は私の要望も申し上げたつもりだけど、判断するのは、結局、天界だわよ。」
「要望とは何を言ったんだ。」
「それは、私個人の秘密にしたいわ。」
と答え、テレビの方に顔を向けた。
僕も祭りの事を思い出した。しかし、静との約束については静は覚えていない。僕の要望で静の役割や琴音達との天界での決定に僕のわがままに付き合わせる必要は僕のただのわがままだと認識している。
なので、父さんにとある用事で連絡を取った。そして、その用事については父さんは父さんなりに考えがあり、今は父さんだけの秘密にされていた。そして、連絡が終わり、静はテレビを見ながら、目頭に、涙を溜めていた。
「まさか、お前は天界で創り直されるんじゃないのか?本当は諦めているんじゃないか?」
と僕が言うと、
「啓兄、でもそれが私の運命よ。そうしないと、天界は天使で溢れてしまうわ。いずれ、皐月さんが天使として、私の責務を負うはずよ。作り物にはいずれ、淘汰される事があるわ。」
そう言って、テレビを見ながら、ツーっと目からあふれ出た涙を流した。
「この生活はいつまで続けられる?」
「夏が終わり、秋には答えが出る予定よ。」
と言い、静はまるで裁判が行われるような気持ちだと僕には見えた。
僕は修行により、力は制御できるようになり、琴音も育って来て、ますます静は天使としての役割がなくなってきているのを考えたら、静がこの生活から居なくなる運命がある事も納得してしまう。
「静の心の秘密は聞くのは野暮だ。だけど、僕の要望だ。天使としての次期当主として、静は僕が面倒見たい。これなら、どうだ。」
静はテレビを観ながら、涙を拭きながら、テレビから視線を外さずにテレビをずっと観てた。
やがて、テレビを消して、ご飯を食べて、僕達は会話もせずにその日は寝た。
僕は静の事で何かできる事はないかと抗う考えをしたが、逆に自分の成長で無くなって来てるのを感じ取ってしまった。
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