巨乳腐女子幼馴染とイケない関係になったら、なぜかハーレムができたんだが
折本装置
第1話「幼馴染と一線を超える」
「ボク、ゆうくんを掘りたいんだよね」
そんな言葉が幼馴染である太刀川花音の口から出てきたのは、俺がコーラを口に含んだ瞬間であった。
「ぶっ、げほげほげほっ」
「わ、汚いなあ」
たまらず噴き出してしまった俺を呆れ顔で見ながら、花音はティッシュをベッドの上から放ってよこした。
頭を軽く下げてお礼を言いつつ、濡れた口元とちゃぶ台を拭いた。
「いや今のは花音が悪いだろう。というか、何を急に?」
ちゃぶ台とベッドくらいしかまともな家具のない俺の寝室。
ベッドの上でごろごろしながら漫画を読んでいる幼馴染を見る。
部屋の主である俺を差し置いてベッドに寝転がっているのはいかがなものかと思うが、何度言っても「ここが落ち着くんだよ~」と言われてしまいもう諦めている。
俺としては色々と意識してしまうのでやめてほしいのだが。
艶のある黒髪は、近くで見ても枝毛一つなく。
眼鏡の上からでもわかるくらい大きな瞳が、芸術的な二重瞼と涙袋の間に収まっている。
鼻筋は通っており、唇は薄く、それでいてどこか色気がある。
ジャージにスウェットというどこか野暮ったい恰好も、起伏の多い体つきの前にはかえってエロティシズムをかきたてる素材にしかなっていない。
そんな世界一かわいい(俺基準)幼馴染であったとしても、行ってほしくないことというのがある。
「訂正するなら今でもいいけど、さっきなんていったの?」
「ううん、だからね、ゆうくんの穴を掘りたいなって」
「訂正したことで悪化させるのやめろ」
男が絡み合う表紙の成人向け漫画をパタンを閉じ、体を起こしてベッドに腰掛けて何を言いだすのかと思えば……。
「現実とBLは違うっていつもいってるじゃん」
花音は腐女子だ。
腐女子と言っても色々あるが、花音はその中でもかなりの強者に入る。
俺に対してクラスの男子のカップリング妄想を延々と話してくる、と言ったらその深刻度合いがわかるだろうか。
そんなだから恋愛に興味も示さず、男子からの告白もひとつ残らず断っている。
本人曰く、「薔薇の間に挟まる女になりたくない」とのこと。
その薔薇、造花だと思うけどなあ。
「ていうか、なんで俺の穴を掘るなんて話になるんだよ」
「実はもう道具は買ってあるんだよね」
「聞けよ」
花音は足元にあった袋から、ペニスバンドとローション、イチジク型の何かを取り出してきた。
確かにこの部屋に上がってきたとき、お菓子やジュースとは別の袋を持ってたからなんだろうって気にはなってたけどさあ。
どうせエロ漫画だろうと高をくくっていた。
完全に武装していたとはこの俺をもってしても読めなかった。
「そもそもなんで俺を、というか人を掘りたいなんて話になるんだよ」
花音は由緒正しき腐女子だったはず。
女性が男性を掘るというコンテンツはあれど、そういうシチュエーションには興味がないと思っていたのだけれど。
ていうかあれ普通に痛そうじゃないか?
「そりゃあ、ボクだって攻めの気持ちになりたいときもあるさ」
「ならなくていいと思うけど」
「でもそうしないと創作が……」
「ああうん、同人誌ね」
俺は半ば呆れながらため息をついた。
花音は腐女子である。
さらに厄介なことに、自分で推しカプの同人誌を描くくらいには熱量をもっている腐女子でもある。
花音は創作のために経験をするべし、という信条があるらしく、俺は幾度となくそれに巻き込まれている。
まったく、勘弁してほしいものだが。
「あのな、さすがにそういうのはよくないというか」
「何が?」
「いや、俺達別に付き合ってるわけじゃないだろ?」
「それはそうだけど」
きゅうりの浅漬けのごとくあっさりとした言葉は、すんなりと俺の胸に突き刺さった。
わかっている。
彼女が俺を恋愛対象として見ていないことは。
意識していないからこそ、こういう提案ができるのだろうとも。
彼女は恋愛に興味を示していない。
だから、俺の中にあるこの気持ちは封印すると決めている。
そんな俺の気も知らず、花音は豊満な胸の前で手を合わせて。
「さすがにゆうくん以外の人には頼めないしさ、お願い!」
「絶対に嫌だ」
確かに、俺は今までこの幼馴染の頼みを幾度となく聞いている。
BL本の購入を手伝ったり、同人イベントで売り子をやったり、さかのぼれば一緒に裏山に入ってカブトムシ採集を手伝わされたりと枚挙にいとまがない。
流されやすい俺と、何事に対しても物おじしないアクティブな花音は、ある意味相性はよかったのかもしれない。
とはいえ、そんな流されやすい俺でも同意できないことはある。
特に今回は、貞操が絡む問題だ。
俺の精神的にも、花音の今後を考えてもやすやすと受け入れてはいけない。
「絶対?」
「絶対だ」
「本当に絶対?」
「絶対だ」
「本当に、ダメ?」
捨てられた子犬が俺を見ていた。
可愛らしさと愛おしさが心臓と瞳から溢れそうで、ついうなずいてしまいそうになる。
いまだかつて、こうやって花音にお願いされて断りきれたことはないのだ。
「ねえ、ゆうくん、本当にダメ?」
俺は。
絶対に。
◇
「アッ―――――――――――!」
その日、俺は処女を捨て、メスになった。
◇
ここまで読んでくださってありがとうございます。
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