初デート③

とにかく、ほのちゃんへのプレゼントを買えて良かった。

そう思いながら僕は、次のことを考えていた。


「ほのちゃん、もしどっか行きたいところがなかったら、喫茶店に行こうと思うんだけど…どうかな?」


「いいですね…!それで言うと…ここら辺に前から行きたかった所があるんです…!」


「お!じゃあそこ行ってみよっか!」


ということで、僕たちは数分かけて、目当ての喫茶店へと向かった。

ちょうど席が空いていて、すんなりと入ることが出来た。

レトロで良い感じのところだ。


僕もほのちゃんもアイスコーヒーとケーキを注文した。

少し話しながら待っていると、どちらもすぐに来た。


「…いただきます…!」


ほのちゃんは美味しそうにケーキを食べている。

楽しんでいる様で良かった。


「…先輩…一つ聞いてもいいですか…?」


ほのちゃんはケーキを半分ほど食べると、フォークを置いて問いかけてきた。


「ん…?どうしたの改まって?何でも聞いて?」


「…あの…」


何だか聞きづらそうだ。


「…?」


「あの…先輩は…先輩は何で私を選んでくれたんですか?」


なんと。そういうことか。


「…先輩はあっちゃんさんからも菜奈さんからも…その…言い寄られていて…二人とも…とても魅力的な方だし…」


ちょっと不安にさせちゃってたのかもしれない。

そりゃそうだよな…


僕は自分の気持ちを素直に伝えることにした。

照れずに。


「…あんな風に3人から言ってもらえて…少しパニックになってたんだ。恥ずかしいけどね…」


ほのちゃんは真面目な顔をして聞いてくれている。


「でも…ほのちゃんが告白してくれた時、この人を悲しませることだけは絶対にしたくない…って思ったんだ。ほのちゃんが悲しむ選択はあり得ない…って感じかな?伝わった?」


ほのちゃんは少しにやけている。

初めて見る表情だ。


「…そ…そうでしたか…ふふ…」


「ほのちゃん?」


「あっ…すみません…良く分かりました…」


ほのちゃんはニコリと笑った。


「あ…あと…もう一つ聞いても良いですか?」


再びほのちゃんの表情が真剣になった。

何だか、さっきよりも険しい様な…?


「あっちゃんさんと菜奈さんとは…何もしてないですよね…?」


僕はベタにも、アイスコーヒーを吹き出しそうになった。

耐えたが、むせてしまった僕を、ほのちゃんはまっすぐ見つめている。


「先輩…?」


「い…いやごめん…急だったから…」


「…すみません…それで…」


「な…なにもない…んだけど…」


「けど…?」


「二人とも家に泊まったことはある…」


ほのちゃんは目を見開いた。


「…あ…いや!でも、本当に何もなかったんだ!神に誓ってもいい!」


ほのちゃんは怪訝な顔でこちらを見ている。


「…本当ですか?付き合う前ですし、今なら怒りませんよ…?」


「本当に!」


「…そうですか…疑ってすみませんでした」


そういうと、しばらく何かを考え込んでいる様子だった。

そして、パッと顔を上げ、ほのちゃんは言うのだった。


「今日、家に泊まりませんか?」

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