転生したモブの俺(ストーリーに絡む気満々)を、地味顔モブ令嬢が豊満な肉体を使って篭絡しようとする件。なにこれ?ストーリーに関わらせないようにするための強制力?

茶電子素

や、やわらかいっ!

俺は転生した。

よりにもよって、乙女ゲームの世界に。

だが主人公でも攻略対象でもなく、ただの平凡な男子生徒A。


しかし俺は知っている。

この世界の筋書きも、破滅フラグも。

ならばモブであろうと、物語に絡んでやる。

そう意気込んで学園に入学した初日――。


「……あの、少しお話、よろしいですか?」


声をかけてきたのは、地味顔の令嬢だった。

栗色の髪をきっちりまとめ、眼鏡をかけ、控えめな雰囲気。

だが俺は気づいてしまった。

ドレスの下に隠しきれない、圧倒的な“過剰戦力”。


そう、彼女の身体的資質は、もはや兵器と呼んで差し支えないレベルだった。


「君は……?」


「エルミーナと申します。同じクラスです」


そう名乗るや否や、彼女は俺の腕を掴み、ぐいと引き寄せてきた。

柔らかい感触が、これでもかと押し付けられる。


「なっ……!」


「ご一緒してもいいですか?」


近い。近すぎる。

柔らかい感触に、頭の中が真っ白になった。

なぜ俺なんかに……いや、待て。これはもしや――。


(……そうか。これは“強制力”だ!)


俺が物語に絡もうとするのを阻止するため、

この世界が送り込んできた妨害装置。

しかもその正体は、地味顔令嬢の――“過剰戦力”。


「ちょ、ちょっと待て!俺は別に悪いことをするつもりじゃ……」


「……?……ただ、あなたと一緒にいたいんです」


彼女は真っ直ぐにそう言い、さらに距離を詰めてきた。

胸元が、腰のラインが、惜しみなく俺にぶつけられる。


(ぐっ……!なんという圧力……!もはや災害級じゃないか……!)


俺は必死に理性を保とうとした。だが彼女は容赦なく追撃してくる。


「あなたは、もうお忘れかもしれませんが……思い出してくれるまで離れません!」


「そ、そうか……」


「ですから、他の方のところへなんて行かないでくださいね」


そう言って、彼女は俺の手を両手で包み込む。

その仕草は純粋そのもの。

だが俺には、どうしても“世界の強制力”にしか思えなかった。


(俺を物語から遠ざけるために……これほどの戦力を投入するとは……!)



――エルミーナは強制力などとは無関係。

――ただ好きだから、ただ一緒にいたいから、全力で迫っているだけ。



「……わかった。俺は君と一緒にいる」


「……本当に?」


「抗えない……強制力が強すぎる……」


俺が降参すると、彼女はぱっと花が咲いたように笑った。

その笑顔は、過剰なスキンシップよりもずっと強烈に俺の心を撃ち抜いた。


こうして俺は、物語に絡むどころか、

地味顔令嬢の“笑顔”に絡め取られてしまったのだった。

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